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【トヨタ カローラ 新型】カローラスポーツよりいい走り? 目線の移動にこだわった

  • 《写真提供:トヨタ広報部》
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走行性能を上げたいとき、一般的にはステアリングやサスペンションの遊びを減らし応答性を上げることがセオリーだ。しかし、新型トヨタ『カローラ』の走りは、ドライバーの目線の動きにこだわって、電動ステアリング(EPS)、ダンパーに、これまでとは違うアプローチの設計、チューニングを施したという。

9月17日に発表された新型カローラ(セダン)とカローラツーリング(ワゴン)の開発陣は、乗り心地を下げず走りをよくしたいと考えた。新車の開発においては当たり前といえばそうだが、彼らが持っているこれまでの定量データでチューニングしていっても、ベテランドライバーやプロドライバーなど「匠」の運転や感覚と一致せず悩んだという。

開発陣が使っていた定量データとは、車両にかかるGやアクセル、ブレーキの状態、エンジンの状態などセンサーの値だ。これらのセンサーで計測していない要素(パラメータ)があるのではないかと考え、気が付いたのが運転中の頭や目線の動きだった。

ドライバーは、視覚と慣性モーメントの体感でクルマの動きを予想している。これと違う動きをすれば違和感やストレスを感じる。この違和感は、補正動作や目線の動きにも現れることもわかった。人間は、車体のロールについては視覚による感度と体感(主に三半規管)による感度は同じくらいだが、ヨーとピッチについては圧倒的に視覚の感度がよい。ヨーやピッチ方向に体感しないくらいのG(認知限界)でも、視覚情報があれば人は動いていることを認識できるということだ。

そこで、車両のセッティングに「ドライバーの目線が動かされない」という要素を加えた。目線が安定すれば、クルマの正しい挙動を感じることができるが、目線がブレるとクルマの挙動を見誤ってしまう。また、クルマが視覚情報と違う動きをすると、操作の違和感と、ストレスを感じる。

目線が動かされにくいクルマ。これを実現するため、シミュレーターを駆使し、コイルバネ、ダンパー、スタビライザーの動きを最適化したという。

次のこだわりポイントは旋回姿勢の決まりやすさだ。こちらは、2018年6月日本市場導入の『カローラスポーツ』から採用されているコンセプトで、新開発のダンパーによってコーナリング時の姿勢をしっかり作ってやる性能を向上させた。ステアリング操作に対してクルマがリニアに動きコーナリング姿勢も安定させるという。

新開発ダンパーは、ピストンとシリンダーの摺動部であるペアリングブッシュ(シェルケース上部のロッドが動くところ)とピストンバンド(ピストンのまわり)の材質や面圧分布を調整し摩擦力を上げている。つまりピストンを動きにくくするのだが、通常の上下動では摩擦は変わらず、コーナリング時で、ロッドに横方向の力、ねじれがかかったときに摩擦力を発揮するようにしている。またダンパーオイルも圧力によって粘度がかわる材質にしている。

これにより、コーナリングのアウト側の減衰力を上げ、イン側の減衰力を下げることが可能になり、ロールを抑えインリフトを抑えることができる。前後方向でも力のかかり方が変わるので、フロントの荷重が抜けることもない。安定した姿勢で4輪の接地感も向上する。似たような制御は、完全電子制御のアクティブサスペンションシステム(アクチュエータなどを利用して強制的にサスの動きを制御する)で実装されることがあるが、カローラの新型ダンパーはパッシブな動きだけでそれを再現しようとするものだ。

3つ目のこだわりは、ライントレース性の向上。運転中のソーイングや修正舵を抑えるため、EPSによる操舵の重さ(摩擦成分)を最適化した。

通常、ハンドルの操作感では、ハンドルを切るとパワステ(EPS)のアシストを含んだステアリングの重さを感じるはずだ。切り始めが軽い、重いはEPSのチューニングで調整できる。一般には直進時は重く、コーナー時は軽くといった制御がされている。

コーナリング中、ハンドルを切るととその重さ(軽さ)を感じながら、適切な舵角(適切なタイヤのコーナリングアングル)までを探りながら細かく動かしている。あまり意識していないが、運転中はこのような細かい保持舵と追操舵を繰り返している。

新型カローラでは、EPSの制御によって、切り始めと切り終わりの手応えがリニアに発生するようにしている。ハンドルを切っている間はリニアに手応えを増やしていき、ハンドルを止めたときの手応えもなめらかに安定させるようにする。そうすると、コーナリング中、ハンドル操作がカーブに沿った自然な動きになり、ライントレース性が改善されるという。