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自動運転の使い方「ドライバーまかせ」で大丈夫?「レベル3免許」の提案【岩貞るみこの人道車医】

  • 《撮影 中野英幸》

◆レベル3免許制度

新型コロナウィルスで、世界中に激震が走っている。経済の動きの先行きが不透明な状況とはいえ、それでも自動運転レベル3の波はじわじわと近づいている。

レベル2までは、運転支援システム。すでに、市販車に搭載されている被害軽減ブレーキや車線維持装置などの技術で、ドライバーが周囲監視義務や責任を負う。

レベル3からは、自動運転。世界的に未発売。クルマに搭載された自動運転技術だけで走行するときは、これらのシステムが周囲監視義務と責任を負う。

2019年、警察庁はレベル3の法整備を行った。警察庁にしてみれば「法は整備した。できないことを警察のせいにするなよ。あとは技術の番だ、よろしく」なのである(すいません、かなり横柄なキャラで書きました)。

自動車メーカーが、まず行おうとしているのは、高速道路上の渋滞などシンプルな交通環境でのレベル3の導入である。

◆シートベルトの使い方すら正しく伝えられないのに

このとき、私が不安に思うのは、たとえ渋滞であったとしても道路環境が厳しくなり(西日とか、積雪とか、豪雨とか、路面が荒れて白線が消えているとか)、システムが「もうギブ! 運転代わって!」とドライバーに運転交代をリクエストしてきたときに、ドライバーが正しく受け止めて運転を続けることができるのか? ということだ。

自動車メーカーからは、「説明などしなくても、使いこなせるものを目指している」と、あなたは神か? と、耳を疑うセリフが聞こえてくる。

だって、シートベルトの使い方すら正しく伝えられないっていうのに、どの口が言っちゃってんの? 車内にいる人の怪我の多くは、内臓破裂だ。シートベルトが腹に食い込んでいるのである。

衝突と同時に足から前にずれて、シートベルトが腹部のやわらかいところに食い込んで、小腸やら大腸やら腸間膜やら肝臓などを傷つけて腹腔内出血を起こしているのである。救急搬送が間に合わなければ出血多量で死ぬパターンだ。

シートベルト、作るだけ作っといて、使い方はドライバーまかせの現状。レベル3の技術だって、そうならないとはだれが言える?(お怒りモード)

そこで私が提案したいのは、レベル3を含む、自動運転用の免許制度である。タクシードライバーになるためには普通免許に加えて二種免許があるように、自動運転のクルマを正しく扱えるように、レベル3免許(名前はどうでもいい)を新設していただきたいというものである。

光明が見えてきた気がしませんか!?

と、某関係者に提案してみたら、寂しそうに微笑まれ、長い溜息をつかれた。そしてこうつぶやかれたのだ。

「寄付でもしてくれればいいですけれどねえ」

???

教習所で教習する。それはつまり、教習車が必要だということなのである。

◆「なにもしなくても、さらっと乗りこなす」ことはできるのか

座学だけじゃだめなのかと思いつつ、やるなら実習を行い、しかるべきスキルを身に付けなければ、免許制度にするべきじゃないだろう。

では、教習車はどうする? レベル3を有するクルマとなると、発売直後はそれなりの価格になることは間違いない。

免許制度は、全国どこでも同じレベルでのカリキュラムができることが条件になる。全国の教習所にレベル3のクルマを配備……って、それは現状の教習所の状況からいってきっと、いや、絶対、無理だろう。

じゃあ、シミュレータで? って、そっちのほうが高額じゃん! 私のばか。

となるとやはり、自動車メーカーがいうように「なにもしなくても、さらっと乗りこなせる」ようにしてもらうしかないのか。

自動車メーカー、できるのか? やるしかないのだろうけれど。ほんとにできるのかなあ。不安で眠れない日々が続いています(うそ。春眠暁を覚えずで爆睡中)。

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材するほか、ノンフィクション作家として子どもたちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。