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二度目の実証実験で驚くべき進化—日産とDeNAの自動運転「Easy Ride」

DeNAと日産自動車は、無人運転車によるオンデマンド配車サービス「Easy Ride(イージーライド)」の実証実験を、横浜市みなとみらい地区において2月19日より約1ヶ月間にわたって実施。今回は昨年に続く2回目の実験で、より実現に近いサービスとして実施された。

◆対象エリアを拡大し、乗車地や目的地を自由に設定

試乗会は一般試乗を終えた後に報道関係者が体験する形となった。通常、報道関係者向けの試乗会といえば一般公開される前に実施されることが多いが、今回は実際に試乗した方々の感想や意見などを伝えることも必要と考えたからだという。一般公開には事前に募集した40組が参加し、それぞれが通勤や買物など様々な目的でこのEasyRideを利用した。

神奈川県横浜市にある日産グローバル本社から横浜中華街へ向かう約5kmのルート上で行われた。昨年の実験では乗車場所と降車場所をあらかじめ指定する、いわば想定された中で“体験試乗”的な利用に限られた。それが今回の実験では、対象エリアを大幅に拡大した上に配車アプリを使って目的地を自由に指定できるようになっていた。また、サービスインに向けて、将来は支払い機能も導入する予定ともなっている。

試乗の流れは次のようなものだ。まず、EasyRideの専用アプリをインストールしたスマートフォンを使い、アプリ上で目的地を設定。次に出発時刻と到着予定時刻を確認して「配車する」をタップすることで予約は完了。少しすると「配車が確定しました」「乗車地へ向かってください」の表示があり、乗車地に着くと「あと3分で3号車が到着します」と案内される。この乗車地は登録地点から最も近い場所が選ばれる仕組みで、今回は集合場所となっていた「日産グローバル本社」が自動選択された。

乗車地で待っていると間もなくEasyRideの3号車がやって来た。アプリの指示に従って車両ドアの窓に貼られている「QRコード」をスマホで読み取るとドアが開き、乗車が可能となる。車両に乗り込んだらシートベルトを締め、Bピラーにある「GO」ボタンにタッチする。ここまでの手順はアプリがガイドしてくれるので、操作で悩むことは一切ない。スマートフォンを日常的に使っていればスムーズに使いこなせるだろう。

◆目的地までドライバーは一切操作なし! 動きも極めてスムーズ!

「GO」ボタンを押すと自動的にドアが閉まり、周囲の状況を確認した3号車はゆっくりと走り出した。見ると運転席にはドライバーが座っている。DeNAによれば、試乗車は基本的に無人走行ができる能力は備えているということだが、実験では安全上のことを鑑み、運転席にはスタッフが乗車した状態で走行しているのだという。もちろん、通常走行時はハンドルには一切触れていない。

日産グローバル本社を出るとまず交差点を右折するシーンを迎えるが、実は自動運転車が右折を判断するのはかなりハードルが高い。対向車がある中で、その間隙を縫って右折するのは、たとえば車両同士の相互通信などが行われない限り実現は難しいのだ。そのため、今回の右折はすべて矢印によって右折が指示される交差点を選んで走行した。ただ、右折の仕方や、その事前準備として車線変更を行う際も想像以上にスムーズにやってのけた。走行時はハンドルが小刻みに動いて進路を自動調整。微妙なカーブに対しても見事に追従してみせた。

驚いたのは、交差点をまたいだ先で道路がくびれていた場所でのことだ。隣の車線に並行して走る車両があっても、正確にそのくびれに従うことで難なくそれをこなして見せたのだ。後部席に座っていると、隣の車両が自分の方へ寄ってきたようにも見えたが、実はその動きもAIが予測して走行するべき車線をトレースしていたわけだ。たまたま筆者が前方を注視していたため、その瞬間でヒヤリとしたわけで、自動運転ということを意識しなければ何ら不安は感じないはず。むしろ、その自信に満ちた走りが安心を呼ぶに違いないと思えたほどだ。

車内には大型のタブレットが装備され、そこには目的地までの走行ルートが表示されて、どこを走っているのかがリアルタイムに分かるようになっている。また、走行ルートに合わせて適宜グルメスポットやイベント情報なども告知するようになっていた。DeNAによれば、将来はここで買い物などがお得にできるクーポンなども発行することも考えているという。ちなみに、EasyRideの専用アプリをインストールしたスマートフォン上でも、同じ内容を見ることができる。

目的地に近づくとタブレット上には「間もなく到着します」との案内が表示され、乗ってきたEasyRideの3号車は目的地付近で自動停車。周囲の安全を確認した上で降車するようメッセージが表示された後、ドアが自動で開き、一連の試乗は終了することとなった。

◆2020年早期を目標に商用化を準備中

MaaSへの関心が高まる中で、出掛けた先でスムーズに目的地まで乗り継げるサービスがますます進化を遂げていくことは確実だ。今回で2回目となった実証実験を通して利用者からは、思いついた場所で途中下車できるようにして欲しいなど、様々な意見が示されたという。DeNAではサービスインに向け、現在運営面でのプログラムを整備しているところ。この経過を経て2020年の早い時期に商用化できるよう準備を進めていくことにしている。