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ホンダ WR-V 新型は「ヴェゼルと売り分けられる」…マーケティング担当者 インタビュー

  • 《写真撮影 中野英幸》
  • 《写真撮影 中野英幸》
  • 《写真撮影 内田俊一》
  • 《写真提供 ホンダ》
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  • 《写真撮影 中野英幸》
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ホンダは日本市場に新コンパクトSUVの『WR-V』を導入する。サイズ的には『ヴェゼル』とほぼ同等のこのクルマをなぜに日本に投入するのか。マーケティング担当者に話を聞いた。

◆WR-Vとは何?
—-:初めに伺いたいのはWR-Vという車名です。これはどういう意味でしょう。

本田技研工業日本統括部商品ブランド部商品企画担当の佐藤大輔さん(以下敬称略):WはWinsomeという英単語がありまして、楽しいとか、快活という意味があるんです。その意味とこのクルマのユーティリティの高さ、お客様によりアクティブになって、楽しんでいろんなところに行ってもらいたいという思いのもと、WR-Vという名前にしました。

—-:海外では『エレベイト』という名称のようですが・・・・。

佐藤:エレベイトとWR-Vとで国内でも検討はしました。名称調査も社内でやったのですが、エレベイトよりWR-Vの方がよりSUVとしての見た目のごつさが感じられると。また“R-V”という方がホンダのRVを想起しやすいということで、より認知が広がりやすいという観点も含めて、WR-Vという名称をホンダのエントリーSUVのネーミングとして設定したのです。

◆セリングポイントは価格
—-:このクルマのターゲットユーザーですが、メインがミレニアル世代、サブが子離れ世代となっています。若い方に向けてのセリングポイントは何でしょう。

佐藤:一番は価格です。6割くらいが40歳代以上50歳代の方々、特に子離れ層の方々にはなると思っています。クルマはミニバンなどから卒業した方とか多くなるでしょうが、我々としては意識的にミレニアル世代を狙っていきます。その意図は、新しいお客様にもホンダとしてアプローチをしたいという考えなのです。確かにミレニアル世代で自動車を買われる方はそこまでパイとしては大きくはないでしょうが、特に地方のお客様などで一定数はいらっしゃる。その方々は昨今年収が上がらないとか、厳しい状況下で、クルマにかけるお金も減っているんです。そういった方々に向けたクルマでもあります。

—-:つまりミレニアル世代に一番訴求できるのは価格ということですか。

佐藤:まずは価格で脱落しないということは非常に大事だと思っています。ただ価格だけではなくて、アフターコロナになりつつあり、特に若い人の中で、より外の世界に出ていきたい、より楽しく仲間と一緒に移動したいというニーズが見られますのでそこに応えられるクルマだと考えています。

例えば同じ価格帯の競合他車を見ると、4人フルに乗ると後席がかなり厳しい状況になります。しかしWR-Vではれば全高も高いですし、非常に快適に多人数乗車でキャンプにも行ける荷室空間がありますのでそこをしっかりと若いお客様にもこのクルマに乗って楽しんでもらいたいというようことで、あえてミレニアル世代としています。

—-:そうすると四駆がないのはちょっと辛いかなという気もしますね。

佐藤:そうですね。ただ。このクルマそもそものマーケティングの考え方自体が、ヴェゼルと『ZR-V』で補完できていないマーケットに対して投入することがメインです。確かに豪雪地域の方々のニーズには一部応えられないのですが、北海道や東北の本当に一部の地域以外の一般マーケットであれば、そこまで四駆が必要なシーンもないと考えると大多数のニーズにはお応えできるかなと思います。それ以上に価格を200万円前半台にするということにこだわって投入しますので、あえてハイブリッドもないし、四駆もないんです。

—-:ではハイブリッドを欲しい、四駆が欲しいという方にヴェゼルを勧めるという図式ですね。

佐藤:まさにそうです。

◆集中と選択
—-:WR-Vの強みとしてホンダセンシングなどの安全装備が充実しているとのことです。ただ、サイドブレーキは手動ですね。そうすると若干ヴェゼルなどとは装備差が出るかと思いますが、そのあたりはいかがでしょう。

佐藤:例えばヴェゼルについているシートヒーターの装備は見合わせましたし、一部の方にはこれがあればなというのは多分あると思います。しかしそれ以上に価格を気にされるお客様のショッピングリストから外されないというところを非常に大事にしました。ですので集中と選択を行ったのです。

基本的にセンシング機能も多種多様のものがついていますが、ハンドブレーキに付随するEPBがないので、オートブレーキホールドは装備されませんし、アダプティブクルーズコントロールの渋滞追従で完全停止は出来ません。

そういったところはヴェゼルやZR-Vで補完をしているという考えですし、いまのクルマは色々付きすぎて高いよねという販売現場からの声も出ているのも事実です。

◆売りわけはできている
—-:国内マーケットではほぼ同じサイズのヴェゼルありますが、カニバリはどう考えているのでしょう。

佐藤:基本的には住み分けられていると考えています。まず価格帯ではガソリンとハイブリッドと分かれます。調査してみると、明確に次はハイブリッドだと考えている人は本当にハイブリッドにいくんですね。またいまハイブリッド車に乗っている人は基本次もハイブリッドで、ガソリンに戻る方はまずいません。しかしいまガソリンに乗っている方の4割ぐらいは次もガソリンに行きたいという方々です。その理由は価格で、結果としてコスパが良いと感じておられる。それからユーティリティもヴェゼルと比較すると大分違う部分がありますので、お客様がそもそも求めるニーズが違うというところがあるでしょう。

またヴェゼルはちょっとオシャレとか、そういう都会派的なイメージがあるのに対し、WR-Vはもっとアクティブな方向性を打ち出しますので、そういうところからも求めるニーズが違って見えてくると思います。

そしてヴェゼルはハイブリッドがほとんどで9割ぐらいを占めているんです。その中でもe:HEV Zという300万円ぐらいのグレードが一番の売れ筋です。そこで実際に販売店で見積もりを出すと、WR-Vとは50万~60万円ぐらいは変わってくるでしょう。そこまで差があるとそれほど競合にはならないかなと思います。

実際に販売店のトップセールスを招いて話を聞くと、彼ら曰く全く問題ない、しっかり売りわけができるという回答をもらっています。

—-:では最後にマーケティングサイドからのコメントをお願いします。

佐藤:いま成長しているSUV市場には他社がいろんな車種を投入してきていますが、ホンダは国内でまだ2車種しか出せていなかったんです。その中でも特に拡大基調のスモールやコンパクトSUVは2ボックスからの乗り換えが多いのが現状です。ホンダの場合は『フィット』の保有が非常に多いので、そのお客様が他社のSUVに行ってしまうことが起きていますのでそこをしっかり歯止めをかけなければいけない。かつSUVのラインナップとしても取れていない市場の補完をしなければいけません。

また、このクルマのメインターゲットであるミレニアル世代にこだわっている理由のもうひとつに、今後の消費の中心になっていくのはこの世代の方々です。まずはこの方々にしっかりとホンダファンになってもらわないと、ホンダの保有が先々先細りしてしまうことも想定されますので、そういったことからちょっと元気の良いクルマ、WR-Vを投入したのです。