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「高級」の概念は変わり始めている…ボルボ『EX30』内外装デザイナーが語るBEV時代のデザインとは

  • 《写真撮影 南陽一浩》
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  • 《photo by Volvo cars》
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  • 《写真撮影 南陽一浩》
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古くからボルボはスカンジナビアン・デザインであることを静かに主張してきたが、現行の『XC90』に始まる世代からとりわけ強く強調するようになった。しかし新型BEVとして登場した『EX30』は、さらにボルボのデザイン・ランゲージを一新してきたように見える。

◆スカンジナビアン・デザインとは何か?
スペインでおこなわれた試乗会で、EX30のエクステリア・デザインの責任者、フローリアン・モッケンハウプト氏にあれこれ尋ねることができた。名前からして、バーデン=ヴュルテンベルク州出身の生粋のドイツ人だ。自動車産業が盛んな地域の出にも関わらず、サーブのデザイン研究所からキャリアをスタートさせ、オペルを経てボルボに辿り着いたという、ちょっと変わり種のデザイナーといえる。

「ボルボにとってEX30は久々のスモールカーといえます。北欧神話に由来するTハンマーのライト・シグネイチャーといった、分かりやすいディティールは当初からありましたが、直近の世代から強調し始めたスカンジナビアン・デザインとは何か?を追求しました。それは、筋肉質であるとかスマートに見せることが目的ではなく、結果的にそうなっているのは、シンプルで無駄のないクリアな面構成によるものではないかと」

その例としてモッケンハウプト氏が最初に挙げたのは、ボンネット周りのグラフィックライン、そしてプレスラインの処理だ。

「ボンネットの両端のラインを見てください。フェンダーの膨らみのグラフィックやヘッドランプと馴染ませることで、必要以上の分割ラインを作らないようにしました。でもボンネットの両端とドアサイドを抉ったような凹部を見てください。本当に彫刻刀のように削っただけで、本来は上下のエッジはひとつの曲面で繋がっているんですね。人間の目が線の続きが無くてもあえて追いかける、まったくもってゲシュタルト効果です」

ショルダー部分に凝ったプレスラインを用いて、キャラクターラインとして強く立てる手法とは正反対で、むしろボンネットやリアフェンダーからCピラーにかけての前後にだけ、うっすらとエッジを立てることで、車のキャラクターを柔らかく押し出している。

◆「機能があるからこそ、隠す必要がない」
「以前のボルボほどショルダーの張り出しを強調していないのは、もちろん前面投影面積を削るためもありますが、スモールカーですから幅を広げるより、前後のエッジを立ててボディサイドを抉ることで、ショルダーが効果的に出せるという判断です。Cピラーからリアハッチにかけても、じつは水滴のように緩やかに絞り込んで、空力の乱れを減じつつ、見えにくいでしょうがリアディフューザーでボディ下面から抜いた空気と一緒に、流しているんです」

リアディフューザー位置には相当こだわったそうで、EX30のすっきりしたシルエットを壊さないよう、しかし長く引く方が効果的なパーツなのでバッテリー後端のフラットな辺りから繋いでいるという。潜って見ると確かに、後輪よりかなり前の部分からソリ状のディフューザーが始まっている割に、バンパー下の目立たない位置で終わっていることが分かる。モッケンハウプト氏もちょっとドヤ顔気味に、こう続ける。

「もうひとつ、こだわったのはバンパーの表面処理ですね。ウレタンの黒い部分を、細かいストライプ状に表面を削っています。これは見た目の質感を高めつつ、気流の流れを安定させるんですよ。逆にいえば機能があるからこそ、隠す必要がない細部です」

つまりボルボならではの安全性、堅牢性を見た目で表現しつつも、BEVとして航続距離を確保するため、空力などの機能的要件をも満たすため、果敢に「引き算」に挑んだエクステリアなのだ。

ちなみにローンチ・カラーの「クラウド・ブルー」は北欧の夏空をイメージした薄い青だそうで、朝夕のオレンジの光を浴びると色温度が中和されて白く見えるような、ナチュラルな青だ。従来、EVのイメージカラーといえばコバルトブルーのような無彩に近い青だが、自然と一体になりうるほどにカーボンフットプリントを極限まで絞ったEX30には、やはりこの青が似合う。

◆インテリアに込めた「ボルボの姿勢」
続いてはインテリアのチーフデザイナー、リサ・リーヴス氏に話をうかがった。ジャガー・ランドローバー、ベントレーを経て2014年に移籍してきた彼女は、プレミアム・デザインをボルボにもたらすことを求められ、やって来たという。

「プレミアムとはいえ次世代のそれ、循環型モデルへと踏み出すボルボの姿勢をインテリアに込める必要がありました。ですから私の取り組みは、意匠を描くことはもちろんですが、リサイクル素材や再生可能な素材を、いかに車のインテリアに採り入れられるか、研究することでした」

そこで彼女がまず見せてくれたのが、「フラックス」と呼ばれる成長が早くて再生可能な亜麻を原料とする、リネンを貼り込んだ樹脂の加飾パネルだ。EX30の「ミスト」と呼ばれる方の内装トリムで採用されている。他にも、再生素材とトレーサビリティの確立されたウールを用いたブレンド生地を、ミストではシートに用いている。

「ただ見た目や触覚の上で優れた素材というのではなく、意図のある、責任ある選択をすること、循環型モデルのループの中に入っていけることが、EX30のインテリアを考えるにあたって重要でした」

昔ながらのファブリック内装に通じる質感のミストがある一方で、「ブリーズ」の内装トリムでコンビのシート生地に用いられる「ノルディコ」は、北欧産の針葉樹から採れるパインツリーのオイルとペットボトルから再生されたポリエステルによる複合素材。しっとりした質感に、人工皮革やネオプレーンのような手触りが特徴だ。一方で、日本未導入だが「インディゴ」というトリムもある。

「リサイクルされたジーンズ生地を細かく砕くことで、樹脂に混ぜたりシート状にプレスしたり繊維の糸に拠り合わせたり、様々なカタチで再生できるんです。綿の繊維糸でも長いものは再びジーンズにも使えるのですけど、とくに短いものが再生材になります。だからこの青はジーンズそのものから来ています」

「インディゴ」の内装トリムは未導入でも、他のトリムで収納トレイの下敷きカバーに、このブルーの部材を認めることができる。

◆「プレミアム」や「高級」の概念が変わり始めている
他にも、人工ストーンのような重厚な質感ながら、軽量に仕立てられた、PVCサッシ起源の樹脂も、砕いて再利用されたリサイクル素材だ。

「スウェーデンは寒いですから、窓枠サッシは2重どころか3重なんですよ。だからリサイクルするためのリソースとして、PVCサッシは小さくないんですね(笑)。これも徐々に細かく砕いていって、均一のシートに仕上げる際に少し粒状のものを混ぜ合わせることで、はるかに軽量ですけど石に似た質感になります」

これらのパーツすべての耐用年数を彼女は把握している訳ではないが、車としての寿命を終えた時に販売店に戻って来て、分解や再利用がたやすくなるよう、インテリアとして構成パーツを減らすことに心を砕いたという。

「すべての素材の耐用年数を把握している訳ではないですが、循環型モデルはボルボとしてもこれから比重を高めていくもので、リサイクル率を自動車メーカーが上げていくという取り組み自体がまだまだ発展途上です。それでも着手して、始めないといけません。だからインテリアを構成するパーツ数を絞れるだけ絞ることは、念頭にありました。逆にいえばEX30で初めて可能になったことで、同時にコンパクトBEVとして日常生活で不足のない使い勝手も必須でした。そこからハーネスやスイッチ類の使用量を減らせるよう、すべての要素がセンター・コンバインドになったレイアウトを考えました。再生可能素材やリサイクル材を用いることがゴールではなく、向こう何年かで循環型モデルのループを作り上げ、そこに載せていくことが課題でしょうね」

プレミアムなコンパクトBEVとは無論、小さな高級車のことだが、小さい車体に従来通りのシックかつ高級な内装をただ載せることを、リーヴス氏は良しとしなかった。それこそが「プレミアム」や「高級」の概念が変わり始めていることの証左であり、少なくともボルボ流のスカンジナビアン・デザインにおいては、そこには社会的責任や通念が含まれていることが、EX30を通じて明らかになったのだ。