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スバルのドライバーモニタリングシステムの発展形を発見…三菱電機の研究開発成果披露会

  • 《撮影 中尾真二》
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三菱電機は13日、31回目となる「研究開発成果発表会」を開催した。三菱電機は、準天頂衛星対応カーナビ、高精度3D地図データサービス、バッテリーおよびモーター技術等で、ADAS技術、EV、自動運転インフラとの関係も深い企業。

発表は、同社が持続的な成長に向けて重点的に取り組む、スマート生産、スマートモビリティ、快適空間、安心安全インフラ、共通技術領域の5つの分野を対象としたもの。2018年度に発表された22の新技術が発表された。このうち6技術が、今回の披露会が初の発表となるものだった。

スマートモビリティに関する技術は4つの発表があった。

◆高電力密度のパワーユニットとモーター

2つの新発表のうちひとつは、EV/PHEV用のパワーユニットとハイブリッド用モーターの小型大容量化の技術だ。パワーユニットは、発電機の交流を直流に変換するインバーターや出力を制御する高電圧回路で構成される。さらに場所をとるのがコンデンサーとリアクトルという直流出力を安定、平滑化させるための素子。

これらの回路は基本的に数百ボルトの高圧回路のため、小型化が難しい。大電力をさばくには物理的に太い配線や絶縁が必要になる。そのため、一般的なEVやPHEVのパワーユニットはエンジンルームに置かざるをえない。三菱電機が今回発表したパワーユニットは容積が2.7リットルという小型サイズ。「弁当箱」などと呼ばれる平均的なECUモジュールを2つほど並べたくらい(厚みはも少しある)のサイズだ。電力密度は150kVA/Lという。パワーユニットの冷却はLLCによる液冷方式だ。必要な配管もユニット内部に収められている。

パワーユニットに接続されるモーターも新規開発のもの。こちらはハイブリッド用で発電用モーターと駆動用モーターが並列に並んだタイプだ。2軸になるがモーター部分の厚みを減らすことができ、小型化につながっている。このモーターも高出力密度が特徴で、いくつかの工夫がなされている。軸を回転させる鉄心に内蔵する磁石の配置を非対称にすることで、回転方向によるトルクの差つける。進方向の回転トルクを強くすることで、電力密度をあげている。

モーターの冷却はオイルで行うが、オイル・水熱交換器を利用してラジエターの冷却液を効率よく使う。冷却効率のアップは高い性能の磁石の利用を可能にしている。モーターと熱交換器の工夫により出力密度23kW/Lを実現した。

ハイブリッド用モーターは2020年製品化を、パワーユニットは2024年の製品化をそれぞれ目指して開発が進められている。

◆悪天候時の自動運転やADASを実現

ADASや自動運転に関する技術では、複数のセンサーを統合的に制御する技術が発表された。

自動ブレーキや自動運転の要となるセンサーは、現在、カメラ、ミリ波レーダー、LiDARの3つがある。カメラは対象の認識に優れているものの、夜間や逆光などに弱い。ミリ波レーダーは200m前後の遠距離をセンシングできるが、形状の認識はできない。LiDARは詳細な3Dデータの計測ができるが、主に近距離のセンシングとなる。濃霧や豪雨(水分)は、一般的に視界や電波の障害ともなる。

それぞれ一長一短があり、メーカーによっては2種類のセンサーを併用していることもある。しかし、その場合でも遠距離用、近距離用など用途は限定され、夜間、悪天候などでの動作は制限されるか、保証されない。発表された技術は、3つのセンサーによる対象の位置や速度の情報のうち、他との比較で信頼性の高いデータを組み合わせて採用することで、悪天候でも自動ブレーキの動作精度を向上させるものだ。

実験では、従来品では動作不可だった80ミリの雨、視界15mの霧でも自動ブレーキを機能させることに成功している。作動速度は80ミリの雨でも10~40km/h、視界15mの霧でも10~15km/hでの作動(衝突回避)を確認している。

◆実装優先の車載セキュリティ機能

コネクテッドカーのセキュリティに関する技術は、セキュアブート機能とソフトウェアによる攻撃検知技術が紹介された。

セキュアブート機能は、カーナビやIVIなどコネクテッドデバイスが起動するとき、OSやアプリケーションが改ざんされていないか、不正なプログラムがないかをチェックしてからシステムを起動させるものだ。従来、セキュアブート機能を組み込むと、イグニッションをONにしてからシステムが立ち上がるまで、余分な時間が必要となる。スキャンするプログラムに優先順位をつけることで、起動時間を短縮させた。

攻撃検知は、ECUなど車載システムの処理をロギングしながら、攻撃につながる動作を検知し、システムが改ざんされる前にそれを検知して攻撃を遮断するシステムだ。現在、ECUなど車載ネットワーク内部の不正な命令や攻撃パケットについては、ゲートウェイやHSMといった仕組みが防御する技術が多い。

今回紹介された技術は、ソフトウェアによってログをリアルタイムでチェックするというもの。

攻撃かどうかの判定は、過去のサイバー攻撃にパターンを分析し、そのパターンと同じ動作(処理)をしているかどうかで行う。危険なパターンは50ほど抽出、分類されている。この手の判定は、現在、機械学習やディープラーニングを利用するのがブームであるが、これらは学習のための大量なデータが必要だったり、学習コストがかかる。また、車載システムで実行させるためにはGPUを搭載したプロセッサやGNN用のプロセッサ、FPGAなどで作ったシステムが必要となる。三菱電機の検知システムは、従来型のソフトウェアロジックで実装されるので、追加のハードウェアも不要であり、既存システムにローコスト実装しやすい。

◆インナーカメラと連携するだけで便利になるADAS

一般のドライバーにも機能や効果がわかりやすい技術の展示もあった。三菱電機は「Maisart(マイサート)」というAI技術を研究している。これをカーナビとADASに応用した事例だ。

カーナビでは、ドライバーモニタリングシステムとアレイマイクを利用して、ドライバーからの発話を識別し、ナビの音声操作をより高度にするものだ。具体的には、路地の入り組んだところのルートガイドで、曲がる交差点が判断しにくいような状況で「ここで曲がるの?」「何個目の信号?」などと呼びかければ、ナビが「ここです」「まだまっすぐです」「2つ目の交差点です」などと答えてくれる。このとき、発話ボタンを押したり起動ワードを発話する必要はない。

ドライバーの発話かどうかの判断は、ドライバーモニタリングシステムのカメラがドライバーの口の動きを検知し、アレイマイクが車内のどのあたりからの音声かを判断する。そして、発話内容が、ナビのルートガイドに関するものであれば、追加の指示やルートガイドを行う。アレイマイクは、センターコンソールに8つのマイクを並べて、どの方向からの音声かを分析する。現在8つのマイクを利用しているが、ソフトウェア処理を改良してマイクの数はもっと減らす予定だという。

なお、ドライバーモニタリングシステムは、三菱電機が開発して、スバルがすでにフォレスターに採用し、実用化されているものだ。

スバルのドライバーモニタリングシステムは、ドライバーの体調管理とパーソナライズ機能に利用されているが、ADASへの応用として三菱電機では、ドライバーの脇見を識別して、見ていない方向の危険を警告するシステムを開発中だ。最近のクルマは、見通しのきかない路地や交差点で利用する超広角なフロントカメラやサイドビューカメラを搭載するものがある。これらの映像から歩行者や車両を検知したとき、ドライバーがその方向を見ていない場合、ライトや音声でアラートを発するというもの。

このシステムは、左右の後方接近アラームやバックモニターなどとも連携できるはずだ。利用する技術やデバイスも特殊なものはない。既存のカメラやセンサーと、インナーカメラ(と赤外線カメラ)を連動させるだけで、ADAS機能のさらに細かい制御が可能になる。明日にでも、各OEMメーカーは採用してほしい技術だろう。