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今秋日本へ、ヒョンデの電動SUV『コナ・エレクトリック』その商品性は? 個性際立つデザインから解き明かす

  • 《photo by Hyundai》
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この秋に日本導入されるヒョンデの新型『コナ』はBセグメントのSUV。日本向けはBEVの『コナ・エレクトリック』だけだが、海外ではガソリンやハイブリッドもあり、スポーティグレードの「N-ライン」も用意される。

そんな全体像を踏まえ、ソウルで現地取材した内容も含めて、コナ・エレクトリックの商品性をデザイン視点で解き明かしていこう。今回はエクステリアを中心にレポートする。

◆成功した初代からの正常進化
初代コナは2017年にデビューした。ICE(ガソリン)とHEV(ハイブリッド)に加え、翌18年にはBEVもラインナップ。当時からマルチ・パワートレインだったのである。

手頃なサイズとマルチ・パワートレインの多様性、そして個性豊かなデザインなどが韓国だけでなく欧米でも共感されて、初代コナは一躍、ヒョンデの中核車種に成長した。そうした成功をベースに、さらなる進化を図ったのがコードネームSX2=新型コナである。昨年12月に概要が公表され、3月に正式デビューした。

初代よりホイールベースが60mm長いのは、後席のレッグルームを広げたから。初代はその点で市場から不満の声が出ていたという。全長も新旧BEV仕様の比較で175mm延びたが、それでも全長4355mm×全幅1825mm×全高1575mmのスリーサイズはホンダ『ヴェゼル』にほぼ近い。初代から「都市型SUV」を標榜するコナだけに、街乗りでも扱いやすいサイズ感だ。

◆BEV優先のプラットフォーム
プラットフォームは、ひと足先に登場したキア『ニロ』と共有。ヒョンデによれば、「電動パワートレイン・ファースト」で開発したという。ICEをBEVにコンバートするのではなく、BEV優先で設計したプラットフォームにエンジンを積んだとの主張だ。

しかしエンジンをフロントに積むとなれば、エンジンルームにはそれなりの広さが必要。BEV優先と言っても、モーターのコンパクトさを活かしたパッケージングはできないだろうと思うのだが…。

新型コナの開発担当者にそれを問うと、「エンジンを積むコナには、ヘッドアップディスプレイの設定がない。そこは妥協した」との答え。詳細は語ってもらえなかったが、ICEやHEVのコナは本来ならエンジンルームにある部品をカウルの後ろ側(室内側)に移設してまで、エンジンルームのコンパクト化を図ったのかもしれない。

◆短いフロントオーバーハングをより短く
ヒョンデの公式資料には新型のオーバーハング寸法の記載がないのでネット検索したところ、スウェーデンのCar.Infoというサイトにそれを見つけた。HEV仕様の数値だが、フロントオーバーハングが860mm、リヤは830mm。欧州向け先代HEVと比較すると、フロントが+15mmにとどまる一方、リヤは115mmも延びている。後席レッグルームだけでなく荷室も広げながら、フロントオーバーハングの増加を最小限に抑えたということだ。

一般論として、エンジンという大きなカタマリがないBEVはフロントオーバーハングをICEより短くできる。だからこそ新型コナは「電動パワートレイン・ファースト」の先進性をプロポーションで訴求すべく、フロントオーバーハングを切り詰めたのだろう。その努力は実寸法だけにとどまらない。

新型コナの前後フェンダーには、SUVらしさを表現するクラッディングが加えられている。オーバーフェンダーと呼んでも良さそうな、逞しいクラッディングだ。ICEやHEVはそこが黒い樹脂色なのでSUV感が明快。一方のエレクトリックはボディ色とし、より都会的で洗練された印象だ。

で、ここで注目したいのが、クラッディングがフロントコーナー部まで回り込み、その前端にヘッドランプが組み込まれていること。あたかもヘッドランプがボディ前端であるかのように感じさせることで、フロントオーバーハングを実寸以上に短く見せた。初代でトライしたヘッドランプとクラッディングの一体化を進化させ、「電動パワートレイン・ファースト」の先進性を訴求するデザインの工夫である。

リヤにも同じ工夫がある。リヤのクラッディングの後端にコンビランプを埋め込むことで、オーバーハングを短く見せた。リヤは先代より実寸法がかなり長くなっただけに、都市型SUVに相応しい俊敏さを醸し出すために、それを短く見せることが大事だったのだろう。

◆アイオニック5とは似て非なる斜めライン
ホイールベース間のボディサイドは、対角線的に配した斜めのキャラクターラインで区切られている。アイオニック5にも同様の斜めラインがあり、それを受け継いだ。これも「電動パワートレイン・ファースト」の先進性を表現する要素だ。

しかし対角線の向きが逆で、コナは後ろ上がり。なぜそうなのか? この後ろ上がりのラインはリヤドアの肩口で消えるのだが、もっと延長したと想像すると、サイドビューではそれがちょうどベルトライン・モールがリヤピラーに沿って跳ね上がるラインに一致する。ベルトライン・モールが跳ね上がる勢いを加速させる役割を担っているのだ。

ちなみにこのベルトライン・モールはルーフエンドのスポイラーを通って、逆サイドにつながる。それと関連付けることでフォルム全体の一体感を醸し出すことが、この後ろ上がりの対角線的キャラクターラインの狙いだ。隠し味的な工夫だが、気付いてみるとなかなか味わい深い。

◆雑踏でも際立つ顔付きの個性
初代の個性を受け継ぐとはいえ、フロントの顔付きは独特だ。低く構えたグリルの上に艶やかで立体的なパネル面があり、それとボンネットの間には横一文字のデイタイムランプが幅一杯に広がる。

正直なところ、韓国車のすべての車名で一瞥しただけで言い当てるだけの知識は持ち合わせていないのだが、新型コナは例外。混雑したソウルの市街地でも、顔付きが視界に入ればそれとわかるというのが印象的だった。

コナ・エレクトリックのグリルはICEやHEVより天地が低く、バンパーレインフォースをカバーする横バー部分がボディ色なので、グリル開口部が小さく見える。BEVらしい表現だ。

グリルの天地を低くしたのは、ICEやHEVほど冷却風を要しないからだけではない。その上のパネル面に充電口を設けるために、天地を広げる必要があった。それが顔付きを一層、個性的に見せている。豊かな張りを持つボディ色のパネル面が、フロントビューにこれほど目立つクルマは珍しいと思う。

◆パラメトリック・ピクセルの新表現
グリル下部の黒い部分も、エレクトリックの場合はエアインテークではない。中央のレーダー格納部の左右は黒いガーニッシュ。そこに小さなシルバーの正方形をいくつも並べることで、アイオニック5の前後ランプで使った「パラメトリック・ピクセル」のテーマを再現した。小さな正方形を数多く集合させ、その相乗効果でデジタル時代に相応しいテイストを表現するのが「パラメトリック・ピクセル」の狙いだ。

ワイドに広がる細いデイタイムランプのランプ・シグネチャーを、ヒョンデは「シームレス・ホライゾン・ランプ」と呼び、新型コナではリヤのテールランプにもそれを反復している。

ICE/HEVのコナの「シームレス・ホライゾン・ランプ」は、一本の連続したライン発光。それに対してコナ・エレクトリックは、ここにも「パラメトリック・ピクセル」のテーマを持ち込み、小さな四角いセグメント=ピクセル単位で光るようにした。「シームレス・ホライゾン・ランプ」はヒョンデの他車種にも採用されているが、それに「パラメトリック・ピクセル」を組み合わせたのは新型コナ・エレクトリックが初めてだ。

◆日本向けの充電リッドは専用デザインになる
韓国のコナ・エレクトリックの充電口は、欧米でも主流のコンボ方式。日本仕様はもちろんチャデモを採用するのだが、普通充電と急速充電のソケットが並ぶチャデモに対応するには、充電口を拡大しなくてはいけない。それはつまり、グリルの上の大きなパネル面が専用になるということだ。

ちなみにアイオニック5の充電口は右側のリヤフェンダーにあり、日本仕様はスペースを広げてチャデモに対応した。リヤフェンダーはドア開口部を含む非常に大きなプレス部品なので、それを新設するには大きな投資を要する。

実はヒョンデ・モビリティ・ジャパン(HMJ)はアイオニック5に続いて、セダンの『アイオニック6』の日本導入も検討していた。しかしこれも充電口がリヤフェンダーにある。HMJのチョ・ウォンサン社長によれば、「チャデモに対応するには4億円かかるとわかり、アイオニック6の導入を断念した。次世代のアイオニック6では設計の最初からチャデモ対応を考慮してもらう」とのことだ。

コナ・エレクトリックの場合、大きいといってもノーズの樹脂パネルの変更だから、投資額はそこまで莫大ではなかったのだろう。ただし、充電リッドも左右方向に大きくなる。コンボ方式のリッドはシンプルな片側ヒンジで開閉するが、そのまま大きくすると充電ケーブルの取り回しに邪魔だし、重たい充電ケーブルがそれにぶつかって損傷するリスクがあることが懸念された。

そこで日本仕様の充電リッドを専用開発。平行リンクでスライドして開くようにするという。具体的なことはわからないが、リンク式スライドは想像するだけもスマートなイメージ。早く日本向けコナ・エレクトリックを見たい、という期待感が高まる。