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水陸両用バス実用化へむけ前進、小型船の自動操船実験…埼玉工業大学と群馬ボートが神流湖で

  • 《写真撮影 大野雅人》
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埼玉工業大学が開発する後付け自動運転AIシステムが、陸上公道実験から水上へと横展開。ヤマハ製小型ボートに同大 自動運転AIシステムを搭載し、自動操船の実験が始まった。

実験場所は、群馬県と埼玉県にまたがる下久保ダムの神流湖(かんなこ)。埼玉工業大学 自動運転車公道実験 公式YouTubeチャンネルには、実験船が自動でスラロームや経路追従をクリアしていくようすが公開された。

この小型ボート実験船は、「北関東最速 合格率99%」という群馬ボートライセンススクールが保有するヤマハ製小型ボート。この小型ボートに埼玉工業大学が開発する後付け自動運転AIシステムを搭載し、自動操船実現にむけた各種実験が神流湖で行われている。

◆水陸両用無人運転バス実用化への一歩
この自動操船実験は、2020年夏に発表し動き始めた「水陸両用無人運転技術の開発~八ッ場 スマートモビリティ~」にむけた第一歩。目標のステージが群馬県 八ッ場ダムということで、群馬県で最も実績がある群馬ボートライセンススクールと手を結び、八ッ場ダムの南にあるおだやかな神流湖で自動操船の実験に着手した。

群馬ボートライセンススクールと埼玉工業大学が連携した理由はもうひとつある。群馬ボートがもつ小型船舶の知見を、自動操船というフィールドのなかで船舶の法令や操船技術を専門分野視点からアドバイスしてくれるというアドバンテージだ。

群馬でトップクラスの操船技術と運用力をもつ群馬ボートの協力を得ることで「水陸両用無人運転バスの実用化を加速させたい」と埼玉工業大学 工学部情報システム学科 渡部大志教授(埼玉工業大学自動運転技術開発センター長)はいう。

◆自動運転AIシステムを水陸両用へアップデート
これまで埼玉工業大学の後付け自動運転AIシステムは、トヨタ『プリウス』、日野『リエッセII』、日野『レインボーII』と、乗用車、マイクロバス、中型路線バスに実装され、数々の実証実験を全国各地で重ねてきた。

今回は、八ッ場ダムでの水陸両用自動運転バスへの実装へむけて、群馬ボート保有の小型船に自動運転AIシステムを後付けし、「陸上のクルマと物理モデルも操舵・舵角も違うボートに組み込んで実験することで、自動運転AIシステムをアップデートし水陸両用へとつくり込んでいく」(渡部教授)という。

また前述のように、自動操船にむけたスキル取得だけでなく、陸上とは異なる水上ルールのなかでの自動運転ノウハウについても、この小型ボート実験で体得していくという。

◆法令遵守にむけた知見と技術の向上も
「8月から水上自動操船のデータ取得を始め、9月にはソナーやLiDARなどのデータなどが集まってきて、ディープラーニングをすすめている。ただ、自動で船を走らせるだけじゃなくて、この実験では、責任関係などを含めて法令遵守にむけた知見と技術の向上も重ねていく」(渡部教授)

また群馬ボートライセンススクールの竹内徳和講師は「クルマの運転免許と、水上の船舶免許では、いろいろ違いがある。たとえば、自動運転AIシステムを載せた船が停泊しているさいも、クルマとは違ったルールやコンプライアンス的な部分もある。運動特性も違う環境下で、どう水陸両用自動運転バスをどう実用化していくか、そこを群馬ボートがもつノウハウでサポートしていきたい」とも。

さらに、「大学の生きた教材」としてこうした技術と経験を授業に活かす取り組みも、埼玉工業大学は継続させる。群馬県前橋市で12月7日に行われた「埼玉工業大学・群馬ボートライセンススクール 協定調印式」に出席した同大学 内山俊一学長は、式典でこう伝えた。

「陸上の自動車分野だけじゃなく、水陸両用自動運転AIシステム分野も、学生の研究プログラムに採り入れていく。これからは、学部の垣根を超えて、すべての学生が参画できるようなフィールドワークなどの機会もつくっていく。大学をあげて自動運転に力を入れていきたい」(内山学長)

群馬ボートライセンススクールを運営する籠島装業の籠島真二 社長は、この自動運転AIシステムつき小型ボート実験への参画について「こうした自動操船の技術を共有しながら、今後は人命救助や社会貢献にむけた船の役割などを探っていきたい」とも期待を寄せる。

いよいよ始まった、八ッ場ダムでの水陸両用自動運転バス実用化へむけたテスト操船。埼玉工業大学 渡部教授は「今後は水陸両用無人運転にむけて、自動上陸、自動着水、流木回避、さらには離島と離島を結ぶ水陸両用自動運転バスなどの実現へむけて実証実験とAIディープラーニングを重ねていく」とも話していた。