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世界初か? 熊谷市がバス隊列走行の実証実験を実施

  • 自動運転システム搭載車両。実証実験の車両はアルファード2台
  • 先頭の有人走行車に自動走行車両が追従走行中。2台を連ねる隊列走行。
  • 熊谷スポーツ文化公園内の陸上競技場外周路約1.4キロメートルを走行中
  • 熊谷スポーツ文化公園内の陸上競技場外周路約1.4キロメートルを走行中
  • 熊谷スポーツ文化公園内の陸上競技場外周路約1.4キロメートルを走行中
  • 熊谷スポーツ文化公園内の陸上競技場外周路約1.4キロメートルを走行中
  • 熊谷スポーツ文化公園内の陸上競技場外周路約1.4キロメートルを走行中

一般道でのバス隊列走行を目指す実証実験が、熊谷市で2020年11月21日に行われた。この実証実験は、国内初の試みで、世界的に見ても類を見ない。主体者は熊谷市、熊谷スマートシティ推進協議会、群馬大学次世代モビリティ社会実証研究センター、群馬大学発ベンチャー日本モビリティだ。

隊列走行は、最前列の車両にはドライバーがハンドル、アクセル、ブレーキを操作し、2両目以降の後続車はそれに連なって走行するというもの。2両目以降のドライバーは、ハンドル、アクセル、ブレーキを操作しない。2両目以降のドライバーが不在でも走行が可能になれば、ドライバー不足解消にもつながる。

これまで高速道路におけるトラックを用いた隊列走行の実証実験は、国内外で行われてきた。高速道路は自動運転にとって環境が整っているからだ。一方、一般道での隊列走行は筆者が知る限りでは、アイディアすらほぼ聞いたことがない。

今回の実証実験では一般乗用車のトヨタ『アルファード』を用いたが、今後はバス車両に置き換えて、実用化に向けた実証実験へとステップを進める。

◆需要に応じて車両台数が変えられる柔軟性

実証実験の試乗会では、群馬大学が所有する自動運転を搭載したアルファード2台が用意され、走行開始前に2台の連結(連動)をセットする作業が行われた。

連結作業が終わると後部車両は、ドライバーがハンドル、アクセル、ブレーキから手足を離した状態になった。赤城おろしと呼ばれる強風が吹き荒れ、木の葉が激しく舞う中で、陸上競技場の外周路約1.4kmでの実証実験は問題なく行われた。筆者は後続車に試乗したが、連結作業に時間がかかっているなと感じたが、乗っていても怖いなどと感じなかった。

熊谷市はラグビーの街として知られる。大学や高校選抜大会やワールドカップの会場となった熊谷スポーツ文化公園は、ラグビーの聖地だ。しかし、JR熊谷駅から公園までは、歩いて行ける距離に無く、バスで約15分かかる。そのため、イベントがある日と無い日で増減するバスの運行が課題となっている。乗車定員の多い連節バスを検討したが、車両価格が高く、イベントの無い日は供給過多になるため熊谷に適さなかった。

そこでアイディアとして浮上したのが、バスの隊列走行だ。限定した地域での無人バスに限定した群馬大学だったが、熊谷市の実情を聞いて日本初のアイディアが生まれた。

◆無人運転よりシンプル

よくよく考えてみると、一般道でのバスの隊列走行は、一般道での無人運転よりも実用化しやすい。ドライバーが運転する最前列の車両に、後続車がカルガモ走行するというシンプルなもので、無人運転バスを走らせる際に必要となる地図づくりが不要だからだ。

一般道におけるバスの隊列走行を実用化するためには法整備も必要だ。まず自動運転レベルのカテゴリーにおいて、一般道におけるバスの隊列走行はどのカテゴリーに当てはめるか。さらに後続車が無人になった場合は、牽引にするのかなど整理が必要になるようだ。高速道路での隊列走行を一般道にどのように適用するかがポイントとなる。

隊列を組む際のバス車両の長さだが、ルートや交通量により変わってきそうだ。群馬大学研究・産学連携推進機構次世代モビリティ社会実装研究センター准教授の小木津武樹氏によると、バス車両であれば3台連ねることが可能なのだという。また車間は今回の実証実験では3mとったが、短くも長くもすることができるのだそうだ。

熊谷市総合政策部企画課スマートシティ担当副参事の竹村英紀氏は「できれば3~5年以内には、一般道における隊列走行を実用化したい」と語る。自動運転技術はざまざま活用方法がある。法整備や技術革新の進捗、走行環境、コストなどに合わせて柔軟に活用すると良いと感じた。