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【レスポンスカンファレンス2026】10年後の自動運転社会はどうなる? 官民トップランナーがパネルディスカッションで語る「日本の勝ち筋」
イードが主催する「レスポンス カンファレンス2026」が6月30日、都内において開かれ、自動運転関連企業や自動車メーカーの代表によるパネルディスカッションが行われた。
モデレーターを務めたのは、自動車ジャーナリストの清水和夫氏。
レスポンスの三浦和也編集長はカンファレンスの冒頭、「『ジャパンモビリティショー2025』の会期中に、有明の小さなレストランで自動運転に関するアフターパーティーを開きました。その席に出席していただきともに未来を語り合ったのが、国土交通省の久保田秀暢氏、そして私が尊敬してやまない清水和夫氏でした。あの夜の熱量こそが(カンファレンスの)出発点」と紹介した人物。日本の自動車メディア界における自動運転技術のキーパーソンの一人である。
パネルディスカッションの出席者も錚々たる顔ぶれとなった。
産業技術総合研究所 インテリジェントシステム研究部門 招聘研究員の横山利夫氏のほか、OEMからはトヨタでデジタルソフト開発センターのチーフプロジェクトリーダーを務める鯉渕健氏と、いすゞで開発部門のシニア・ヴァイス・プレジデントを務める佐藤浩至氏、さらにスタートアップ企業としてタクシー会社を運営する傍ら、自動運転技術の開発を行うニューモ(newmo)の青柳直樹氏、さらに今回の主催者であるレスポンスの三浦編集長である。
◆「国家プロジェクトへと変わった」──日米欧中を一堂に議論するコンセプト
パネルディスカッションの冒頭、清水氏は「アメリカはアメリカ、中国は中国、ヨーロッパはヨーロッパ、日本はこうだよね、といった話が数多く出てくるので、どうせだったら日米欧中全部一同に集めて議論できないか、というのがこのセミナーのコンセプトです。ここでは、パネルディスカッションというかたちで、もう少し深掘りした議論をしていきたい」と述べる。
清水氏は、政府が2040年までに自動運転に対し約8.2兆円の投資を官民で実施する話題を引き合いに、「いよいよ自動運転が、企業の挑戦から本格的な国家プロジェクトになったというのが私の印象」と話す。
◆調査が示すギャップ──ADASは使われているが、レベル2++は「まだ遠い話」
まずは三浦編集長が、セゾン自動車火災保険と共同で実施した調査結果を報告した。三浦編集長はADAS(先進安全装備)の利用実態を紹介し、「レーンキープアシストの利用率が8割近くにのぼる。私の感覚では『結構みんな使っている』という印象」と述べる。しかし一方で、次に購入するクルマに対し自動運転レベル2++の搭載を重要視するかについての回答は30.6%にとどまり、「市街地でのハンズフリー運転がどういうものなのか、まだまだイメージできていないのではないか」とユーザーの実態を考察する。
さらに軽自動車の運転支援機能のニーズに関しては「意外と軽自動車ユーザーと言えども、移動手段としての『下駄車』を求めてるわけではない。高度運転支援が、登録車と同等に欲しいと思ってるユーザーが多い」と指摘した。さらに議論は、10年後の自動運転社会の展望へと移っていく。
◆10年後の未来像──無人サービスの定着と物流革命に期待
まず横山氏が「10年後は持続可能な自動運転サービスが定着してると期待しています。サービスを持続可能にするためには、車内を無人にする必要があります。自家用車の領域では、E2Eの技術を適用してレベル2++として新たな価値を提供し、そこで実績を積み上げることでレベル4の車両へと進んでいくのではないか」と述べる。
それに対し鯉渕氏は、「5年後ぐらいまでには、商用運行から自動運転車両が出てくると思っています」と語る。佐藤氏も、鯉渕氏に同調するかたちで次のように述べる。「現在の日本の物流システムはとてもよくできています。しかし、あくまでドライバーが運転することを前提で成立しているので、『荷待ち』などの様々な問題が発生してしまっているのが現状です。10年後は、レベル4の無人の自動運転が可能になっており、(自動運転に合わせて)物流システム全体を最適化することが10年後には起き始めていると思います」(佐藤氏)
タクシー事業者として自動運転技術の開発を主導する青柳氏は、「自動運転の社会受容を進めていくには、事業者が増えていかないと過渡期を越えないと思っています」と提起。その上で、自社のポジションに関し「乗務員不足は待ったなしの課題で、10年と言わず、今後5年でさらに深刻になっていきます。交通空白地という社会課題に対し、自動運転タクシーは非常に大きな役割を果たせると期待しています」と述べた。自家用車の領域では、日産が2027年度に市街地でのハンズオフ機能を「エルグランド」に導入するとしており、ホンダも2028年度に投入する新型「ヴェゼル」に次世代ADASを投入すると発表している。
清水氏は「ヴェゼルはBセグメントのクルマ。今後それより下のカテゴリーに搭載されれば、軽自動車にレベル2++を採用するのも夢物語ではない」と語る。軽自動車は、日本の新車販売で4割近くに達すると言われている。清水氏は「軽自動車の運転支援を高度化し、それがミスユースしないような仕組みを作れたら、日本の社会はいい方向にいく思っています」と述べた。
◆レベル4は「製品」でなく「サービス」──法規・認証の壁をどう越えるか
自動運転技術の普及が期待される一方で、法規対応に対し鯉渕氏は「レベル4のサービスを提供するのであれば、設計通りに動いているのかを、事故が起こらなくても常にモニタリングをしなければいけない。レベル4は製品というよりサービスになる」と指摘する。
佐藤氏は認証取得の難しさについて「(現時点のルールは)あくまで特定のODD(走行環境条件)を対象にした認証なんです。ある地区で認証を取っても、別の地区では再度認証を取得する必要があるので非常にコストが掛かると考えています」と話す。その上で、「物流はA点からB点へルートが固定されるので、ODDが限定しやすい。レベル4で先行できるのは商用車だと思っています」と商用車ならではのメリットを強調する。
◆政府への要望──速度規制の明確化、世論形成の後押し、基礎技術の育成を
青柳氏も次のように同調する。「中国でもアメリカでも、限られたエリアで時間をかけて実証してきた。その蓄積があるから、さらに次のエリアへと展開できるフェーズに入っています。我々もそのステップを踏んで追いかけていくことを想定しています」(青柳氏)
続いて話題は、政府への要望へと移った。横山氏は現状の課題に関して「規制速度と実勢速度の乖離がフリクションになる。今のガイドラインでは『周りの交通参加者に対しても事故を起こさないように設計しなさい』といった趣旨のことが書かれているので、絶対守らなきゃいけない適切な速度がもう少しクリアになると、設計する側としてはありがたい」と話す。
「ゾーン30」のようなエリアが増えているが、自動運転中、あるエリアに侵入して制限速度が変わり車両が急ブレーキを踏めば、後続車に追突されかねない。安全のための自動運転が逆に危険なものになっては本末転倒だ。
鯉渕氏は、自動運転の普及には社会受容性も醸成していく必要があると述べる。「自動運転の技術は、人手不足の中で移動の自由を担保するという面で必ず必要になる技術。『これは必要な技術なんだ』という世論形成を国としても後押ししてほしいと思います」(鯉渕氏)
一方で佐藤氏は、経済・安全保障の観点から次のような要望を述べた。「日本は自動運転が非常にやりやすい国だと思います。ただ、5年ほど先までは今ある米中が作った技術をうまく取り込んでやってくしかない。SoC(システム・オン・チップ)はエヌビディア製ですし、全て海外製。個人的には安全保障を含めて基礎技術の育成をお願いしたいです」(佐藤氏)
◆国交省が示すジレンマ──定量規制は「日本の勝ち筋」を狭めるリスクも
ここで清水氏は、自動運転の利便性と安全性について客席にいた国土交通省 大臣官房 技術総括審議官の久保田秀暢氏に話を振った。久保田氏は政府の見解について次のように述べる。「レベル4の自動運転は『優秀なドライバーよりも安全でなければいけない』という、基本的な考え方があります。つまり、人間なら避けられる事故は必ず避けなければいけない。物理的にどうやっても避けられない事故については、裁判所が判断するというのがいまの流れで、日本の場合はそれしかルートがないと思います。
先ほど、定性的な要件をできるだけ定量的な要件へ変えてほしいという話がありましたが、実はジレンマもあって、機能要件に制限をかける規制は将来の技術発展を阻害する可能性も出てきてしまいます。特に自動運転は色々なケースが想定されので、最初から定量的に全てを決めてしまうのは、逆に日本の勝ち筋を減らしてしまうかもしれません」(久保田氏)
◆第1回が刻む一歩──「社会全体で作る」自動運転の時代へ
各パネリストは今回のカンファレンスに対し、「海外の最新動向を把握する良い機会になった」「自動運転は自動車メーカーが作ってきた技術だが、いよいよ社会全体で作っていくフェーズに入っている」「社会受容性を作らなければいけない」「安全性を担保しながら技術を高めていかなければいけない」と口々に話していた。「レスポンス カンファレンス」は来年の2027年も開催される予定だが、10年後に振り返った時、この第1回目が日本の自動運転史における歴史的な一歩だったと言えることになりそうだ。












