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【レスポンスカンファレンス2026】グローバルで進むクルマの知能化。勝ち抜くカギは「AIガバナンスと全体最適化」…PwCが解説
イードが主催する「レスポンス カンファレンス2026」が6月30日、都内において開かれた。
「レスポンス カンファレンス2026」は、「グローバルに進むクルマの知能化:日米欧中TOPプレーヤーの現在地と今後~」をテーマに、国内外の自動運転技術のキープレイヤーたちが、世界的に伸長する自動運転市場について語り合う場であり、今年が第1回目。カンファレンスでは、「自動車・モビリティを勝ち抜くために必要な産業アーキテクチャ視点とガバナンス」と題し、PwCコンサルティングによるトークセッションが行われた。
セッションでは、自動車・モビリティの知能化が進む中、PwCスマートモビリティ総合研究所が提唱する産業アーキテクチャによる全体俯瞰、全体最適化視点の重要性を解説しながら、最新のAIガバナンスが紹介された。
◆クルマの“作り方”が変わる – 産業アーキテクチャで捉えるGX・DXの大波
まず、PwCコンサルティングでインダストリアルトランスフォーメーション ディレクターを務める細井裕介氏がマクロ的視点で現在の自動運転市場を解説した。
「ご存知の通り、自動車モビリティは大きな変革期にあります。グリーントランスフォーメーション(GX)としての電動化、バッテリーEV化が進む一方、デジタルトランスフォーメーション(DX)領域では、クルマのSDV化、自動運転化、サービスカー化といった大きな変化が起きており、それがロジスティクスの高度化、交通の在り方に波及しています」(細井氏)
モビリティにおけるGXやDXの大きなうねりの中、PwCが所有するスマートモビリティ総合研究所では「産業アーキテクチャ」という考え方を重要視しているという。細井氏は、産業アーキテクチャについて次のように解説する。「産業アーキテクチャは、縦軸に『ミッションアーキテクチャ』、横軸に『ファンクションアーキテクチャ』という考え方で整理できます。ミッションは、どこかへ移動したい、クルマを便利に使いたいといったユーザー価値を生み出す部分、ファンクションは、そのミッションを実現するために必要な機能、例えばタイヤなどが該当します」(細井氏)
細井氏によると、クルマの価値(ミッション)の変化に伴い、クルマの知能化といった内部領域(In-Car、インカー)だけでなく、サーバーとの情報連携など外部領域(Out-Car、アウトカー)までが一体で変化しているというのが昨今の状況だそうだ。
「これまでの自動車業界は、自動車メーカーが中心となって車両全体を設計し、サプライヤーがクルマを製造してきました。一方で、例えば中国で自動運転をするためには、現地の自動運転プラットフォーマーを活用しなければ日系メーカーはクルマを販売することは難しいのが現状です。バッテリーEVを作るにしても、バッテリープラットフォーマーの電池を使って作ることが競争優位性となります。半導体もそうですが、変化の激しい中、自動車モビリティ産業の全体の捉え方が変化しています」(細井氏)
細井氏によると、現在は自動車メーカーが自社でソフトウェアの開発を集約していくケースと、中国などのプラットフォーマーを使ってサプライヤー構造を変化させながらソフトウェアを買うビジネスモデルが混在しているそうだ。
トヨタは、新型『RAV4』からソフトウェア開発プラットフォームとして「アリーン」を活用している一方で、マツダは中国専用車として「EZ-6/EZ-60」を中国での合弁事業のパートナーである長安汽車と開発製造を行なっている。このように、近年はサプライヤーとの関係性が大きく変わるなど、クルマの作り方そのものが大きく変化している。「いかに開発速度を高め、市場ニーズに合わせ、開発コストを下げるかを考えた時に、競争優位性を生み出すためのオペレーティングモデル(※開発環境、サプライチェーン、データ連携基盤、特許政策など企業の一連の業務)を進化させることが非常に重要だと考えてます」(細井氏)
◆生成AIがもたらす開発の高速化と「品質ガバナンス」の崩壊リスク
細井氏に続き、PwCコンサルティングでインダストリアルトランスフォーメーション シニアマネージャーを務める落合勇太氏が「In-CarにおけるAI活用とその要所」と題し、複雑化する車載ソフトウェア開発における品質担保について解説した。落合氏は、次の4つの数値を持ち出しながらSDV化によるソフト開発の重要性を述べる。
・60%:ソフトウェアは2030年に車両に対する知覚価値の60%を占めるようになる
・3か月:ソフトウェアの更新サイクル
・300%:車両ソフトウェアの総量の増加
・83%:今後10年以内のソフトウェア開発のコストの増加量
「総じて開発の量、質ともに増大し、車両におけるソフトウェアの立ち位置が非常に重要になっていきます。(中略)サイバーセキュリティにおいては、近い将来、AIを使った攻撃と防御が勝手に裏で行われる、そんな未来も来るのではないかと予想しています」(落合氏)
落合氏は、これまでソフトウェアの開発量の上限がエンジニアの能力によって決まっていたのに対し、生成AIの登場で開発の高速化・高度化が進み、「確認・チェックが新たなボトルネックになる」と指摘する。「一部自動化できるとは思いますが、自動車は特に安全性が求められるので、重要工程は必ず人によるチェックが入ります。そうなると、今度はレビュアー側が非常に逼迫し、その負荷が多くなります」(落合氏)
さらに、各国でAIに関する法規制も異なっており、その対応も必要になるという。そうした状況の中、現場では次のようなハレーションが起きていると指摘する。「技術戦略の変化は大きいのに、品質のガバナンスは変わらずに厳しい。アジャイルに開発したいけれどルールは変わらないといったように、ルールが一律であるということが現場で起きています。さらに、ベンチャー企業やグローバルサプライヤーと組んだ際は相手に合わせてルールを作らなければいけない、そういった課題があるにも関わらず、ルールが変わらないことも起きています」(落合氏)
落合氏によると、人手不足から中途採用や新人を増員し、今まで社内の常識(暗黙知)だったものが共有・浸透されずにルールだけ厳しいものが残され、組織が空中分解してしまうことも起きているという。そうした課題に対し、落合氏は次の4つの解決策を示した。
(1)品質方針の再定義
(2)既存の全品質プロセスの見直し
(3)E/Eアーキテクチャの見直し
(4)AI活用に向けた知見の可視化
落合氏は「品質方針の再定義と、プロセスの見直し、アーキテクチャーの見直しと知見の蓄積。こうしたところから品質ガバナンスの見直しをやっていく必要があります」と述べた。
◆AIガバナンスは“ブレーキ”でなく“シートベルト” – 全社視点で攻守を両立せよ
最後に、PwCコンサルティング インダストリアルトランスフォーメーション ディレクターの前田翔平氏が「全体アーキテクチャを俯瞰した際の全社AIガバナンス」について参加者にPwCの考えを披露した。前田氏はまず「AIは進化する技術であり、AIの進化に伴い増大するユースケースを認識することが必要」と話し、「これらが産業にどう影響を与えるか、政府や業界団体がどのように動いているかを俯瞰した上で、経営資源を最適に配置することが重要」と語る。
前田氏は具体的なAIの活用に関して、自動運転や車載AIエージェント、認証や不正検知だけでなく、マーケティング領域での活用も進んでいくと予想する。その上で、AIに関するガバナンスも変わってくるという。「新しいオペレーションモデルを考えたとき、業界のプラットフォームを使う部分と、外部から買ってくる部分、自社で内製化していく部分。ここをきちんと線引きしたガバナンス設計が非常に重要になります」(前田氏)
前田氏は、内製化する部分に関しては、「独自データとして活用していく『攻めのガバナンス』が必要」と述べつつも、AIを使うことの「リスク管理(守り)」も必要で、攻め守りを「両輪で回すことが重要」と話す。その上で、「既存のガバナンスといかにシームレスに連携、融合させていくかがポイント。(新たに)AIガバナンスを作ってしまうと、現場としては新しい規制が増えたことに疲弊して形骸化してしまう」と指摘する。
その上で、企業がAIを活用するためには、事業部門と経営層を連携して結びつけるガバナンス体制を構築することで、技術的リスクと社会的リスクを最小化する仕組みづくりが重要だと述べた。「リスクに濃淡をつけながら、リスクが小さいものに関しては早く市場に出していく一方、リスクが大きいものに関しては、きちんといろんな目線を入れて確認していくことが必要です」(前田氏)
最後に前田氏は、AIガバナンスの目的を次のように語る。「AIガバナンスは、攻めを止める『ブレーキ』ではなく、安全にアクセルを踏んでいくための『シートベルト』のようなな機能です。日本のモビリティ業界が、再度進化していくことを支える基盤です」(前田氏)
競争が激しい自動車業界において、AIを活用しないことは今後ありえない。そのような中、リスクを最小限に抑えながらいかに活用できるかが、企業の競争力につながっていきそうだ。












