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マツダ 工藤執行役員「実用航続と環境負荷低減を両立」…量産EV第1号『MX-30』のバッテリー容量

  • 《撮影 池原照雄》
  • 《撮影 中尾真二》
  • 《撮影 中尾真二》
  • 《撮影 池原照雄》

マツダのR&D管理や商品戦略を担当する工藤秀俊執行役員は、10月24日に東京本社で報道関係者と懇談し、同社の環境対応や電動化方針について説明した。

マツダは同日開幕した東京モーターショー2019で、量産電気自動車(EV)の第1弾となる『MX-30』を初公開した。2020年後半から環境規制の厳しい欧州での販売を始め、その後グローバルに展開する方針だ。MX-30の公表されている性能は、フル充電時の航続距離が欧州のWLTPモードで200km、搭載するパナソニック製リチウムイオンバッテリーの容量は35.5kWh。

EVの航続距離としては決して長くはないが、工藤氏は欧州のEV先進国であるノルウェーや米国でのEVの利用状況などから、航続距離(=バッテリー容量)を決めたと指摘した。マツダの調査によると、EVの1日の走行距離はノルウェーで50km程度、米国では64km(40マイル)程度だという。また、EVの保有世帯ではノルウェーで70%程度が、米国では90%超がエンジン車も保有し、車両を使い分けている。

このような利用形態の現状から、工藤氏は「実用的には十分のバッテリー容量と考えた」と指摘した。同時に、EV用バッテリーの製造時の環境負荷についても考慮した結果だという。バッテリーは製造では「電極の乾燥工程や、クリーン状態にする工場そのものが電力多消費型」(工藤氏)のため、CO2(二酸化炭素)排出は少なくない。マツダの試算によると、バッテリー容量50kWhのEVと伝統的なエンジン車の車両製造時のCO2(二酸化炭素)排出を比較すると、EVはエンジン車の2~3倍相当になるという。

マツダは環境戦略におけるCO2(二酸化炭素)抑制について、燃料や電力の消費を「WELL-TO-WHEEL」(燃料採掘から車両走行まで)で捉えることや、車両を資源採取から廃棄までのライフサイクル全体で考慮するLCA(ライフ・サイクル・アセスメント)の評価を採用している。LCAで捉えると元々環境負荷の大きいバッテリーは容量を増やすごとに、その負荷もさらに増大することになる。

こうした事情や車両コストへの影響も配慮し、マツダは量産EV第1号となったMX-30のバッテリー容量(35.5kWh)を設定した。マツダの試算では、MX-30と同等性能のディーゼルエンジン車がともに累計走行16万kmに達するまでのLCAでのCO2排出量を比較すると、ほぼ同等になるという。工藤氏は35.5kWhというバッテリー容量について「実用的な航続距離と、本質的な地球環境負荷低減を両立させる数値」と、強調した。

マツダは電動化対応について、EVやプラグイン・ハイブリッド車(PHV)など複数の技術による「マルチソリューションで臨む」(丸本明社長)方針だ。このなかで、航続距離の長いEVについては、小型軽量のロータリーエンジンを発電用に搭載する「レンジエクステンダーEV」の開発を進めており、バッテリーのみのEVに対し2倍程度の航続距離としていく。