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国産初の連節バス、大量輸送トレンドにあわせた和製技術の結晶[フォトレポート]

  • 《撮影 大野雅人(Gazin Airlines)》
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「いつも使い慣れてる路線バス車両と同じ使い勝手で、連節バスも扱えないか」 そんな現場からの声から、産声をあげた国産初のハイブリッド連節バス。いすゞと日野が共同で開発した最新鋭路線バスは、一部に海外で実績のある部品を採用した、いいとこ取りモデルだ。

5月24日にジェイ・バス宇都宮工場で開かれた概要発表会でつかんだ情報を。当日は、いすゞ自動車 バス商品企画・設計部 鈴木隆史チーフエンジニア、日野自動車 車両企画部 山口誠一チーフエンジニア、ジェイ・バス 中井徹 常務取締役らが登壇。この国産初のハイブリッド連節バス(名称未定)の開発経緯や市場背景、車両の特徴、前車と後車の製造工程、製造工期などについて教えてくれた。

◆エルガやブルーリボンと同じ操作系を

国内を走る連節バスは、ボルボやダイムラーといった海外メーカー製を輸入し、走らせるケースがほとんど。「ヨーロッパから船に乗せて、国内に上陸させてそこからまた日本仕様に改造する工程が必要だった。操作系が左右逆転していたり、整備システムなども日欧で違う点を改造する時間と手間が要る。また、壊れたときに部品を海外から調達するってことで、スピーディーにメンテナンスできないといった悩みがあった」(鈴木チーフエンジニア)。

「顧客から『いつも買っているところから連節バスを購入したい』『日本にあった使い勝手のいい連節バスがほしい』といった声を受けたことから、開発時点で操作系は、エルガやブルーリボンと共用のものを採用。使い慣れた同じ操作系を実現させた」(鈴木チーフエンジニア)

◆アクスルや連節機は海外製を採用

こうした顧客の声を受け、いすゞと日野は、一般的な単車の路線バスと同じ部品を流用しながら、新しいデザインや次世代都市交通システム(ART:Advanced Rapid Transit)で走るシーンを想定した専用ITSを採用。いっぽうで、「まだ開発・製造には時間がかかる」という部分は海外で実績のあるパーツを採用した。

この車両のフロント、センター、リアのアクスルはZF社製、アコーディオンのような連節機コンポーネントはヒューブナー社製のものを採用。この連節機は、後退時に連節角度に応じてエンジントルクを制限し、エマージェンシーブレーキも兼ね備えているもので、「メンテナンスは国内で対応させる」という。

◆使い慣れた操作系で安全装備を拡充

このハイブリッド連節バスの運転席には、左右に11インチタブレットほどのモニターが並ぶ。最も左側が左側方確認モニター、シフトレバー脇にあるのが後車室・後方確認用、右側には右側方確認用がある。

また、ドライバー異常時対応システムは路線バスとして世界で初めて採用されたシステム。運転手に異常が発生したときに、車内でボタンを押すと非常ブレーキでバスを緊急停止させるというしくみで、運転手の右ひざ付近と運転席直後のポールなどにボタンがついている。

このボタンを押すと、ゆるいブレーキが3.2秒間かかり、そのあと本ブレーキがかかりクラクションとテールランプ、ハザードランプで急停止を知らせるというシステムだ。

◆後車はいったん製造ラインから外れて別仕上げ

現状では、このハイブリッド連節バスはジェイ・バス宇都宮工場で製造される予定。新規のラインを設置せず、既存の路線バスの製造ラインで流してつくっていく。

そのうえで、最後部にエンジンが載っている後車は、途中でメイン製造ラインから外れて別で仕上げるという。「内装、エンジン搭載、塗装などが終わると、工場北側にある後作業棟に後車は移される。後車はこの後作業棟で仕上げを行い、最後に後作業棟で連結させる」とジェイ・バス宇都宮工場担当者。

また現状の生産能力については「日野といすゞで年間17台を製造できるように設定している」。工期については、「結合入りから35日でフィニッシュさせる」とも教えてくれた。

ハイブリッド連節バス 主要諸元
●エンジン:A09C(排気量8866cc)+ハイブリッドシステム
最高出力:265kW(360PS)
最大トルク:1569Nm(160kgf・m)
●燃料タンク容量:250L
●トランスミッション:7速AT
●ブレーキ
主ブレーキ:空気式 前中後ディスク
補助レーキ:エンジンリターダ+ハイブリッドリターダ
●排ガス後処理装置:DPR+尿素SCR
●車体
床仕様:ノンステップ
扉仕様:前 グライドスライド扉/中後 幅広引扉
全長:17990mm
全幅:2495mm
全高:3260mm
ホイールベース:5500mm 6350mm
最小回転半径:9.7m
アプローチアングル:9.0度
デパーチャアングル:7.0度