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三菱電機、ドライバーの飲酒状態を推定する新技術開発…顔映像から非接触で脈拍数を計測
三菱電機は12月16日、運転中のドライバーのわき見や居眠りを検知する「ドライバーモニタリングシステム(DMS)」の映像から非接触で取得した脈拍数や、車両制御情報などを組み合わせることで、運転中のドライバーの飲酒状態を推定する技術を開発したと発表した。
本技術は、同社AI技術「Maisart(マイサート)」の開発成果で、検知結果に基づくドライバーへの警告表示や運転制御などを通じて、飲酒運転による交通事故の削減に貢献する。
飲酒運転による交通事故は世界各国で深刻な社会問題となっており、米国では年間1万人以上、EU23カ国では年間2000人以上が命を落としている。こうした状況を踏まえ、欧州では新車安全性評価プログラム(NCAP)の評価項目拡充に向けて、DMSへの飲酒状態検知技術の導入が検討されており、米国では新車への飲酒運転防止技術搭載の義務化に向けた議論が進行中だ。
飲酒運転防止策として、アルコール・インターロックを導入する国もあるが、本方式にはエンジン始動後の飲酒を検知することができないという課題がある。また、カメラ映像を用いて顔や目の情報から覚醒状態を推定する技術もあるが、飲酒による覚醒度の変化が表情に与える影響には個人差があるため、表情変化のみで覚醒度低下を高精度に判別することは困難だった。
同社は今回、DMSの映像を解析して取得したドライバーの脈拍数、目の動きと、ハンドル・アクセル操作などの車両制御情報を組み合わせてAIで解析することにより、運転中のドライバーの飲酒状態を推定する技術を開発した。飲酒による表情変化が分かりにくい場合でも、飲酒によって変化する脈拍数を判定に用いることで、飲酒状態を高精度に検知することが可能になる。
まず、DMSの近赤外カメラ映像から、運転中のドライバーの脈拍数を高精度に計測する。近赤外カメラを用いて取得したドライバーの顔映像から、脈動に伴う血液流量変化による皮膚反射の微小輝度変動を抽出することで、非接触で脈拍数を計測する。アルゴリズムの改良により走行時の外乱を抑制し、脈拍数の変化への追随性を向上させることで、飲酒による交感神経活性化に起因する脈拍上昇を高精度に検出する。車載ECUにソフトウェアのアップデートで搭載可能だ。
次に、生体情報を活用し、外部環境に影響されない高精度な飲酒状態検知を実現する。DMSの映像から取得した脈拍数データおよび目の動き、車両制御情報を用いて、飲酒状態を判定するAIを開発した。脈拍数データを判定要素として追加したことで、飲酒による表情変化が分かりにくいケースでも、覚醒度低下を高精度に判別できる。
オークランド大学(米国ミシガン州ロチェスター)との共同研究において、さまざまなスキンタイプ、年齢、性別、人種のデータを収集し、欧州や米国での使用を想定した検証を完了した。車載制御システムとの連携により、判定結果に応じた警告表示や運転制御を実現し、飲酒運転による事故発生リスクの低減に貢献する。
今後の予定として、技術の改良や評価検証を進め、欧州や米国での法規・アセスメント化に合わせ2026年以降の実用化を目指す。












