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【インタビュー】新型マツダ『EZ-60』の原点となった『創(ARATA)』から探る「魂動デザインと未来感の融合」とは

  • 《写真提供 マツダ》
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  • 《photo by Mazda》
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  • 《写真撮影 豊崎淳》
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マツダは同社が出資する現地法人長安マツダから電動クロスオーバーSUVの『EZ-60』を発表した。このベースとなるのは昨年の「北京モーターショー2024」で公開された『創(ARATA)』だ。このモデルは先行して海外で販売を開始した電動セダン『EZ-60/マツダ6e』と同様に「魂動デザイン」に未来感を融合させたデザインをまとっている。

マツダ最新のデザインでは何を表現しようとしているのか。創(ARATA)のデザインを手がけたマツダデザイン本部の木元英二さんに話を聞いた。

◆メインストリームとモダンストリーム
木元さんによると、マツダは企業として、「“Uplifting Human Spirit”という目標を掲げています。これはクルマを通じて、人々にポジティブな活力を与えて、“前向きに今日を生きる人の輪を広げる”ことを目標にクルマづくりをしています」という。

デザインにおいても、「“動くことへの感動”や高い品質などを通じてそこを目指し、“クルマはやっぱりいいものだ”と思ってもらえるように、例えば小さな子供が見てもワクワクしてもらえたり、クルマ愛好家からは感嘆な言葉が発せられたりなど、ときめきのあるデザインをしたいと思っています。そしていつの日か、マツダに乗りたい、マツダと過ごしたいと思ってもらいたいと思っています」と話す。

今回のARATAにおいても、「電動車だとか、中国市場は特殊だとかの意見はあるかもしれませんが、しっかりとこのマツダの掲げる目標に向かってクルマづくりをしていますし、そこは決して忘れていません」と語る。

これまでも、「マツダデザインの目標である”動くことへの感動“をそれぞれの時代に即した表現で実践してきました。その歴史の中で、艶(エン)と凛(リン)という日本の美意識の伝統に基づいた進化という“メインストリーム”があります」と木元さん。例えば『RX-EVOLV』や『ヴィジョンクーペ』といったコンセプトモデルが代表格だ。

同時に、「時代の要請に応える“モダンストリーム”を加えた、より幅広い表現を行っていく実験的なものもあります。これは魂動デザインの幅を広げ、新たな価値観を模索する役目を負っています」。例えば『MX-30』や『CX-50』などがそれにあたる。MX-30はBEVやREVという新しい動力源を持ったクルマであり、CX-50 はアメリカ市場においてアウトドアでのクルマの在り方を考えたクルマという位置付けだ。その上で、「マツダのモダンな造形や魂動デザインを適用して作り上げたデザインをまとっているのです」とマツダが考えるデザインに大きく2つの流れがあることを説明する。

ではARATAはどちらになるのか。木元さんは「モダンストリームの流れを受けています」と明かす。「電駆という新しい駆動方式によって、クルマとの新しい関係を期待する人たちに、新しい生活を予感させるクルマを魂動デザインで表現したモデルがARATAです」とのこと。そしてマツダとして、「新しい旅立ちに相応しい名前として創(ARATA)と名付けました」という。

この名前の由来は、「未来に向けてマツダが新しいものを共創して、新たな1歩を踏み出したことを表現しています。毛籠社長(毛籠勝弘マツダ社長)も(昨年の北京モーターショーの)記者会見で長安マツダは中国の良き友人でありパートナーだといっています。その長安マツダと中国でともに新たな時代に向かって一歩を踏み出すコンセプトカーを共創することをこの漢字一字に込めています」と説明した。

◆機能と美しさ、未来感を兼ね備えている
ARATAのデザインテーマは“Soulful + Futuristic + Modern”で、これはEZ-60/マツダ6eも共通だ。「マツダが新エネルギー駆動時代に向かうにあたり、魂動デザインの日本の伝統美に裏打ちされたソウルフルなデザインと、最近の中国NEV車(中国の新エネルギー車“New Energy Vehicle”のこと)に代表される、未来的なモダンデザインを融合することで、日本から出て来た新たな魅力的な選択肢になりたいと考えています」とのこと。

サイドシルエットは、「(人間中心を表現するデザイン構成としながら)、未来的な“Long & Sleek”シルエットとしています。分厚いドア断面と4つのタイヤにしっかりとトラクションがかかるような立体構成とし、力強いダイナミックなサイドビューとています」とまさに魂動デザインの本流を表している。

そしてARATAのエンドピラー(Dピラー)周辺は、「このモデルのデザインを特別なものにしたいと考え、エンドピラーはシンプルで張りを感じる面を前後でシャープに切り取ったようなモダンな造形としています」と説明。実はこのエンドピラーとリアウインドウの間には空気が流れるようにデザインされており、そこで整流効果を生んでいるとのこと。

「機能と美しさ、未来感を兼ね備えているのです」と木元さん。シグネチャーウイングの下にあるエアインテークも同じ考えで、リア部分と連動し左右別々に開閉するという。そうすることで、高速域の電費とともに、コーナリング特性も向上させる目的も狙い、「今後エアロダイナミクスはより重要度が増していくので、我々はそれを上手く取り入れることで、未来へ行こうと考えました」とコメント。この仕組みはEZ-60にも採用されている。

◆マツダの顔は「シグネチャーウイング」
そしてフロントフェイスには魂動デザインを世に送り出して以来、シンボリックに表現してきたシグネチャーウイングがあしらわれている。これは、1997年にマツダとしてブランドシンボルを制定した時に決意した“未来への想い”を象徴したもので、駆動方式が変わっていっても決して忘れることはなく、マツダの誓いとして継続、進化させているそうだ。

一方で電動化が進んだ時にシグネチャーウイングがどうなるかも気になるところ。木元さんもそこは認めるところで、「我々も模索をしている途中ですが、我々の顔はシグネチャーウイングでしょう。ここから顔づくりを始めていくことに変わりはないと思っています。そこから自然に顔を感じる、ちゃんと黒い眼を作っていくなど、そういった新しさをやっていかないといけないと考えています」とコメントした。

その“黒い眼”は、『アイコニックSP』(2023年のジャパンモビリティショーで公開したスポーツコンセプトカー)と共通でもあるシグネチャーライトにあしらわれている。ライト内部に“点”を入れることで、「ここが瞳に見えるような表情をつくっています。そういったところがアイコニックSPあたりからの流れで、これも新しい表現手段のひとつとして広がっていくかもしれません」と木元さん。

リア周りでは、「エンドピラーからタイヤまでひとかたまりでトラクションを感じさせる未来的なシルエットを持たせました。リアランプのグラフィックは2つのウイングが重なったクロスウイングとしており、アイコニックSPのリアコンビランプのクロスサークルという、丸を2つ重ねたようなものを採用し、マツダのブランドを表現するクロスシリーズとしています」とし、今後も継続していくアイデンティティだという。

これらを実現するにあたっては、「マツダらしさを残しながら未来的なものをどう表現するかというバランスがすごくこだわりであり、苦労したところです」と語った。