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スズキの哲学「小・少・軽・短・美」を体現した『軽トラックEV』がめざすもの

  • 《写真撮影 宮崎壮人》
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スズキは5月21日に横浜で開幕した「人とくるまのテクノロジー展2025」に出展。国内で実証実験をおこなう軽トラックEVを展示し、新中期経営計画の柱となる次世代の環境技術を紹介した。

◆「小・少・軽・短・美」を体現した軽トラックEV
軽トラックEVは、スズキの『キャリイ』をベースにBEV(バッテリーEV)に改造した車両で、これを農家に貸し出し軽トラックEVの潜在需要やBEVの電池を活用した太陽光発電エネルギーの「自産自消」について検討するというもの。スズキの本拠地である静岡県浜松近郊の農家を中心に協力者を募り、実証実験をおこなう。

キャリイのユーザーの6割近くが田畑への移動や、農機具の運搬などに使用しているという。こうした利用状況から、基本の移動範囲が限られていること、太陽光で発電した電力を自宅で充電できることで遠方のガソリンスタンドまでいく必要がないなど、EVであることのメリットを最大に発揮できる。

EVというと気になるのがバッテリーの搭載量(容量)や航続距離だが、搭載量を増やせば航続距離は増えるものの車両重量や価格が増加する。逆に言えば、利用用途を明確にし、必要最低限のバッテリーを搭載することでEVのメリットを活かしながら、コストも抑えることができる。

スズキの調査によると農家で利用する軽トラックの移動距離は、1日あたり20km程度だったという。試作車の軽トラックEVもおよそこのあたりを想定しており、実際に使ってもらいながらより最適なバッテリー搭載量を決めて行くそうだ。

また今回の実証実験では単なる移動のためだけでなく、V2Hシステムを通じた「動く蓄電池」としての活用にも焦点を当てる。自宅では定置型蓄電池として家庭内での電力使用を効率化、さらに移動した際にはEVの電力を使って農作業をおこなうなど、データ収集、解析をおこないながら活用方法を探る。

車両の外観はガソリン車のキャリイそのままで、荷台の下にはエリーパワー性のバッテリーが搭載されている。必要最低限の量しか積んでいないため、重量増を抑えることで、車体そのものへの特別な改造は必要ないそうだ。スズキは「国や地域、お客様の使用状況に合わせ、エネルギー効率がベストとなる選択で過剰にバッテリーを搭載しない『バッテリーリーンな電動車』をお客様にお届けすることを目指し、エネルギーを極小化した電動車を開発していきます」としており、まさにスズキの社是「小・少・軽・短・美」を形にしたEVといえる。

スズキ開発者は「現在、ガソリン車のキャリイでできていることがEVになったらできませんでした、は許されない。移動が快適になる、出先でクルマの電力を使ってより仕事の効率が上がって楽になる、経費も削減できる、といった風に、電気の力で農家の皆さんの仕事をサポートすることができれば」と話していた。

スズキは今回の「人とくるまのテクノロジー展2025」で、二輪向けの新技術として、スズキの主力市場であるインドに投入するEVスクーター『eアクセス』、フレックス燃料車の『ジクサーSF 250 FFV』の展示もおこなった。