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【スズキ ワゴンRスマイル 改良新型】可愛いを突き詰めたデザインに込めたデザイナーの思い

  • 《写真撮影 内田俊一》
  • 《スズキ提供》
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  • 《写真撮影 内田俊一》
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スズキ『ワゴンRスマイル』の改良では、デザイン面に重きが置かれた。その方向性は“可愛い”だ。そこでデザイナーにその可愛いの解釈やデザインに反映させたことなどについて話を聞いた。

◆自然な“スマイル”を目指して
改良前のワゴンRスマイルは、日本車にはない個性をまといながらも可愛さという点では今一つだった。それは8割を占める女性ユーザーからも意見が出たという。そこで今回の商品改良では、「可愛いを振り切る」ことに重きが置かれた。

スタイリングを担当した長谷川尚美さんは、「(可愛いにもいろいろありますが)自然体で柔らかい雰囲気の可愛さ、ナチュラルさを目指しました」という。特に、「“スマイル”という名称から想像されるような造形にしたい、ちょっと笑っているような自然な笑顔が可愛さにつながるポイントになっていると思っています」と説明する。

その思いを新型に込めるために長谷川さんは、「(改良前は)グリルにメッキが入っていることでラグジュアリーな雰囲気や、大人っぽいちょっとハイソな感じの雰囲気がありました。しかし、時代の流れとしてリラックスできるような、自分が自然体でいられるようなものという需要が高まってきていますので、新型では少し柔らかい感じ、本当に片肘張らずに乗っていただけるようなデザインに落とし込みました」とのこと。

具体的には、「(フロント周りでは)エッジを多く効かせることでスタイリッシュさを表現していましたが、それを柔らかい雰囲気にするためにまず(ロアグリルなどの)面構成を見直しています」という。さらに、笑顔に感じてもらえるように、「ヘッドライト周りのぐるりとメッキで囲っていた部分をC字型にするとともに、グリル上部をボディ同色カラーにしました。そうすることで柔らかい印象と、伸びやかさを表現しています」。またそうすることで、「下のロアグリルとともに馴染みやすく優しいデザインになりました」という。実は改良前ではメッキでランプ周りやグリルを囲ったことで、若干怖いという意見もあったそうだ。そこでメッキを減らす手法を考えたわけだ。

◆女性がピアスをつけるように
一方で、可愛すぎてしまうと子供っぽくなってしまう懸念もあった。そこで、「その可愛さの中でポイントにメッキを使うなどで強調すべきところはするという考えです」。これは、「女性がイヤリングやピアスなど光り物を取り入れることありますよね。そういう雰囲気でおしゃれな感じを踏まえてこの形状に落ち着きました」とわかりやすく説明してくれた。

また長谷川さんは、「ロア部分の造形は、(下に向かって)角度を絞りすぎないように、また、内側への角度のつけ方などもかなりこだわって仕上げました」と語る。それは、「スマイルという名前なので、フロントにそういう可愛らしさや優しさの表現からちょっと笑顔を感じてもらいたかったから」とのこと。実はフォグランプの有無もあるので、その仕上げはかなり苦労したようだ。

苦労といえばフェンダーからロアグリルへのつながりも難しかったそうだ。フェンダーは変更なしで、ロアグリル周りのパーツのみ新作だったからだ。「フェンダーからつながるラインはそのままなので、それをロアグリルに向けてどう柔らかくつなげて、そのロアの表情ともうまくなじませるかは大変でした」と述べるが、非常に上手く仕上がっていると感じる。

長谷川さんは、「可愛さを求めているスライドドアのクルマで、ちょっと優しい感じのデザインに乗りたいという方には、改良前は選ばれにくいところが若干あったようです。特に若い女性の方には選ばれにくかった。そこでもうちょっと優しい感じの可愛らしいクルマにしようとデザインしていきました」と語った。

◆柔らかさを感じるボディカラーで
今回ボディカラーにはトープグレージュという新色が追加された。「ふわっと柔らかくハイライトが入るような質感になっていますので、スウェードの生地のような、少し起毛したような質感みたいなものをイメージしています」と話すのは、CMFを担当した山下百香さんだ。「今回のデザインコンセプト、ナチュラルユニークにつながるのですが、ただのグレーではない、ただのベージュでもない、程よく個性を感じるような、だけどナチュラルで使いやすくて、といったところで少し紫がかったようなちょっと上品さを感じるようなグレーが、デザインテーマとマッチしていのではないかと考えたのです」と語る。

同時にトープグレージュをボディカラーではなくルーフに採用し、ボディはソフトベージュにする仕様もあり、「ルーフやミラーに有彩色を持ってくるのは少なく珍しいタイプだと思いますが、今回トープグレージュをルーフで合わせられるのも推しポイントです」とのことだった。

山下さんはこのカラーを考えるにあたり、「『ラパン』だとガーリー可愛くて、『ハスラー』はちょっとポップ可愛い。ではスマイルはなんだろうと考えると、ナチュラル大人可愛いみたいなイメージかなと。そこでカラーもそこを目指しました」という。

◆マニッシュな可愛さとクールな可愛さ
インテリアも助手席前のカラーボードの色味が変更になった。80ほどの案を考え、そのうち12案は実際に試作品を作ったという。そして最終的に新色を2つ、リフレクショングレーとモスブルーが採用された。

山下さんによるとフレクショングレーは、「光が当たると本当にゴールドの粒子が少しキラキラと光って偏光するような上品な印象のパネルです。ナチュラルユニークといったテーマに合わせてナチュラルですが、少しこだわりと個性が感じられるような色を目指しましたので、カッパーのアクセントを合わせて個性を感じるように調色しています」。

そしてモスブルーは、カッパーではなくシルバーと合わせている。「少しスモーキーなブルーです。今回は可愛い可愛いではなく、少しマニッシュな可愛いとか、少しクールな可愛さをこのパネルでカバーできるかなと思っています。この2色のパネルで幅広いお客様に良いと思ってもらえるように選びました」と説明し、「今回はニュアンスカラーにシフトチェンジすることで、空間も少し柔らかく見えるようなカラーにこだわりました」と述べた。

◆デザイナー自らデザインした“チマイル”
さて、最後に『チマイル』について聞いておこう。「これまでのワゴンRスマイルは、“ワゴンRにスライドついた!待ってたよ”みたいなダンスのシーンなどのCMで売り出していました。しかし今回はそうではなく、本当にナチュラルで大人可愛いをやりたいのでCMだけでなく広告媒体、カタログも含めて見せ方にもデザイン部が入りました。CMはこういう雰囲気にしてほしい、こういうストーリー仕立てがいいとか、風景に馴染むような描写を入れてもらうとか、アイディアを出しました。このチイマルは、私の後輩がデザインしたんですけれど、スマイルに見立てたキャラクターを入れることでみんなの印象に残るし、スマイル自体にも愛着を持ってもらえそうという試みです」と話す。つまり、代理店主導ではなく実際にスズキのデザイナーが作ったところがポイントなのだ。これからどのような展開になるのか、期待したい。

少し“ギョロメ”がちだったワゴンRスマイルがまさに笑顔になって登場した。変更できる範囲が限られている中で、の苦労は察して余りあるが、違和感なくまとまりのあるデザインに仕上がっていた。