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軽EV、日産『サクラ』の維持費はいくら? 月々の電気代は上がったのか?

  • 《写真撮影 中尾真二》
  • 筆者作成
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  • 《写真撮影 中尾真二》
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  • 《写真撮影 中野英幸》

EV購入で気になる点として、電気代などのランニングコストや維持費を挙げることができる。そろそろEVかな、などと検討をしている人の参考のため、電気代を中心に導入前後のポイントを整理したい。

車両については筆者所有の日産『サクラ』での例、データとする。なるべく、他の車種でも参考になるような情報を付加していくが、数値についてはあくまで特定の車両、使い方での実測値である。そのつもりで読んでほしい。

◆導入前の検討事項:充電器の設置と電力契約
まず最初に考えたいのは、自宅に充電器を設置するかどうかの決定だ。戸建てであれば迷う必要はない。屋外にAC200Vのコンセントを設置して、自宅充電(AC普通充電)の運用を考えるべきだ。

集合住宅や立体駐車場、月ぎめ駐車場でも、可能ならばコンセントを設したい。自宅以外の場所に個人でコンセント(充電器)を設置することは難しいが、不可能というわけではない。個別交渉で設置した個人も存在する。管理組合、駐車場オーナー、大家などとの交渉を代行または支援してくれる業者もある。戸建て以外でも自宅充電環境を考えたい。

自宅や駐車場にAC充電器の設置が難しい場合、ディーラーや高速道路などのDC急速充電器だけでのEV運用となる。航続距離が300km以上あれば急速充電器だけでEVを所有することは可能ではある。大出力のDC急速充電器ネットワーク(スーパーチャージャー)を整備しているテスラオーナーには、実際に自宅充電なしで運用している人もいる。

一般的なACコンセントは100Vだが、200Vのコンセント設置は簡単だ。現在200Vのコンセントが配線されていない家屋でも、配電盤までAC200Vをとれるように配線がきていることが多い。ブレーカーの増設とコンセントの配線工事だけで設置が可能だ。EV充電に使えるAC200V対応のコンセントだけならホームセンターで千円から売っている。配線工事費含めても数万円から10万円代をみておけばよい(AC200V 3kWの場合)。

自宅の屋外AC200V 3kWコンセントはディーラーのキャンペーンで無料でつけることができた。自宅はエアコン用にAC200Vのコンセントをつけていたため、工事内容はブレーカー1個増設、屋外コンセントボックス1個設置、そして5mくらいの配線工事で済んだからだ。

筆者宅の電気の契約は従量電灯線Bという一般的な契約。容量は40A。サクラの場合40Aを契約していればブレーカーが落ちる心配はない。夜間電力プランを契約しているため充電はほとんど夜に行っているが、エアコン複数台稼働、電子レンジや炊飯器など消費電力の高い家電に注意していれば昼間の充電も可能だ。

◆実際のところ電気代はどうなった?
電気代についていろいろな計算方法とオーナーごとの基準があるため一概に高い、安いをいうことはできないが、サクラの運用において電気代が大幅に上がったという認識はない。この1年ちょっと、国内の電気料金が上がっているので感覚的にその影響のほうが大きい。

表は筆者宅の1年間の電気代の推移だ。サクラが納車されたのは2022年11月。電気代の請求額は1か月半ほど前の使用量に対してのものとなるため、EVによる充電が電気代に反映されているのあ2023年1月の請求からだ。それを加味しても、グラフの動きはエアコンをフル稼働させる真冬・真夏に上昇し春・秋に落ち着く。EV導入前の2022年9月(7/10から8/11)の電気代は412kWh、約1万5千円弱。導入後の2023年9月は487kWh、1万6000円弱。基本料金も上がっているので1000円の差があってもEV導入前後の違いとは実感しにくい。

サクラのバッテリー容量は20kWh(有効容量はおそらく18kWh程度だがここでは計算を単純にするため20kWhとする)。自宅の夜間電力プランの料金は約25円/kWh(端数四捨五入:以下同)なので、0%から満充電までの単純計算は500円だ。毎日フル充電するような運用ではないため、自宅充電が多い月でも電気代が1000円、2000円増えたかどうかだ。ここ1年は燃料費等調整額が数円から十数円(kWhあたり)の幅で変動している。なにもしなくても、これだけで月の電気代が3000~5000円程度変わってくる。

◆充電単価の考え方
ガソリン(および軽油)は、容量あたりの単価が明確であり利用した量と金額がはっきり把握できる。電気は、従量計算ではあるものの、単価は固定ではなく使った電力量に応じて段階的に変動する。夜間電力を利用してその時間のみ充電すれば、単価は明確にできるが使った量は他の電気製品が稼働しているかぎり区別できない。夜間割引の間に必ず充電が終わるとも限らない。

EV充電にかかった料金だけ計算するのは難しい(機器ごとの消費電力をトラッキングできるアプリやサービスを利用していないかぎり)。基本料金や調整金、再エネ賦課金などもある。充電単価を考えるときの目安として、かかった電気代を使用した電力量で割って単価をだしておくとよい。

筆者宅の場合、ここ1年の毎月の電気代を1万円から2万円程度。電力量は300~450kWh。1年分の平均単価を計算すると37円/kWhだった。

この金額を把握しておくと、有料の普通充電サービスを利用する場合の目安にもなる。たとえばエネチェンジの普通充電器は平均充電出力が4kWh未満の場合、単価は27.5円/kWhで計算される。筆者の場合、夜間電力料が25円、昼間の任意の時間の単価が約37円。つまり昼間自宅で充電するよりは近くのエネチェンジの普通充電器で充電したほうが安くなる計算だ。

■実際の稼働状況での比較
高くなったといわれる電気代だが、それでも2022年10月までの実績では、ガソリン代が毎月8000円以上かかっていた(実燃費が12km/リットルで年間走行距離が5~6000km)。このことを考えるとやはりEVのほうがランニングコストは低いといえる。サクラ導入前は、1回の満タンでだいたい3000円から4000円くらいかかっていた。月に1、2回の30リットル前後の給油を行っていた。現在ガソリン代も上がっているのでコンパクトカーでも1回の満タンで5000円くらいかかるだろう。

サクラは仕事(取材)で使うこともあるが、オンラインや都内での取材が多い月は、もっぱら買い物や近所の移動にしか使わない。サクラの通年の平均電費は8km/kWhくらいだ。5Km以内の近距離移動だと5Km/kWhくらいまで落ち込むが、それでも仕事や旅行での移動がなければ、充電は月に1回かせいぜい2回の自宅の普通充電でまかなえる(2回目の充電はおつりがくる)。

自宅充電はだいたい20%を切ったタイミング(警告がでる)を目安にしている。バッテリー容量の小さいサクラは7時間(AC200V 3kW)もあればだいたい100%に達する。深夜割引の始まる午前1時からスタートさせても朝の8時には充電が終わる。20~100%までの充電を2回、単価37円で計算しても1200円足らずだ(20kWh×1.6×37)。

◆充電カードプランは?
旅行など遠出をする場合どうしても経路充電が必要となる。経路充電は、移動途中の休憩時間などを利用することになるが、充電が主目的となるのでDC急速充電を前提とする必要がある。DC急速充電器は、充電サービス事業者の会員サービスを利用するか、都度課金処理を行って利用する。筆者は日産のZESP3を契約している。契約したときは「プレミアム10」というプランだったが2023年9月からは料金体系が変更となり、名称も「プレミアム100」となっている。

プレミアム100は、月額4400円で100分まで急速充電器が使える。未使用分は翌月まで繰越が可能だ。充電器はeMPの機材が使える。eMPは国内急速充電器のおよそ9割を占めている。eMPのネットワークが使える充電プランであれば、高速道路やディーラー、コンビニの充電器はほとんど使えると思ってよい。

ちなみに、サクラの場合でシミュレーションしてみる。4400円で100分ということは1分あたり44円かかることになる。サクラの場合、急速充電器で30分充電するとおよそ9~10kWh分の充電が可能だ。9kWhとして単純計算すると1分あたり0.3kWh。つまり急速充電の場合、1kWhの充電に約145円かかるということだ。

筆者がZESP3を契約したときは契約初年度の割引プランが使えた。そのため、いまのところ4400円の月額が2750円となっており、自宅充電の電気代を2000円としても月の充電にかかる費用は5000円ほどで、ガソリン代よりも安くなっている。だが、100分を過ぎた分には1分あたり44円の都度課金が発生する。旅行や仕事での利用が増えたときは超過分としてやはり2000円前後の課金が発生することがあった。

初年度の割引プランはそろそろなくなるので、月額の固定部分が4400円となる。これに自宅普通充電の電気代2000円、超過分が発生する月は、合計で8000円から9000円という概算になる。

◆節約のポイントは急速充電の利用スタイル
これが高いのか安いのかの判断難しい。ガソリン代の代わりが月額1万円以下なら、140円/リットルくらいでガソリンが購入できた時代とあまり変わらない。乗らない月は、以前の目安だった8000円より安かったかもしれない。

判断を難しくしている要因は他にもある。eMPネットワークの充電器は時間課金である。バッテリーへの充電は同じ時間でも気温や充電器の性能、車両の性能、それぞれの充電制御の方法によって大きく変わるからだ。また、現在国内の急速充電器の9割がeMPネットワークを利用している。各社の充電カードプランもeMPの料金体系がベースとなり、会社ごとの差をだしにくい。

各社プランでは、年会費や基本料金の額と月額固定に含まれる内容がひとつのポイントとなる。日産のZESPは急速充電100分、普通充電600分までは月額4400円で利用できる。100分、600分を超えてからは時間あたりの都度課金が発生する。三菱自動車は、入会金(1650円)が必要だが、月額固定は550円からのプランがある。こちらは月額が低い代わりにすべて都度課金となる。後者の三菱自動車のプランは、自宅普通充電がメインで外で充電する機会が少ないオーナーにとって料金が最適化される可能性がある。日産のZESP方式も繰越分があるので急速充電を使わない月がまったく無駄になるわけではない。

プランの優劣というより、自分の利用スタイルに合わせたプランを考えるとよい。長距離移動が多く、経路充電(DC急速充電)の利用頻度が高い場合は、固定額で使える充電時間や充電容量が多いプランを選ぶべきだ。近距離移動や買い物の足がメインなら充電カードを作らないという選択しもある。万が一、急速充電が必要になったら充電器ごとのゲスト利用とする。割高の料金だが、発生頻度が低いなら月額固定費用が発生するカードを持つ無駄がない。航続距離の長いEVやガソリン車を旅行や長距離移動用に持っていてセカンドカーとして運用するEVはこのほうが合理的かもしれない。

だが、実際にはEVユーザー側にあまり選択肢はない場合もある。というのは、各社の料金プランはそのメーカーの車両を前提としたものが多いからだ。ZESPも以前はだれでも申し込むことができテスラオーナーもZESP2(月額固定で急速充電使い放題だった)カードを持つことができた。現在、メーカーやディーラーが用意するプランは、自社車両のオーナーに限定しているところが多い。

充電サービス事業者にとっては、単価の安い充電でビジネスを成立させるのは難しいので、現状の料金体系と相場が不条理とは言い切れない。しかし、ユーザー側にもう少し自由度のある選択肢がほしいところだ。