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「TOKYOの課題解決とNIPPONの技術アピール」東京都が自動運転にこだわる理由

  • 《撮影 高木啓》

東京都は2月15日、識者による講演やパネルディスカッションで構成された「自動運転シンポジウム」を東京都庁都民ホール(東京都新宿区)で開催する。これまで同様のシンポジウムは研究者など向けに実施されることが多かったが、今回は対象を一般とし、自動運転への理解を広く求めていく。

テーマとしているのは「自動運転が実現すると私たちの暮らしはどう変わるのか~自動運転がもたらす未来~」。第1部は各分野の専門家等による5つの講演会で構成され、第2部は二條実穂氏(リオデジャネイロパラリンピック車イステニス日本代表)がゲスト参加するパネルディスカッションが開催される。

第1部は清水和夫氏(国際自動車ジャーナリスト)が「自動運転の2019年最前線」と題する講演からスタート。続いて田尻貴裕(東京都政策企画局戦略事業担当部長)が登壇して、自動運転に対する東京都の取り組みを説明する。その後、自動運転を推進する企業や団体からは計3団体の代表が講演する。

田尻氏はこのたびインタビューに応え、同シンポジウムの開催に当たって取材に応じ、自動運転に対する東京都の基本的な考え方を話してくれた。

それによると目的は大きく2つあり、一つは「自動運転システムは成長戦略として大きな意義を持つと共に、都市が抱える様々な社会的課題を解決する有効策として国・各自治体が積極的に取り組む」ということ。もう一つは「東京2020オリンピック・パラリンピック」を見据え、自動運転を日本の最先端技術として国内外にアピールする」ことがあるという。

東京都では2018年度の取り組みとして、すでに自動運転レベル4相当の実用化を加速すべく、事業者が実証しやすい環境を整えるべく様々な支援事業を行ってきている。2017年9月に「自動走行ワンストップセンター」を設置しており、実証実験開催に至るまでの相談などを一括で受け付け。スピーディな関係機関への取り次ぎを実施してきた。

その成果は確実に上がっており、昨年末時点で相談件数は50団体、延べ394回の相談があり、実際に17件が実証実験の開催となったという。その中には日本初の遠隔型自動運転システムの実証実験も含まれる。今回のシンポジウムは、こうした事業を踏まえ、自動運転システムの社会実装を加速化するための重要イベントとして位置付けているのだ。

自動運転サービスの早期実現を目指すプレーヤーの登壇にも注目したい。

タクシー業界からは富田和孝氏(日の丸交通株式会社代表取締役社長)が「自動運転タクシーがタクシードライバーを守る」と題し、自動運転によってクシードライバーにもたらされるメリットを訴える。タクシー業界には自動運転によって雇用が失われるのではないかと不安を訴える声が聞かれるが、そういった声にどう答えてくれるかも大きな関心事項になるだろう。

佐治友基氏(SBドライブ株式会社代表取締役社長兼CEO)は、これまで全国各地で小型バスによる自動運転事業を経験した実績から「UPDATE MOBILITYに向けたSBドライブの挑戦」を話す。同社はつい先日も羽田空港の制限区域内や、JR東日本の大船渡線BRT専用道を用いた実証実験を行ったばかり。その経験に基づく様々な課題や現状などが語られるはずだ。

日本自動車工業会は2020年7月に、80台という大規模な自動運転車のデモを予定している。その概要について「東京臨海部自動運転実証について」と題して沼田泰氏が説明する。この地域ではこれまでにも自動運転関連のデモを繰り返し実施されてきたが、これほど多くの車両を集めた実証実験は世界的にも例がない。マイカーが自動運転にどうアップデートされていくか興味津々だ。

東京と田尻氏は「自動運転は良くも悪くも一人歩きしている部分が多く、正しい理解がなかなか深まっていない。自動運転での事故が伝えられれば不安を抱く人も少なからずいる。今回のシンポジウムを通してそうした状況を覆したい」と業界関係者ではない一般市民への参加を呼びかける。