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【日産 エクストレイル 新型】発電用VCターボエンジン…なぜターボ? その答え

  • 《写真撮影 中野英幸》
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  • 《写真撮影 中野英幸》
  • 《写真撮影 中野英幸》
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  • 《写真撮影 中野英幸》
  • 《写真撮影 中野英幸》
  • 《写真撮影 中野英幸》
  • 《写真提供 日産自動車》
  • 《写真提供 日産自動車》
  • 《写真提供 日産自動車》
  • 《写真提供 日産自動車》
  • 《写真提供 日産自動車》
  • 《写真提供 日産自動車》
  • 《写真撮影 高木啓》

日産自動車が7月20日に公開した中型SUV『エクストレイル』。全グレード、内燃機関を発電のみに用いるシリーズハイブリッド「e-POWER」としているが、発電用エンジンとしてセットアップされるのが日本では初お目見えとなる日産の新世代パワーユニット「VCターボ」である。

VCとはValuable(可変) Compression(圧縮) の略。通常のレシプロエンジンの場合、機械的な圧縮比は固定されており、やるとすればバルブ開閉時期を調節することで見かけの圧縮比を変えるという方法を取るしかなかった。VCターボエンジンはクランクシャフトとコネクティングロッドの間にリンケージを設け、シリンダーの内部におけるストロークの範囲を上下させるという方法で圧縮比を変えることを可能にした。ストロークの範囲を上げれば残りの燃焼室の容積が小さくなり、そのぶん圧縮比が上がるという寸法である。

圧縮比は無段階変動で、範囲は8:1~14:1。制御の詳細は公表されていないが、14:1はガソリンエンジンの限界値に近い高圧縮で、バルブタイミングでミラーサイクル(吸気時間を制限して実効圧縮比より膨張比を大きく取ることでポンピングロスを低減しながら爆圧の動力変換効率を高める)運転を行うものとみられる。圧縮比12:1以下ではガソリン1:空気14.6の理論空燃比運転、10:1以下ではターボ過給を正圧に持って行く過給運転を行うのだろう。平たく言えば巡航~緩加速での高い熱効率と排気量あたりのパワーの大きさを両立させるエンジンということだ。

この機構を採用したVCターボエンジン、実はすでに4年以上の歴史を踏んでいる。初出は2018年にデビューした高級車サブブランド、インフィニティのSUV『Q50』に搭載された「KR20DDET」。排気量2リットルの直列4気筒ターボでポート噴射と直噴の2系統の燃料噴射装置を持つターボエンジンで最高出力は200kW(272ps)。その後、2021年にエクストレイルの北米版『ローグ』の2.5リットル自然吸気を置き換える形で1気筒を落とした1.5リットル3気筒直噴ターボの「KR15DDT」がデビュー。最高出力は150kW(204ps).

新型エクストレイルのe-POWER用エンジンは、後者の1.5リットルVCターボを熱効率重視型にデチューンしたもの。最高出力は106kW(144ps)、最大トルクは250Nm(25.5kgm)。だが、発電専用であれば熱効率を重視して高圧縮、ミラーサイクルに固定したエンジンを組み合わせるという手もあったはず。プレス向けの新商品発表会でも記者から当然、なぜターボエンジンを選択したのかという質問が飛び出した。

それに対する回答は静粛性向上のためというものだった。バッテリーと1.5リットルミラーサイクル運転の合成出力を超える加速をする時に低圧縮・高過給圧の運転を行うことでエンジン回転数を上げず、静粛性を確保するというのである。日産は現行『ノート』を全車シリーズハイブリッド化したが、燃費値では決してトップランナーではないにもかかわらず、ライバルより大容量のバッテリーを搭載することによるEV走行感の高さが好感され、ハイブリッドモデルでカウントすれば販売トップを取っている。その成功体験から燃費値の限界を目指すより総合的な商品力を高めることを優先させたものと推察される。

果たしてVCターボとe-POWERの組み合わせがどのようなパフォーマンスを見せるのか。テストドライブが楽しみになるところだ。