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メルセデスベンツ Tクラスは「EQTコンセプト」の市販版なのか? ルノーカングーとの関係性は

  • 《写真撮影 南陽一浩》
  • 《photo by Mercedes-Benz》
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  • 《photo by Renault》
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いよいよ欧州で本格的に市販車としてデビューしたメルセデスベンツの新型ミニバン『Tクラス』。先代モデルより日本でも大人気の新型ルノー『カングー』と多くのコンポーネントを共有しつつ、北フランスのモブージュ工場で今世代も生産されている。

兄弟モデルとしてメルセデスベンツは、商用車バージョンには「シタン」の名を残しつつ、こちらは昨秋より欧州の一部のマーケットで市販されている。いわゆるリュドスパス、昔風にいえばRV(レクリエーショナル・ヴィークル)的な乗用車バージョンに「Tクラス」の名を用いることを決めたようだ。そしておそらく、来年以降に市販モデルとして市場投入が囁かれるBEVバージョンには『EQT』の名が与えられるだろう。ちなみに商用車バージョンのBEV版は「eシタン」がウワサされている。

モブージュ工場で生産されるカングー・ベースのモデルがメルセデスベンツのラインナップに加わるというストーリーは、、ルノー日産とダイムラーの提携が可能にした。車台と生産拠点の共有そして活用ということで、同工場では日産も、先代モデルでは『NV250』、ニュー・カングーがベースの最新世代では『タウンスター』という。つまり商用車の3兄弟は、ルノー・カングーのリバッジ・モデルとしばしば誤解されがちだ。ところが生産は共有しても、商用車バージョンと乗用車バージョンを分離するマーケティング・オペレーションは各メーカーの差配によるところで、そこに単なるマスクやバッジの違いによるのれん代以上に、差異が表れているのだ。

Tクラスは「EQTコンセプト」の市販版なのか?
メルセデスベンツのケースを考える際に、大きなヒントとなるのは、発表されたばかりのTクラスと、昨年9月に初のミュンヘン開催となったIAAで発表された『EQTコンセプト』だ。

EQTコンセプトのぬめっとしたフラッシュサーフェス化の行き届いた、スリークで近未来的なボディは、これまで見たことのないリュドスパスのデザイン・スタディとして好評だった。シンプルなプレス成型による武骨な頑丈さ、簡素なノンシャランさを旨とするカングーのデザインとは哲学としてもポリシーとしても対極といえる雰囲気で、いかにも両雄並び立たずに思える。

ちなみにEQTコンセプトの内装にはホワイトのナッパレザー・トリムが奢られ、ダッシュボード周りも新型カングーのそれとは甚だ印象が異なる。だがよくよくみれば、ダッシュボードの下半分やシフトコンソールといった要素はほぼ同じで、エアコンのベンチレーターは最新のメルセデスの定石通りで丸型である一方、その位置やタッチスクリーンとの配置までもがカングーと同じであることが分かる。同じアーキテクチャだがモジュラー要素で、ビジュアル面での個性を出すということだ。

だがシタンやTクラスで採用されている通り、メルセデスは「ハイ!メルセデス」から始まるボイスコントロール機能によるMBUXシステムという独自インターフェイスは当然、充実させている。

新型カングーとの共通点も
もうひとつEQTコンセプトのハイライトは、リアクォーターウィンドウ形状からうかがい知れる通り、3列シートで7人乗車仕様のロングホイールベース版であることだ。これは床下が長い方がバッテリー容量、つまり積載荷重に対して航続距離も伸ばせるというBEVならではのメリットによるものだろう。あとTクラスとの違いして、サイドウインドウ枠にはクロームが施されている。

ただしスライドドアの開口部の形状やドアキャッチ、Bピラーそのものの形は、新型カングーそのものだ。これはユーロNCAPの側方衝突のスコアを向上させ、カングーならびに派生車種自体のボディの安全性を確保するという、そもそものモデルチェンジの方向性に即しているし、変更するメリットのない部分だからだ。

またリア荷室のオーバーハング部には、床下収納のようにメルセデス謹製の電動スケートボードが収められ、トニー・ホークのサインが施されていた。ショーン・ホワイトよりうんと以前、マーク・ゴンザレスやクリスチャン・ホソイらと並んで長年、スケートボード界のカリスマだった人物だ。3列目シート背面にはヘルメットを固定できるストラップも備わっていた。

いずれEQTコンセプトと、半年後のICE市販バージョンであるTクラスの決定的な差異は、凹凸を極力排したかのようなフロントマスクと、リアコンビランプを真一文字で繋ぐLEDのリアガーニッシュだ。果たしてこれらのディティールを、メルセデスはTクラスと造り分けてくるのだろうか?

「EQT」が実現しようとしているデザイン
Tクラスの外観については、新型ルノー・カングーとシルエットや外寸サイズこそほとんど横並びだが、ボディ・パネルはけっこう異なる。新型カングーに試乗した経験でいえば、筆者の目にはTクラスのリアゲートはカングーと同一に見えるが、ガーニッシュをクロームでなくボディカラー同色とすることでツルンとした印象に仕立て上げている。またリアコンビランプも、発光部のパターン以外でも形状ごと異なっており、それを可能とするためリアバンパーの形状ごと異なる。

さらにTクラスのフロント側に目を移してみれば、それが単なるマスクチェンジに終わっていないことが分かる。ボンネットの開閉ラインがカングーではヘッドライトと接していたところが、Tクラスでは切り離され、ボンネットとフェンダーがまったく別仕立てであることが分かる。そもそも『Bクラス』に似た顔つきを、その重心ごと低く見せる工夫だろう。それは無制限区間は減ったはいえ、アウトバーンという長距離かつ高速域で少しでもドラッグを下げたいメルセデス側のロジックとも思える。都市圏での配達や運搬が主な用途で、都市間移動が主たる用途ではない、フランスの事情との違いでもある。

Tクラスはいわば、メルセデスとルノーが生産拠点を共有化している現状が許す範囲内で、造り分けと差異化をいかに推し進めたかを示す、第1段階に過ぎない。裏を返せば、さらなる切り札、さらなるコストの許される方策が、EQTの市販版で実現されるだろうということだ。だからEQTコンセプトのデザイン・スタディめいたボディラインは、100%ではないにしろ、かなりの割合で実現されると予想できる。

プレス成型部門を強化したという事実が意味するのは
ヒントは、北仏モブージュ工場が新型カングーの世代をベースに3メーカーの各バージョンの生産を請けるにあたって、プレス成型部門を強化したという事実にある。その規模はルノー日産グループ内で最大規模だそうで、大きなボディパネルを成型するために630基もの工作機械ロボットを新たに導入したというのだ。

無論、より種類の増えた装着パーツを取り扱うために、動線や作業員のエルゴノミーも改善され、塗装ブースも刷新することで仕上がりクオリティを改善しているという。それらは当然、カングーとシタン/Tクラス、タウンスターの3車種を同時に同じラインで組み立てるためで、そこには当然、バッテリーの組み込みプロセスも含まれているのだ。

要はEQTは、BEVとしてもっとも付加価値の高いバージョンであることが求められ、その後に外観上でICEと差の大きくない仕様が登場する方がロジックということだ。パワートレインは別にしても、カングー以上にTクラスにかかる期待は、メルセデスのブランド力だけでなく、キャンパー仕様の名門ウェストファリア社などが手がけるオプションの充実度だろう。数々の荷室モジュールだけでないボディワークというか、『Vクラス』で見られた「マルコポーロ」仕様の再来ということだが、オプション料金の多大さを考えても、購買層の限られるBEV版がおそらくは一歩リードといったところだろう。