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【マツダ CX-5 改良新型】脱・都会派SUV!?「フィールドジャーニー」はいかにして生まれたのか[開発者インタビュー]

  • 《写真撮影 雪岡直樹》
  • 《写真撮影 中野英幸》
  • 《写真撮影 雪岡直樹》
  • 《写真撮影 雪岡直樹》
  • 《写真撮影 雪岡直樹》
  • 《写真撮影 雪岡直樹》
  • 《写真撮影 雪岡直樹》
  • 《写真撮影 雪岡直樹》
  • 《写真撮影 雪岡直樹》
  • 《写真撮影 雪岡直樹》
  • 《写真撮影 雪岡直樹》
  • 《写真撮影 雪岡直樹》
  • 《写真撮影 雪岡直樹》
  • 《写真撮影 雪岡直樹》
  • 《写真撮影 中野英幸》
  • 《写真撮影 中野英幸》
  • 《写真撮影 宮崎壮人》
  • 《写真撮影 中野英幸》
  • 《写真撮影 中野英幸》
  • 《写真撮影 中野英幸》
  • 《写真撮影 中野英幸》
  • 《写真撮影 中野英幸》
  • 《写真撮影 中野英幸》
  • 《写真撮影 中野英幸》

日本市場のみならず、海外市場でも大ヒット商品となっているマツダ『CX-5』。かつては、『ロードスター』やロータリーエンジンといった印象が強かったマツダが、現在のようなSUVをフルラインアップするメーカーとして、そしてディーゼルエンジンを強みとするメーカーとして会社を再構築するまでに至ったのは、このCX-5がきっかけであった。

そして商品改良として、アップデートし続けてきた現行CX-5が、2021年12月に大幅なテコ入れをおこなった。今回の商品改良では外観のイメージチェンジをおこなっただけでなく、新規に性格の異なる3つのグレードを投入。その中でも目玉となっているのがアウトドア色を強く打ち出した「フィールドジャーニー」だ。これまで都会派SUVのイメージが強かったCX-5だが、大きく路線変更したようにも見える。

なぜフィールドジャーニーが投入されたのか。今回の商品改良に向けてのねらい、開発秘話を商品本部主査の松岡英樹氏はじめ商品企画チームメンバーに訊いた。

【インタビュー参加メンバー】
マツダ商品本部 主査 松岡英樹氏
国内営業本部ブランド推進部 小松麻子氏
国内営業本部ブランド推進部 アクセサリー担当 三浦一弘氏

「オフロードテイスト」を再発見しようと試みた
—-:初代CX-5が登場からはや10年、CX-5は、国内マツダで最も売れる中型車となりましたが、その要因は何であると考えていますか。

松岡:おかげさまで、CX-5は長く売れて続けています。今年は、北米市場で歴代過去最高の売り上げを達成しています。その理由については様々な要因があると思いますが、やはり、適切なサイズと価格で提供したことが、グローバルで成功してきた理由だと考えています。北米では「MAZDA」というメーカーをよく知らなくても、CX-5ならば知っている。そうしたCX-5ファンが育ってきたというのは、私としても大変うれしいことです。

ディーゼルエンジンのイメージを変えていったのも、CX-5が起点でした。ディーゼル乗りは、再びディーゼル車へ乗り換える、そういった流れをつくることができています。マツダがよく使う「引き算の美学」というキーワードもCX-5のころから始めたものです。

—-:そんな中で、今回の大幅改良では「フィールドジャーニー」という新たなCX-5の提案をしています。そのねらいは?

松岡:初代CX-5は、「SUVなんだけど乗用車みたいに街中でも走れる」というところをウリにしました。車高も210mmはあるので、雪道でも安全に走れる。そして、緊急脱出用ではない4WDもきちんと用意し、何処でも走ることができるクルマに仕上げました。

ところが、2代目へとフルモデルチェンジした際に、「都会派SUV」として、土のにおいがしないSUVに大きく振ったことで、初代が持っていたどこでも走れるというイメージが薄くなりました。オフロードも走れるSUVではあったのですが、顧客のイメージはついてきてくれませんでした。そこで、本来のCX-5が持っていた「オフロードテイスト」を再発見しようと試みたのが、「フィールドジャーニー」企画のはじまりでした。

ゴリゴリのアーバンアウトドアではなく「身近なアウトドア」を目指した
—-:フィールドジャーニーを提案したのは松岡さんなのですか?

松岡:私ではなく、こうしたプランを企画するチームからの提案です。今回のフィールドジャーニーのアイディアが出たタイミングは、このコロナ禍が始まった2020年ですが、「初代CX-5のユーザーが、オフロード感のない2代目CX-5へ買い替えしてくれない」という、課題認識があったので早かったです。

デザインを決定する前から、「フィールドジャーニー」 「スポーツアピアランス」そして「エクスクルーシブ」という、3つの方向性で行きたいと企画が決まりました。フィールドジャーニーに合わせた純正アクセサリーも含め、早くから動けました。

とはいえ、やみくもに動いたわけではなくて、毎年のように特別車を出して、市場をリサーチしてきた蓄積があったので、大きく外すことはないと、考えていました。

—-:純正アクセサリーの種類も、これまでの方向性とは違いますね。

三浦:今回は、マツダ純正のカスタムパーツで決めたカスタムカーも用意してあります。フィールドジャーニーのような「オフロードテイスト」のCX-5を待っていたお客様に向け、ゴリゴリのアーバンアウトドアではなくて、身近なアウトドアを目指しました。

私もキャンプが好きなのですが、キャンプシーンでは、自分の世界観を魅せつけたいと考えるキャンパーは多く、ただ、そういう人こそ、他人とは被りたくない、という気持ちが強いもので、キャンプシーンに合うカスタマイズパーツは、豊富に欲しいと考えていました。私も、先日、新しいテントを買ったのですが、アイテムは何個も欲しくなるものです。

—-:すごくわかります。

三浦:今回、カスタムカーに施した、バンパーのラインX塗装(強い塗膜でボディを守る特殊塗膜)などは、キャンプ通が唸るような素材、手触りに仕上げています。自分のクルマが自分好みになったら嬉しいでしょう。ぜひ仲間内に、満足感を語って欲しいと思います。

またマツダオリジナルアクセサリとして、フィールドジャーニーに合わせたグッズを作成しています。手を取ってもらいやすいボトルやシャツなどのアイテムに注力していますが、ブランドコラボではなくて、マツダが独自で選んだものです。上手く世界観を出せていると自負しています。

初代CX-5ユーザーの受け皿になっている
—-:12月上旬より発売となりましたが、販売状況はいかがですか?

小松:フィールドジャーニーは、初代CX-5からの乗り換えが比較的多いです。全体販売の10%がフィールドジャーニーで、そのうち初代CX-5からの乗り換えが40%にもなります。他は、若い人や他メーカーからの乗り換えが「ブラックトーンエディション」(30%)を選び、少し年齢が上がるとスポーツアピアランス(24%)、年配になるとエクスクルーシブ(20%)、といった流れで、上手く分かれています。

松岡:ブラックトーンエディションとスポーツアピアランスは、20万円程度の差ですので、買い換えてアップグレードされる方もいます。やはり、マツダを選ぶコアなお客様は、都市型SUVを目的とする方が多いです。CX-5からCX-5へ乗り換える方も多いですね。1ランクずつアップグレードしたモデルを購入されています。

—-:将来的にCX-5は、オフロード、オンロード、どちらも目指すのでしょうか?

松岡:アメリカ市場のように、オフロード走行に合わせた『CX-50』(ワイドボディ)と、都会派SUVのCX-5とでつくり分けたいのですが、国内では都会派SUVであるCX-5の方が需要が多く、日本でもオフロードテイストのSUVがどれほどの需要があって、受け入れてくれるのか、しっかりと見極めて、新型車を投入していきたいですね。Mi-DRIVEにも「オフロードモード」を新しくつくりましたが、来年以降、マツダは新しいFR系SUVを出していくので、そうした将来的な商品戦略を加味したスペックとしています。

松岡氏「優秀な後輩たちへ道を開けてあげたい」
松岡氏は、2021年12月付でマツダを退社されたとのこと。20年以上にわたってさまざまなマツダ車の主査を歴任した松岡氏は、「優秀な後輩たちへ道を開けてあげたい」との思いで、マツダから一旦、離れる決意をされたようだ。

現在のマツダのいい流れを構築した第一人者者として、今後は、外部からマツダの動きを、逐次チェックする役に徹するのだろう(ときには叱咤激励もあるはず)。松岡氏が去った後のマツダがどういった企画を打ち出してくるのか、今後もマツダからは目を離せない。