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ブガッティのハイパーカー『シロン』、限定500台の生産が最終段階

  • 《photo by Bugatti》
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ブガッティは10月25日、ハイパーカーの『シロン』(Bugatti Chiron)の生産が最終段階に入った、と発表した。

◆『ヴェイロン』の後継モデルとして2016年に登場
シロンは『ヴェイロン』の後継モデルとして2016年春、ジュネーブモーターショー2016で発表された。シロンは、ハイパースポーツカー市場の新しいベンチマークとしての地位をすぐに確立したという。ブガッティの112年の歴史において、最速かつ最強の市販車として、シロンは自動車の設計、技術、エンジニアリング、生産に関する限界を押し上げた、と自負する。

2016年の発表から1年半で、限定500台のシロンのうち、300台が販売された。この販売の勢いは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染拡大などの世界的な課題にもかかわらず、2021年も続いている。米国はシロンの最大市場だ。2021年第3四半期(7~9月)には、シロンの販売台数は前年同期比の2倍、一部の地域では3倍に増えたという。

2021年第3四半期、シロンに対する需要が世界的に急増したため、限定500台の生産は最終段階に入っている。残りの生産枠は、40台を下回るという。現在、受注可能なシロンは、「ピュルスポール」と「スーパースポーツ」の2モデルだ。最後のおよそ40台は、すでにハンドビルドの工程にあるか、受注され次第、生産される予定だ。

◆専用の空力デザインとワインディング向けの足回りを持つピュルスポール

シロン・ピュルスポールでは、エアロダイナミクス性能を高める専用デザインを採用する。フロントには、ワイド化された吸気口と、専用グリルを装着した。フロントリップスポイラーは、前方に突き出た専用デザインで、最大のダウンフォースを生み出すという。

リアには、車両の幅方向に1900mmの固定式大型ウイングを装着し、ダウンフォースを高めた。専用のディフューザーも装備される。角度の付いたウイングマウントは、リアバンパーとともに、大きなX字を形成する。3Dプリントされたチタン製の軽量エグゾーストパイプが採用された。ベース車両の格納式リアスポイラーの油圧コンポーネントを廃止することにより、10kgの軽量化を果たしている。

ブガッティは、とくにワインディングロードで本領を発揮するシャシーとサスペンションを、シロン・ピュアスポーツ向けに開発している。快適性を犠牲にすることなく、フロントに65%硬いスプリング、リアに33%硬いスプリングを採用した。アダプティブダンピングのコントロール、キャンバー値の変更(マイナス2.5度)により、さらにダイナミックなハンドリングを追求している。

フロントとリアのカーボンファイバー製スタビライザーは、さらにロールを最小限に抑える。ばね下重量は、19kg軽量化された。この19kgは、16kgにおよぶ車輪の軽量化に加えて、チタン製ブレーキパッドのベースパネルによる2kgの軽量化、ブレーキディスクの1kgの軽量化を合計したものだ。また、シャシー、サスペンション、ボディの接合部分の剛性を、フロントで130%、リアで77%強化することにより、路面への接地性を向上させている。

タイヤは、ミシュランが新開発した高性能タイヤ「スポーツカップ 2 R」だ。フロントが285/30R20、リアが355/25R21サイズを履く。新素材のコンパウンドのおかげで、高いコーナリングスピードでも優れたグリップ力を発揮するという。

◆1500hpを発生する8.0リットルW16気筒+4ターボ
ミッドシップには、2ステージターボ化された8.0リットルW16気筒+4ターボエンジンを搭載する。最大出力は1500hpと変わらないが、発生回転数は6700rpmから6900rpmへ、200rpm引き上げられた。最大トルクは、163kgm/2000~6000rpmと変わらない。

7速デュアルクラッチの「DSG」は、全体のギア比を15%クロスレシオ化した。駆動方式は4WDだ。ブガッティによると、60~120km/hの中間加速は、ベース車両に対して3秒短縮しているという。最高速は350km/hでリミッターが作動する。

4種類のドライブモードに加えて、「スポーツ+」モードが採用された。通常のスポーツモードよりも、サーキット寄りの設定となっており、高速コーナーでもドリフトできる理想的なラインを走行できるという。

◆スーパースポーツはリアを250mm延長した「ロングテール」デザイン
シロン・スーパースポーツでは、空力特性を最適化した新しい車両デザインを開発した。フロントのリップスポイラーからリアのディフューザーまで、そのすべてが最高速のために新設計されているという。420km/hを超える速度域では、車両は最小限の抗力で充分なダウンフォースを得る必要がある。シロン・スーパースポーツでは、最高速領域でのニュートラルなセットアップと、可能な限り流線型のフォルムにすることを目標に掲げた。

シロン・スーパースポーツでは、リアのオーバーハングがおよそ250mm延長された。この「ロングテール」デザインにより、空気の層流がより長く車体の上を通ることを可能にしているという。ディフューザーも新デザインとなり、風の抵抗が減少。これらの変更により、リアのプロポーションは従来よりもワイド&ローになった。テールパイプの配置も変更された。ディフューザーの効果を高め、より多くのスペースを確保するために、中央の排気システムを横にずらし、パイプを垂直に配置した。エキゾーストシステムも、より深く豊かなサウンドを発生するという。

フロントのデザインも変更された。エアインテークの横にサイドエアカーテンを追加することなどにより、フロントからホイールアーチへのエアフローが改善されているという。各フェンダーには9個のエアダクトが設けられた。これは、かつての『EB110スーパースポーツ』を連想させるだけでなく、前輪付近の空気の流れを最適化し、フロントアクスルにより多くのダウンフォースを発生させる。フロントホイールアーチの後ろにも、エアダクトが追加されている。5本スポークデザインの新しいアルミホイールは、スーパースポーツ専用デザインだ。インテリアは、レザーや磨かれたアルミ素材に、カーボンファイバー素材を組み合わせている。

◆1600psに強化されたW16エンジン
シロン・スーパースポーツでは、8.0リットルW16+4ターボエンジンをチューニングし、その最大出力を100ps引き上げて、1600psとした。ターボチャージャー、オイルポンプ、バルブトレイン付きのピストン、トランスミッション、クラッチに変更が加えられた。これにより、エンジンの許容回転数は300rpm引き上げられ、最大7100rpm に。163kgmの最大トルクは、従来の6000rpmではなく、2000~7000 rpmの幅広い領域で発生し続ける特性とした。同時に、車両重量は23kg軽量化されている。

より効率的なコンプレッサーホイールを備えた大型ターボチャージャーの効果で、7速デュアルクラッチトランスミッションは、フルスロットル状態で6速から7速に403km/hでシフトアップする。0~200km/h加速は5.8秒、0~300km/h加速は12.1秒。0~400km/hは、通常のシロンよりも7%速く加速する。

また、ブースト圧は最大近くに維持される。シフトアップ時には、ブースト圧は0.3 秒間低下するだけで、その後2.8バールのフルブースト圧に戻る。6000rpmを超えても加速は低下せず、最大7100rpmまで強力な加速が維持される、としている。