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「自動運転の可能性を、すべての工場へ」ヤマハ発動機やティアフォーなど、工場向け自動搬送サービス「eve auto」開発

  • 《写真提供 ヤマハ発動機》
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ヤマハ発動機、ティアフォー、eve autonomy(イヴオートノミー)の3社は、新型自動運転EVを共同で開発。この新型自動運転EVを使った自動搬送サービス「eve auto」の先行受注を開始し、2022年夏からの本格投入する。

9月1日には、ヤマハ発動機 飯田実 研究開発統括部長、eve autonomy 米光正典 代表取締役、ティアフォー 安藤俊秀 技術本部執行役員がオンラインでその概要を説明した。

eve auto は、屋内外の環境を含む、閉鎖空間での搬送の自動化ニーズに対応できるように開発された自動搬送サービス。これまでヤマハ発動機の浜北工場をはじめとする複数の工場で先行運用し、そこで得たノウハウをフィードバックしながら、走破性、けん引・積載能力を必要とするユーザの自動搬送ニーズに応えるべく開発してきたシステムだ。

今回は、自動搬送サービス eve auto 展開にあわせ、車両を新規開発し、自動搬送サービス向けの量産を見据えた小型EVとして仕上げた。同サービスでは、自動化を阻む初期導入のハードル「高い初期費用」と「長期間におよぶ導入工事」をクリアすべく、サブスクリプション型契約を採用し、運行管理システムやアフターサポートもワンストップで提供していく。

その頭脳部分を担うのは、ティアフォーが開発主導するオープンソース自動運転OS 「Autoware」。そこにヤマハ発動機が持つ信頼性の高い車体開発技術をかけ合わせ、eve auto が誕生。現場が求める段差・傾斜にも対応できる走破性と、天候や周辺物などの変化に対するロバスト性を維持しながら1500kgまでのけん引能力、300kgまでの積載能力を兼ね備える。

◆自動搬送ソリューションの先頭へ

このロバスト性とは、さまざまな外部の環境変化などに対応できる性質のこと。このロバスト性が、人と自動運転システムが共存するうえで重要ともいわれている。

ヤマハ発動機 飯田実 研究開発統括部長は、「この eve auto がめざすのは、短距離輸送の省力化・自律化。ヤマハグループで培った車両技術・制御技術と、実績に裏打ちされた信頼性に、ベンチャーならではのティアフォーのスピードと最先端のテクノロジーを融合することで、これまでにないサービスを提供していく」という。

また、ティアフォー 安藤俊秀 技術本部執行役員は、「ヤマハ発動機との共創により『自動運転の可能性を、すべての工場へ』との思いを込めた自動搬送ソリューションを提供していく。このサービスは、自動運転の民主化による社会的価値の創造に向けた大きな一歩」と伝えた。

◆背景に人手不足や多品種少量生産トレンド

こうした自動運転EVによる自動搬送サービスの普及が急がれるのは、慢性的な人手不足や多品種少量生産トレンドなどが背景にある。

「作業員配置を前提とした従来型の設備・運用では、効率的な生産体制の維持が難しい現在、自動搬送サービスを導入することで、工場内での効率的なオペレーションの推進や、人為的な事故件数の減少が期待できる」

「とくに生産ラインの変化が大きい製造現場・工場や、広い敷地内での搬送ニーズがあるプラント、建物間の坂路を含めた搬送自動化が求められる物流拠点など、さまざまな場所にこの自動搬送サービス eve auto が入り込む可能性がある」

3社はこのほか、こうした商用サービス以外の利用イメージに、自動運転技術の研究開発プラットフォームなども想定しているという。