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ジャガー2021年モデルのパワートレインはEV、PHEV、MHEV…抜けているのは?

  • 《写真提供 ジャガー・ランドローバー・ジャパン》
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◆ジャガーランドローバーのピュアEV化戦略「REIMAGINE」

ご存じのとおりジャガーは、2025年のEVブランド化を宣言している。プロダクトポートフォリオは着実に電動化に進めており、SUVの「ランドローバー」ブランドと合わせて、ジャガーランドローバーのピュアEV化戦略「REIMAGINE」に組み込まれた。

ジャガー『E-PACE PHEV』の発表では、日本向け特別仕様が20台用意された。購入者には家庭用充電コネクター(ホームチャージャー)の設置費用負担キャンペーン、EVスペシャリストを100名まで増強する新しいサポート体制、4年間で4車種まで乗り換え自由な月額プランなども発表されている。

ピュアEV『I-PACE』は2018年の日本市場投入後、一般的な新車開発のサイクルと言われる4年周期にあたる22年に、大幅なモデルチェンジもアナウンスされており、ジャガーの開発メインストリームはEVシフトしたといっていいだろう。

ジャガーの日本市場向け2021年モデルのラインナップを振り返ってみると、『E-PACE PHEV LAUNCH EDITION』を始め、『XE』、『XF』、『F-PACE』を挙げることができる。これらのパワートレインは「INGENIUMエンジン」をベースとしたMHEVもしくはPHEVとなる。ピュアEVは、モデル数としてはまだ少数派だ。しかし2025年までの電動化戦略に含まれないMHEVは、今回のモデルがおそらく最後になるはずだ。

日本において次世代パワートレインの話になると、HVとFCVは欠かせない存在だ。HVは、日本の自動車産業が世界に対して競争力を持つ技術の代表格だ。FCV(水素エネルギー)は再生可能エネルギーなどカーボンニュートラルなエネルギー源に多くの課題を抱える日本にとって、EV時代以降の切り札となる可能性がある技術。

◆HVからは撤退

ジャガーは、このうちFCVについては可能性を認めており、REIMAGINE戦略でも、EVを補完する技術として位置付けられている。英国でも2021年中にはFCVの公道実験を行うプランも発表されている。しかし、HV(ハイブリッド)については「ハ」の字もでてこない。

この傾向はジャガーに限ったものではなく、欧米自動車メーカー全体に見られるものだ。その理由について、メディアなどでは「日本のハイブリッド技術に追いつけない欧米中国メーカーは、日本車を市場から排除するため戦略的にHVを否定している」という陰謀説が受け入れられている。

中国は自動車産業を国策として基幹産業にしたい意向が強いが、技術や産業としての蓄積が足りない。ライバルに対して同じ土俵に立ちやすく、フロッグジャンプが期待できるEVを推進しているが、それは対日本OEM(メーカー)というより日欧米OEMに対する戦略として捉えるべきだろう。

◆電動化戦略にHVを含めないのは合理的

グローバルでのHV不人気は、各国の思惑含みで説明しやすいが、これらはあくまで日本市場視点での話だといえる。エンジニアリング的に見たとき、電動化戦略にHVを含めないのはじつは合理性が高い。

パワートレインとしてのハイブリッドは、“ブリッジテクノロジー”に分類可能なもので、内燃機関からバッテリー&モーターへの転換までの「つなぎ」技術ということだ。

潜水艦や重機・戦車などでパワートレインを二重化する取り組みは過去に多数行われてきたが、本来二重化・多重化は信頼性向上の技術であり、本流とするにはいくつか難点がある。多くは、メンテナンスコストの増大、2系統制御による複雑化、関連するリスクの増大を伴う。それでも、止めてはいけないシステムに二重化など冗長構成を適用するが、そうでない場合、通常は単体での信頼性向上で事足りる。

もちろん自動車のような消費財の場合、製品コストやシステム構成は上記のようなエンジニアリング要素だけで決まるものではない。量産による市場システムに載せることでコストダウンや商品化は可能である。事実、トヨタ他のHVシステムは成功している。

とはいえ、トヨタも「THS-II」に至るまで20年の年月と投資を必要としている。現在のカーボンニュートラルや脱炭素社会への対応を考えた場合、ビジネスにおいて後発企業が同じ道を歩む合理的な理由はほとんどない。十分に性能が向上したバッテリーを使えば、内燃機関エンジンに頼る必要はなくなっている。また、性能や素材に関しても研究開発が進んでいる。水素技術に可能性があるなら、バッテリー技術を否定する要素も同様にないはずだ。

◆HVの性能向上を突き詰めるとHVでなくなる

HVがブリッジテクノロジーと言われる所以はもうひとつある。HVの目的は大きく2つある。ひとつはCO2削減といった環境性能。もうひとつは、燃費性能の向上だ。燃費向上の部分に焦点をあてると、高性能なHVは、いかにモーター駆動の領域を広げるかにかかっている。PHEVはそれをさらに発展させた形態と言っていいだろう。

HVの性能を突き詰めると、内燃機関の役割や比重は下がる傾向にある。燃料消費を抑えたいからだ。さきほど、工業製品はエンジニアリング要素だけで成立するものではないと述べた。サプライチェーンを含むエコシステムが、エンジニアリング的に非合理でも市場や商品を成立させる。

HVの場合、その性能を追求すればするほど、化石燃料とバッテリー(発電)という2つのエネルギーチェーンに依存することになる。しかも、片方の化石燃料を減らす方向にあるので、HVビジネスは原理的にその市場を潤す方向には向かない。

エネルギーチェーンまで話を広げなくても、PHEVの例がわかりやすい。PHEVの場合、使い方によってはガソリン補給の必要をなくすことができる。そうなると、なんのためにエンジンを搭載し、維持する必要があるのか、という話になる。オイル、燃料、機構部分のメンテナンス。性能を維持するための稼働が本来の移動のためではなく、使わないエンジンの保守稼働のためというおかしな状況にさえなる。

これは極端な例で、現実にはガソリン含む化石燃料の需要はゼロにはならないし、HVも消滅するわけではない。ただ、利便性や市場性、経済性の条件は変わる。欧米メーカーが、HVを排除する理由は、なにも日本車排除が理由とは限らない。