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自動運転をめざす公共交通システムが抱える課題…SIP地域サミット

  • 《写真撮影 会田肇》
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国家的プロジェクトである戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の第2期自動運転では、3月25日~26日の2日間にわたって“未来を変える自動運転ショーケース”を開催。同時開催された「地域自動運転サミット」の最後のプログラムを紹介したい。

◆安全性を高めるため、社会インフラを整備することで対応した西鉄とみちのり

そのプログラムは、「次世代公共交通システム」の自動運転車両を運用する事業者が意見交換をするディスカッションの場として設定された。討論には自動運転サービスの実用化に向けた取り組みを進めている事業者として、みちのりホールディングス、西日本鉄道、ティアフォー、BOLDLY、ZMPから各代表者が出席。国際モータージャーナリスト清水和夫氏の進行の下、自動運転サービスの実用化に係る課題等を話し合った。

最初に報告したのが西日本鉄道。昨年10月22日から26日間にわたって、北九州空港と、鉄道駅や臨海部の事業所、住宅地などを結ぶ交通網の確保を目的に、中型自動運転バスの実証実験を行った。実験では一日6往復、計308便を運行し、2592人が乗車した。実験のポイントは大きく2つあり、一つは見通しのが悪い大規模交差点にカメラとLi-DARを設置し、AIが画像処理して危険を検知するシステム。もう一つが事前にバーチャルシミュレーションを使って車両の挙動や事故が起きうるケースを確認するものだ。

実験にあたって整備したインフラとしては、信号場法定協システムが10カ所、磁気マーカーを上下1.2kmに渡って設置。信号の同期調整や危険情報検知システム、停止線調整を各1箇所ずつ実施した。その結果、実験中の手動介入は1便あたり1.22回の発生にとどまり、インフラと連携することによる効果の高さを確認。安全確保に向けて事前の取り組みがいかに重要かが認識できたとした。一方で課題としては、ACC使用時の制動不足やレーンキープの問題、さらに右左折時の歩行者や介護車などの回避では技術的な進化を望みたいとした。

2番目に登場した、みちのりホールディングスは、茨城県日立市で「ひたちBRT」における自動運転実証について説明した。実証は中型バスを使い、運行路線の大半は元々が日立電鉄の路線跡地を利用する形となっている。2018年に2週間の試験実証を実施。2020年には11月30日~3月5日の4か月に及ぶ長期実証へと移行し、現在は通常バスの中にダイヤを組み込んで平日8便、休日6便を有償での運行している。親しみやすさを伝えるために地元小学生による魚のイラストを描いたラッピングも実施しているという。

運行にあたっては安全性に最大限に気を配るために、見通しの悪い交差点においては路側にセンサーを組み込んでその情報を自動運転車両の制御や遠隔監視に当てている。また乗り換え検索の中に自動運転を組み込み、自動運転バスとタクシーを連携させるMaaSとしての取り組みも行っているとした。課題として上がっているのが事故発生時の対応方法で、実験中に物損事故が発生しているだけに、今後の無人化になればその懸念はさらに深まるというわけだ。また、10年スパンで見た時の車両・システムの継続性、さらには事業採算性としての議論もしていきたいとした。

◆モビリティのシェアリングを展開するZMP、公共交通の自動運転化を進めるBOLDLY

続くZMPは自動運転の実証実験や自動運転モビリティの実用化について紹介した。自動運転ユニット「Robolution」による車両自動運転技術では、公道と限定空間で走行する自動運転実証実験の様子を報告。2020年1月に実施した空港リムジンバスや自動運転タクシー、自動運転モビリティをMaaSとして利用する例や、同年11月に実施した空港での貨物けん引車の自動運転などの例紹介された。その他、物流支援ロボット「CarriRo」や、無人宅配ロボ「DeliRo」や無人警備・消毒ロボ「PATORO」の実証実験、東京・月島地区で実用化された「RakuRo」のシェアリングサービスについての報告もあった。

既に自動運転モビリティによる事業を展開中で、「RakuRo」を使った移動サービスを兵庫県姫路市でも実施。姫路駅と姫路城を結んで地域交通課題への対応だけでなく観光用としての活用しているという。また、「お花見ツアー2021」も佃島で最大4台のRakuRoを使ったイベントも実施中で、4月8日まで運行することにしている。

BOLDLY(ボードリー)は羽田イノベーションシティでNAVYA『ARMA』を使った自動運転バスの定常運行について報告。利用者は順調に伸びており3月24日時点で2万4315人を突破し、今後もさらに伸びていく見込みだという。また、BOLDLYではすでに世界中の自動運転に対応した19車種を遠隔操作のDispatcherでつなぎ、自動運転バスの実証実験も100回を超えている。そして、それを遠隔操作する運行管理システム(Dispatcher)のシェアはナンバーワンを獲得する実績を残すことができたとした。

さらに大きな実績として報告されたのが、茨城県境町で全国自治体で初めて自動運転バスを実用化したことだ。3台のNAVYA ARMAが投入され、町内のルート5.0kmを定常運行しており、住民への周知に努めたことで路上駐車の数が減少したり、バス停の追加設置により住民による利用が大幅に拡大し、まさに自動運転バスが“住民の足”として育ちつつあることが報告された。それでも危険運転への対策や信号規格の統一といった課題解決への必要性はあるとした。

最後に報告したのが、自動運転システム用のオープンソースソフトウェアを開発するティアフォー。これまでに累計で80回、18都道府県46市町村で実証実験を重ねてきたが、今までの事故件数はゼロであったという。

その具体例として紹介されたのが、西新宿エリアにおいてJPN Taxiを使って行った実証実験例だ。昨年10月に長野県塩尻市で、11月には東京都西新宿で、それぞれレベル2での非遠隔・遠隔による実走行実験を行った。ここでは地域とモビリティの融合や、次世代モビリティとして自動運転を展開する上での社会的受容性を検証したという。すでにアメリカや中国では遠隔による無人自動運転を実現しており、日本も検討していく時期に来ていると思うと述べた。

◆共通課題はサービスの継続性。運賃に依存しないサービスの実現も提案

続いて、各事業者からの報告を受けてディスカッションに入った。まず、無人運転での事故発生への不安についてティアフォーの加藤真平CTOは「安心感という点ではヒトがいて欲しいという要望は根強いものがあり、解決すべき課題だと思っている」と話す。自動運転の安全性についてティアフォーの加藤真平CTOは、「自動運転を開発するにあたって安全性のプロセスが大半を占める」と述べ、自動運転化は安全性の確立や社会受容性といった領域での取り組みが欠かせないとの意見が出された。

一方で日常の足として役立っていると説明したのがZMPの西村明浩取締役。それによると「全国に作られたニュータウンでは高齢化を迎えて日常の足がどんどんなくなっている」とし、そんな中でシニアカーの延長上にある自動運転機能を備えたマイクロモビリティが役立つ。特に「走行しながら挨拶を交わすことで、コミュニケーションが取りやすくなることも普及に役立つのではないか」との認識を示した。また、これが路上駐車の削減に貢献し、安全な走行につながるのではないかとの意見も出された。

また、地域の自動運転モビリティの実現性に関して進行役の清水氏が「日本は規制が多くて思うように自動運転が遅れるとの意見があるが、実はそうではなく法制度も含め世界に先んじていろんなことが実現できている」とし、BOLDLYの佐治社長も「ナンバーの取りやすさ、実証実験から実用化への道も比較的スムーズで、フランスのNAVYA社からも日本は対応が早いと言われた」ことを明かした。

各事業者が共通課題としたのがサービスの継続性だ。自動運転とはいえ、現状では様々な形で人が関わらなければならず、それらが却ってコストアップにつながっていることは否めない。このディスカッションの前に開催された各自治体との意見交換では、移動手段以外にも観光ツアーや買い物ツアーなどを開催して自動運転との新たな接点を作り提案や、自動運転をもっと身近に感じてもらうために次の世代を支える子供達に積極的に関わってもらうアイディアも出された。

そうした中でBOLDLYでは自動運転バスを用いた、持続可能な公共交通を実現するために、「運賃に依存しない自動運転バスのビジネスモデル構築」の提案も行った。それは自動運転バスを“横に動くエレベータ”としての使う考え方で、エレベータは料金を基本的に徴収しない。自動運転バスを社会インフラとして継続するためにも、そうした考え方が重要になって来る。その実現へ向けて皆さんで知恵を出し合っていきたいとした。

最後に清水氏は「社会は確実に自動運転へ向けて動き出しており、次のビジョンをしっかりと作り上げないといけない。それがその先にある、サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムによって経済発展と社会課題を解決する人間中心の社会=Society 5.0が目指す社会なんだろうと思う。その背景にはSDGsの考え方があり、新しい社会、未来を自動運転によって作り上げる。それが日本の製造者に意味をもたらすことにもなる」と述べてディスカッションを締めくくった。