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【日産 ノート 新型】今後は若年層にも注力して

  • 《写真撮影 内田俊一》
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日産からデビューした新型『ノートe-POWER』。そのマーケティング・商品企画に関し説明および質疑応答が行われたので、現在の販売状況や戦略等について話を聞いてみた。

◆e-POWERのみの理由

日産商品企画部日本商品グループ主管の遠藤智実氏によると、ノートが属する市場状況は、「ハイブリッドと呼ばれる電動パワートレインが非常に伸びており、また昨今CO2絡みの話題が色々なところで起きてきていることから、今後はさらに伸びていくと予測」。その中でノートは、2代目の途中でe-POWERを投入し、「とても好評で、登録車としてもナンバーワンを獲得した」と振り返る。

それらを踏まえ3代目ではe-POWERオンリーになった。遠藤氏によると、「様々な論議はあったが電動化を推進していくうえで、また、ノートの良さを最大限出すためにe-POWER一本で開発した」とのことだった。

先代までのユーザー評価とイメージは、「安全な、そして先進的というモデルイメージがすごく上がって来ており、2代目まででこのイメージを築いた」と遠藤氏。一方、コンパクトハッチバック市場全体でのお客様のニーズは、「2016年ぐらいまではダントツで燃料代だったが、昨今は安全性がグッと伸びて来ている。これとノートのイメージは非常に合致しているので新型ではここを伸ばしていきたい」と企画のもととなる考えを語った。

またe-POWERに関して遠藤氏は、「出足の加速や走る楽しさ、追い越し加速といったドライバビリティのところで非常に高い評価を得ていた」という。

そこで、今回の新型ノートのコンセプトは、「コンパクトカーの常識を変える運転の快適さと楽しさが詰まった、先進コンパクト」とされた。これをもとに大きく三つの柱が作られた。ひとつは、「躍動感と先進性を感じるデザイン。次に楽しい走り、e-POWERの進化。そして使えて安心・安全の先進技術性」だ。

デザインは、「全長を50mm短くしながらも存在感のある、踏ん張り感のあるスタイルを目指した。先進的な部分では、特に内装でメーターディスプレイが一枚板のように繋がったアドバンスドディスプレイなどで表現。またシフトも電制シフトを採用。今回新たに作ったシフターは美しいけれども使いやすいシフトにした」という。そして、e-POWERの進化は、「『セレナ』、『キックス』とそれぞれ改良を重ね、今回は新たなパワートレインによる第2世代だ。これによって力強さの進化、発進や減速の滑らかさの進化、特筆すべき静かさも進化した」とその特徴を述べる。

先進安全技術としては、「オプションも含め全方位サポートする先進安全機能を搭載。日産初としてプロパイロットのナビリンク機能付きになった」と遠藤氏。ナビとリンクすること、例えば、「カーブではナビの地図情報とリンクし、加速しないでスピードコントロールをするなど、安心しながら今まで通りのサポートが続けられる機能を追加。また、BSW(後側方車両検知警報)や、インテリジェントBSI(後側方衝突防止支援システム)といった機能も搭載している」

◆2万台突破の受注状況

次に販売状況を同社日本マーケティング本部チーフマーケティングマネージャーの丸地隆史氏から伝えてもらおう。1月末までで、「累計2万台を超えた。計画通り順調に受注は推移している」という。グレード構成は、「X、S、Fと3グレード。Fグレードは燃費系の戦略的なグレードという位置づけなので、ほとんど実売としては出ていない」と丸地氏。内訳はメインの量販Xグレードが84.2%と圧倒的で、75%レベルという計画より10パーセントぐらい立ち上がりで高くなっている。次いでSグレードが15%くらいだ」と説明。

オプションは、進化したプロパイロットということで、「プロパイロット(ナビリンク機能付き)がXグレードのみの設定だが、クルマ全体としても41%の装着率。ナビについても日産コネクテッドナビが58%。初期ということもあり高い装着率だが、高付加価値機能を装着されているのが現状だ」と述べた。

ボディカラーは「トップ5が全体の7割を占める」という。白とシルバー系が1位と3位、5位にありそれで約5割。2番目にオーロラフレアブルーパールという濃い青(13%)と、ビビットブルーとスーパーブラックの2トーンという宣伝メインカラーが9%という状況だ。因みにツートンカラーの比率は15%くらいである。

◆e-POWERという強みを強化

ここからはいくつかの疑問点について直接回答してもらったので、その主要部分についてまとめてみた。

—-:先代ノートの強みと弱みについて教えてください。また、そこから新型ノートへ反映したことはありますか。

日産商品企画部日本商品グループ主管の遠藤智実氏(以下敬称略):強みは、広さとe-POWERの走りの良さです。一方の弱みは、デザイン的に大きく見えるが故に、コンパクトさに欠けているという声が多少ありました。そこで、なかなかクルマを小さくすることは思い切れないのですが、広さは十分にありますので、これをスポイルしない程度で、例えばリアのリクライニング機能をXグレードに搭載するなどで快適性をキープしました。そして、いかにコンパクトでキュッとしたスタイル、サイズ感にするかに努めたのです。同時に、ホイールベースを短くしましたので、回転半径も小さくなっていることにより、取り回し性が向上しています。これが弱みに対する回答です。

強みのe-POWERの走りの良さですが、先代のe-POWERの販売割合は7割を超えるほど好評でしたので、これをさらに良くします。またセンターコンソール部分やシフト部分などの改良は電動車なのでやりやすい。もちろんガソリン車でもi-Shifterは可能ですが、ないものから作り上げ、それぞれに合わせていかなければなりません。また、静かさも、e-POWERに特化して、e-POWERだからこそ出来る静かさをチューニングしていきました。こういったところを磨くためには、e-POWER一本にすることで全部磨きやすい、一段高いレベルを目指せるわけです。とにかく、今回の新型ノートに乗ってみて、ああ良いねと思われるところに絞って徹底的に磨いていきました。

◆今後は若い層にもアピールして

—-:新型ノートを購入したユーザー層はどういう人たちですか。

日産日本マーケティング本部チーフマーケティングマネージャーの丸地隆史氏(以下敬称略:ノートはもともと年齢層は高めで、60代以上で半分。50代以下で半分という構成です。60代が30%、70代は20%以上。30代までが15%。40代以下で3割弱です。先代よりは高いですが、既存車からの乗り換えが多いのでどうしても最初の年齢層は高くなる傾向にあります。

下取り車の銘柄などを見ると、歴代ノートからの乗り換えのお客様が一番多くなっています。中でも2016年から2018年にe-POWER(先代)をご購入いただいたお客様がその半分以上を占めていますので、e-POWERを既に乗っていて良いなと思った方が、かなり短い期間、まだ5年以内で買い替えていただいているようです。因みに下取りがあるクルマを100とした場合、35%ぐらいがノートです。過去私が担当した『セレナ』も35%ぐらいでしたので、同じクルマからの乗り換えの割合は平均的といっていいでしょう。

またノートはもともと幅広いセグメントからの流入が多いこともあり、『ティーダ』、『キューブ』、『ジューク』といったコンパクトカーや、セレナや『エクストレイル』からも乗り換えがあります。他メーカーからは35%を超えるぐらい。多いのは同セグメントのコンパクトカーからの流入が多い傾向です。また。ひとクラス上のハイブリッドや、さらには輸入車においては、他メーカーからの流入ランキングでTOP10入りしています。新型ノートはコンパクトカーよりもひとクラス上を目指していますので、新しいお客様層からも購入されていることがデータからも見受けられています。

—-:今後としては若返りも考えなければいけないと思いますが、いかがでしょう。

丸地:高齢化は業界としても、また全体的な問題としても捉えています。売り方や買い方では、若者向けによりお手軽に購入いただくための施策が必要です。ノートでは残価設定クレジットを設定しました。月々の定額払いでものを買うのが当たり前の世の中、特に若い人たちではその傾向が強くなってきていますので、そういった新しい買い方に対応していくことは絶対的に必要です。

また若者向けも含めて、カーシェアも進めています。当社のeシェアモビもシェアリングステーションを広めていますので、クルマを所有することよりもまずは体験してもらい、次に欲しいと思ってもらうなど、段階を経て買ってもらうようにすることも必要かなと思っています。このようになるべく色々なところで触れる機会を増やし、買う時に月々の支払いを定額払いでなるべく安くという新しい買い方の提案などをより強化していく必要があります。

また宣伝コミュニケーションについてですが、今年から若者向けにコミュニケーションを取っています。2015年あたりから“やっちゃえ日産”として矢沢永吉さんを採用し、どちらかというとメーカー目線のアグレッシブな形で行なって来ました。そこから木村拓哉さんにスイッチすることで、よりお客様との共感、より若者などに受ける、幅広い層に理解してもらい受け入れてもらえるようにしています。ブランドバッチの変更も合わせて、コミュニケーションについても若者と幅広い層を意識した日産のブランド戦略として行なっています。そういったところから、より多くの方々に日産を知ってもらい、日産に乗ってみたいと思ってもらえるように、ブランド戦略の中でも若者を意識しているのです。

もちろんこのノートについても同様です。立ち上がりはノートからの代替えが多いのですが、これからは若者向けにもコミュニケーションを行ない、現在はワントゥワンマーケティングの時代でもありますので、これからの第2フェーズではターゲットを広げてアプローチしていくことを考えています。

◆ほぼ停止かクリープか

—-:e-POWERですが、クリープ機能が付いて駐車時などかなり運転しやすくなりました。その一方で先代は、ワンペダルが停止に近いところまで可能だったものから変更されましたが、こういったことに対してお客様から声は上がっていますか。

遠藤:先代のフィードバックとして、駐車時など低速の時にギクシャクするというお客様の声がありました。こういったシーンで普通に滑らかに使いやすくするためにクリープ機能を使えるようにしたのです。完全停止に近いワンペダルを惜しむ声もありますが、より幅広いお客様に使いやすく、そして滑らかということを目指してクリープ機能を採用しました。

丸地:つまり、幅広いお客様にと大きく舵を切ったわけです。どちらかというと肯定的な受け止めの方が多いようです。e-POWERからの乗り換えが多いとお話しました。その中には完全停止するようなところが良かったとのお話ももちろんあります。しかしe-POWERでのアクセルペダルの加減速の滑らかさが非常にスムーズになり、これまでと比べて相当レベルが上がったという声の方が多くもらえています。止まった方が良かったとおっしゃっている方々も、だから買わないということはなく、総合的に評価して買ってもらえています。また、全般としてはそもそもワンペダル感覚のドライビング、アクセルペダルで加減速が出来る機能を知らなくて、初めて乗る人もいます。その方々からは非常に高評価。つまり減速G自体は変えていませんので、ワンペダル感覚でのドライビングは非常に楽しんでもらえ、高評価なのです。

またe-POWERに乗っている人でも、先代はオートブレーキホールドが付きましたので、停止後ブレーキを踏み続けないと停止し続けられませんでした。それが新型ではオートブレーキホールドが装備されましたので、スイッチをオンにしておけば、停止後ブレーキを放しても止まっていられるようにるようになりました。そこを説明するとお客様は納得して購入してもらえています。

—-:今回全車フルホイールカバーに切り替わりましたが理由は何でしょう。

遠藤:先代では途中からアルミを採用しましたが、今回は非常にホイールカバーの良いものが出来たと自負していますので、まずはこれをご提供したいと考えています。アルミからすると”戻った感”があるかもしれませんが、デザイン的にバランスが良いものが出来ましたので、ホイールカバーで提供しています。

—-:プロパイロットなどを付けた場合、競合車と比較をすると割高なると思います。その点についてどう考えていますか。

丸地:車両本体価格では、他社と近しいと思います。しかし、プロパイロットなどを含めて装備すると、諸費用、ディーラーオプション等で300万近くなりますので、他に比べると高いというお声もいただくことがあります。しかし試乗してもらうと、この付加価値を強く感じてもらえ、満足して購入してもらえるという声が販売店から上がっています。

また、新しい購入の提案として残価設定型クレジットを設定。ノートの場合5年で残価価値34%(プロパイロット付き)となっており、競業他社より高い残価設定型クレジットを組んでいます。そういったところで他社と競合になっても月々の支払いで差を縮めるなどを売り手側の工夫を行なっています。