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【ホンダ N-ONE 新型】ニッチの世界で表現する世界観、N-WGNとの棲み分けは[インタビュー]

  • 《写真撮影 内田俊一》
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  • 《撮影 雪岡直樹》
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ホンダは軽自動車の『N-ONE』をフルモデルチェンジし、11月20日より発売すると発表した。2代目となるN-ONEは『N-WGN』とともに軽ハイトワゴン市場を担う1台であるという。

◆ハイトワゴン市場の「王道と個性派」

ホンダは「Nシリーズ」として軽スーパーハイトワゴン市場に『N-BOX』、同ハイトワゴン市場にN-WGNとN-ONEを導入しているが、このハイトワゴン市場は大きく王道のグループと個性派グループの2つに分かれるという。

N-WGNが属する王道グループは、「価格や日常の使い勝手を優先する市場。N-ONEの個性派グループは使い勝手よりもデザインを優先する」とその特徴を説明するのは、本田技研工業日本本部商品ブランド部商品企画課チーフの矢野達也さんだ。そして、個性派グループは2019年のハイトワゴン市場において、「約40%以上を占め、伸長して来ている」。クルマに対する価値観では、「自分らしさをそのクルマで表現出来ることを求めており、クルマは日常生活の道具というよりは自分らしさを表現する道具と捉えている」と分析し、市場内においてN-WGNとN-ONEの棲み分けは出来ているという。

その個性派ハイトワゴン市場でのN-ONEのユーザー像について矢野さんは、「性年代では男性は40代から50代。女性は20代から50代まで幅広いお客様に選んでもらっている」。ライフステージでは、「独身、子離れ期の方々に選ばれており、N-BOXの様に家族のために選ぶというよりは、運転する人自身が自分のためにクルマを選んでいる」とその特徴を話す。

さらにクルマに対する価値観を他のNシリーズと比較すると、「自分らしさをそのクルマで表現したいというお客様がN-ONEは突出。そこでしっかりと自分の持ち物にこだわりのあるお客様に向けた商品を導入する必要がある」と新型N-ONEの開発に向けた背景を語る。

◆タイムレスデザインは継承

これまで販売してきたN-ONEの商品評価を、購入重視点と購入後の満足度についてN-BOXと比較するとN-ONEは、「外観スタイルや、ボディーカラーを重視して購入されており、それらの満足度も高い。その結果から、N-ONEが持っているデザインの良さはそのまま受け継がれていくべきだと考えた」と今回のデザインのキープコンセプトを説明。

その一方で予防安全の領域では、N-BOXと比較すると満足度が低い状況であることから、「そこはテコ入れする必要があった」という。

これらの結果から、新型N-ONEのセールスポイントは、「『N360』から続くタイムレスデザインはしっかりと継承し、これをセールスポイントの土台とする」とし、その上で、「先進安全性能であるホンダセンシングを搭載」。また、日常から休日まで、「運転する楽しさを提供する走行性能と、Nシリーズ共通で持っている軽自動車の枠を超えた高い質感」の4つであるとした。

◆ボディカラーは重要なファクター

ここで矢野さんにボディカラーについて質問してみた。それは、ボディカラーが重視度、満足度ともに高いものの、その割合が重視度の方が高く、満足度が若干低い、つまり、重視した割には満足度はそこまで高くないともいえるからだ。

矢野さんは、「カラーは重視するが自分の好きなカラーがないと少し妥協が生まれてしまい、満足度が下がってしまう。色々なカラーバリエーションを用意したが、そこにマッチしないところがあったと捉えている」とコメント。そして新型では、「カラーバリエーション自体は先代より減ってしまった。しかし、そのぶんグレードごとの個性をはっきりさせる戦略を立て、それぞれのグレードに合わせたカラーを選べるようにした」と対応を説明。その上で、「カラーはお客様の購買行動に強く結びついているので、色々な意見をもらいながら少しずつカラーバリエーションを考えていきたい」とした。

さらに、「新型N-ONEはあえて形を変えていない。これは今後も変えないという宣言でもある。これを守った上で、いかにしてお客様に鮮度の向上を感じてもらい、新しいお客様にも選んでもらうためには、カラーは重要なファクターのひとつだ。そこはしっかりと力を入れてやっていきたい」と語った。

N-ONEのグレードは大きくオリジナル、プレミアム、RSの3つ。オリジナルは、「ナチュラル・シンプルにこだわるお客様に向けて」。プレミアムは、「質感にこだわるお客様」。そして、「これまで要望の強かった」6速マニュアルも選択出来るRSは、「走りや運転する楽しさにこだわるお客様」をターゲットとし、「グレード間のヒエラルキーではなく、お客様のこだわりそれぞれに合わせた世界観を提供することで、N-ONEの個性をより尖らせていきたい」と述べた。

◆レトロカルチャーはセンスがいい

コミュニケーションについて矢野さんは、「訴求ターゲットを2から30代の男女と、あえて少し若い方々に向けた訴求の世界観を作った。レトロカルチャーという流行に左右されずに昔から残り続けているものを訴求の世界観とすることで、N-ONEの持っている普遍的な魅力をしっかりとお客様に伝えたい」と話す。

一方で実際の購入ユーザーと訴求ターゲットに差があるが、「N-ONEのイメージを調査するとぼんやりしている。四象限あるとすると限りなく真ん中」と現状を分析。そこで「N-ONEのイメージをはっきりさせることを狙っている。そのために世界観を少し尖ったものにしなければと考え、若い方に向けた世界観を作っていく」と説明。また、Nシリーズも「高齢化が進んでおり、ホンダセンシングも装備され50代から60代のお客様に購入してもらっており、若年層が取れていないという課題もある。そこで今回はあえて20から30代を狙っている」という。

さらに、「センスの良さがキーワード。若い人たちはレトロカルチャー、昔から変わらない少しオーセンティックなものに対してすごくセンスがいいと思っている」ことから、「例えば銭湯とか街中華といった要素を取り入れ、昔からあるがいま改めてかっこいいよねというイメージをCMなどに織り込んだ。それを見てN-ONEってなんかセンスいいじゃないと思って少し調べ始め始めるというストーリーを狙っている」と述べた。

◆ニッチの世界で表現するN-ONEの世界観

さて、2代目N-ONEは見事なまでにキープコンセプトだ。これはどういう判断が働いたのか。矢野さんは、「初代N-ONEが出た時はN-WGNがなかったので、N-BOXほど大きくなくていいというお客様をつかむ位置づけで、初年度で10万台ぐらい売れた」と最初のポジショニングを説明。その後N-WGNが出たことで、「個性派、ニッチな商品に変わった」という。

そして、2代目N-ONEも、「その存在感を覆そうとは思っておらず、どちらかというとそこを尖らせていく」。そのためにN-WGNとの棲み分けには気を使い、その点はグレード展開にも表れている。これまでは、「3割ぐらいが占めていたスタンダードとセレクトという廉価帯グレードと、その上のプレミアムとRSという4つのバリエーション展開だったが、今回その下2つを廃止し、そこはN-WGNに任せ、価格を気にするお客様はそちらを選んでもらう」と矢野さん。

台数面でも、「反響は大きくは狙っていない」と矢野さん。「現場からも現状の1.5倍から2倍ぐらいがマックスという声もあるので、ニッチの世界でしっかりとこだわりを持って表現することが、N-ONEの生きる道」という。台数を追い求めるというよりは、「しっかりと(N-ONEの)世界観を作り込んだ上で少し売価としては高くなるが、それでも選んでもらえる商品を作ろうとした」とのことだ。

現在軽市場にはSUVテイストのものも増えてきているが、ホンダとしてはどうなのか。「SUVの軽を作りたいという議論は当然社内でもある」とする一方、「N-ONEは後ろにN360が控えている(踏襲している)ので、これをベースにしたSUVはあまり議論にはなっていない」という。そして、「軽のSUV市場は他社でも出てきて伸びているところなので、視野に入れて今後どういうタイミングになるかわからないが、やっていきたいところではある」と語った。