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【ホンダ N-ONE 新型】「デザインは変えない」モデルチェンジというチャレンジ

  • 《写真撮影 小林岳夫》
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  • 《写真撮影 内田俊一》
  • 《写真撮影 内田俊一》
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2代目となるホンダ『N-ONE』が発表された。プラットフォームは刷新しながらも、デザインは大きく変えないというモデルチェンジにチャレンジしたという。

第2世代「Nシリーズ」共通のキャッチフレーズは“N for Life”。これは、日本の人の豊かな生活のためにというコンセプトを表している。それを踏まえ、「N-ONEのモデルチェンジにあたりどんな生活が豊かに出来るのかを考えた」と話すのは、本田技研工業四輪事業本部ものづくりセンター開発責任者の宮本渉氏だ。

そこでキーワードとなったのが、「クルマと人との関係」だという。N-ONEユーザーは、「クルマをものとして愛しているお客様が多い」と述べ、実は宮本氏もN-ONEユーザーとのこと。「私の家族も我が家のN-ONEにニックネームを付けたりして愛着を持って接している」と自らのエピソードも披露。そこでいえるのは、「クルマで楽しむ暮らしだと行き着いた」と新型の根底に流れる考えを語る。

そこでチームとしては、「“N for LOVE”をキーワードに掲げ、グランドコンセプトは“日本の車と楽しむ暮らしのために、末永く愛せるクルマを”と定めた。そのために必要な要素として心を魅了するスタイル、心踊る楽しさ、心を預けられる安心の3つ」と定めた。

◆タイムレスデザインの継承と進化

心を魅了するデザインについて宮本氏は、「N-ONEのデザインが目指す姿は、ホンダの乗用車の原点である『N360』の原点価値を引き継ぎ、次の時代へつなぐ普遍的なものを目指した」という。具体的には、「N-ONEの特長であるくっきりとした目、はつらつとした表情、低重心でワイドさなどをもとにシンプル・モダンに進化したアイコンフェイスに、安全性、走りをフルLED灯体で強調している」と述べる。

ヘッドライトは一目でN-ONEと分かるようにしながらも、デイタイムランニングランプを採用し、丸いリングのデイライト部分がそのままウインカーになる。リアコンビランプ同様にフルLED化しN-ONEらしさを強調しつつ視認性を高めた。宮本氏は、「安心して長く乗れ、愛着を持てるタイムレスデザインに仕上げた」という。

もう少しデザインの考え方について聞いてみよう。本田技術研究所オートモービルセンターデザイン室プロダクトデザインスタジオ研究員の田中丈久氏は、家電のLEDの電球を例に、「最初はすごく煌びやかなシャンデリアみたいなものが出てきたが、最近では結局電球らしい形に戻ってきた。これは、先進的な表現よりも、本質的な価値を表現した分かりやすい形が求められるからだ。末永く愛されるものには、本質的な“そのものらしさ”が必要である」。そこでチームとしては、「タイムレスデザインの継承と進化として、本質価値を磨き上げて次の時代へつないでいける存在を目指した」とデザインのベースについて語る。

では原点であり、N360が持つ本質価値とは何か。それは、「その時々の人に向けられた気持ちだ。これはホンダ車に受け継がれる本質的な価値であり、いまの時代にも通用する価値でもある」と田中氏。それは3つある。まずは、「ミニマル。これはホンダのMM思想、マンマキシムメカミニマルという考え方で、大人4人のために無駄を徹底的に削いだ空間や、機能表現だ」。次にくつろぎ安心とし、「ただ単に削ぐことでがらんとした楽しくない空間ではなく、ゆったりくつろいで移動出来る空間。また、当時高速が開通したので、そこでも安心して運転出来るしっかり感を表現している」。

最後は「楽しさ」だ。「単純に運転が楽しい、ドライブが楽しくなるようなコクピット周りや、きびきび軽快に走れそうなスタンスを指している」と本質価値を説明。これらをタイムレス価値と定義し、N-ONEのデザインを開発した結果、エクステリアではスチール部分の変更はなく、全体の前進感やスタンスの良さを強調するために、サイドから見てノーズ部分を起こし気味にしたり、真後ろから見た時のタイヤの見え方を変更するなどに行き着いたのだ。

◆ミニマルを掲げ、極限まで削ぎ落としたインテリア

インテリアデザインは、「ミニマルを掲げ極限まで削ぎ落とすことで、くつろげる広さ感と運転に集中出来る楽しさを生み出せると考え、くつろぎと楽しさを感じられるインテリアへと刷新した」と宮本氏。

具体例として、「助手席前のインパネ造形を大胆に削ぎ落とし、大柄なお客様でも足を組める広々空間を目指した。またメーターの端まで使ったグラフィックにより、伸びやかさを表現し、くつろげる広さ感のある助手席周りとした」。

さらに、メーターの左側にある仕切りを排することで横方向の広々感を演出している。また、様々な使い方を見直し、「シートを削いだ空間をセンターコンソールとして活用。より近い位置により使いやすいレイアウトしている。先代からカップを置けるスペースを増やし、さらにUSBを充実させ先代以上のユーティリティを確保した」とのことだ。

楽しさの演出として、ベンチシートからセパレートシートになったことにより、「座る機能以外の部分を削ぎ落とし、ホールド性を高め一人一人が運転に集中出来るようにした」と述べた。

◆走りのコンセプトは「軽快快適ミニツアラー」

走りの面において宮本氏は、「グランドコンセプトの末永く愛せるクルマを踏まえ、いつまでも乗り続け満足してもらえるよう軽快快適ミニツアラーをキーワードとした」と話す。スタビリティ性能とホンダセンシングによる安心・安全。そして乗り心地と静粛性による上質・快適性。ハンドリングと加速性能を磨くことで軽快さを表現し、「クルマ本来が持っている運転の楽しさを追求した」。

パワートレインの概要は、エンジンとトランスミッションを全て刷新。またFFターボと6速MTの組み合わせもラインアップ(軽初:ホンダ調べ)。CVTもRSグレード専用に変速制御を採用している。

エンジンはNAとターボが用意され、スペックは58ps/7,300rpmと65Nm/4,800rpm、ターボは64ps/6,000rpmで104Nm/2,600rpmとなる。NAエンジンはロングストロークとVTECにより燃費と出力を両立。ターボは電動ウエストゲートを採用することで低燃費とレスポンス向上を図っているのが特徴だ。

◆他の軽自動車にはない質感と落ち着きのある挙動

プラットフォームは、「クルマ本来の運転の楽しさを実現するため全てを刷新した」と宮本氏。

ボディについては高効率ハイテン骨格と高粘度接着剤を併用接合することで、軽量高剛性NV性能を高めた高効率ボディとし、先代のホワイトボディと比べて約7%の軽量化を達成。シャーシーは、乗り心地向上のためのサイドフォースキャンセルスプリング、リニアなステアフィール実現のためのEPS新制御ロジックを採用。クルマがスムーズに走行出来るよう、片輪にブレーキをかけるAHA(アジャイルハンドリングアシスト)も装備。フロントとリアのスタビライザーは2WDのNシリーズとしてはじめて全グレードに採用された。

これらにより宮本氏は、「先代に比べ軽快・操安、乗り心地・静粛性・質感の全てにおいて引き上げた。他の軽自動車では感じられない質感の良さと落ち着きのある挙動を実現している」と評価。さらにRSにおいては、「ロングドライブでの快適さと安心感、ワインディングロードでのドライブを楽しめるようなセッティングだ」と述べた。

◆プラットフォーム刷新で最新の安全デバイスも装備

“心を預けられる安心”としては、衝突安全性としてホンダ独自による衝突安全機能を標準装備し、全方位の衝突に対しても乗員被害を軽減する構造とし、サイドカーテンエアバッグなどの多くのデバイスを標準装備。

予防安全ではN-ONEとしてはじめてホンダセンシングを搭載。横断自転車も認識出来る衝突軽減ブレーキを採用するなど、「軽トップクラスの性能」と宮本氏。また渋滞追従機能付ACCを採用するため、オートホールド付き電子制御パーキングブレーキとなった。

車体防音性能においては、防音材を効果的に配置し、特にプレミアムとRSグレードでは、軽自動車ではあまり採用しないという遮音機能付きガラスを装備。防振システムは、液封エンジンマウントを装備するなど騒音振動の発信元から対策。この2つにより、「街中から高速まで軽トップクラスの静粛性を実現した」と話す。

そのほかユーティリティにおいては、リアシートリマインダーを採用。リア席の荷物などの置き忘れに対し注意喚起を行い、メーター表示で注意を促す。またスマートエントリーについてもボタンによるロックのほか、クルマから離れると自動的にロックする降車時オートドアロック機能も搭載。状態表示機能付きスタートストップスイッチを追加し、利便性が高められている。

最後に宮本氏は、「末永く愛せるクルマになってほしいという開発者たちの思いを随所に盛り込んだ。いたるところにN-ONEやNに関連したアイコンを忍ばせている」とのことなので、探してみるのも一興だ。