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埼玉工大 自動運転バス、信号機側ITS無線情報で自動停止・発進—オンライン授業も

  • 《写真撮影 大野雅人(Gazin Airlines)》
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LiDARやGPS・GNSS、カメラ画像解析を基本とする後付けタイプ自動運転システム(レベル3)を搭載した自動運転バスは、公共車両優先システム(PTPS)で通信しながら走ると、どんな挙動を起こすか。そんな実証実験に、埼玉工業大学の自動運転バスが挑んでいる。

実証実験現場は、羽田空港。第3ターミナル(国際線)と東京モノレール・京急空港線 天空橋駅付近を結ぶ8の字コースを、10月下旬に1日10回以上も走行し、走行データを収集している。

この実験は、内閣府による戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)自動運転実証実験「東京臨海部実証実験」のひとつ。SIPに参画する埼玉工業大学 自動運転AIバス(日野『リエッセ II』ベース)は、これまで兵庫県や愛知県など全国各地の実証実験を積み、今回のSIP東京臨海部実証実験にも継続して参加している。

今回は、公共車両優先システム(PTPS:Public Transportation Priority Systems)によるバスの速達性・定時運行支援、信号情報配信による交差点走行支援などを実際にテスト走行しデータを収集するのが目的。

この4か月前、埼玉工業大学 自動運転AIバスは同じ羽田空港実験コースで実験エリア内2か所に仮設したバス乗降用プラットホーム(バス停)に、自動運転レベル3でいかにぴたりと停止できるかを何度もテスト。1か所50回を超える正着テストで、想定以上の精度を叩き出し、関係者を驚かせた。

◆信号機についたITS無線路側機アンテナを受信して発進・停止

ことし10月の実証実験では、信号機側のITS無線路側機アンテナの情報を受信して発進・停止を繰り返し、「全インフラを活用した自動走行」「PTPSを活用しない自動走行」などをテスト。

埼玉工業大学 自動運転バスは今回、信号機側のITS無線路側機アンテナを受信しながら発進・停止を繰り返し、安全性をはじめ、バスの速達性、定時運転の精度などをチェック。こうしたテスト項目であることから、交差点を曲がるときなどは運転手がマニュアルで操作する。

そのかわり、交差点への進入・脱出を中心に、アクセルペダル・ブレーキペダルはほとんど人の足を加えずにテストを続ける。実際にテスト走行時に乗ってみると、運転手がアクセル・ブレーキを足で踏み込んで操作してるんじゃないかと思うほど、自然に止まる・走るを繰り返す。

「まだまだ課題は多い」と思わせるのは、微妙なタッチの瞬間。埼玉工業大学 自動運転バス側が「信号:青」を認識して、勢いよく信号へ侵入した瞬間、「信号:黄」「信号:赤」となる微妙な瞬間がある。

このとき、自動運転システム側が「信号:赤」を認識して急ブレーキを作動させるか、または運転手の判断でそのまま信号に進入するか。この微妙なタッチでどう判断し、どうクリアしていくかは「非常に難しい」という。

◆埼玉工業大学の生きた教材、実証実験現場からオンライン授業も展開

「いずれにしても、運転手が危険を感じたらアクセルを踏んで通過するか、急ブレーキを踏むか。現状は、最後は人の判断に委ねられている。いっぽうで今回は、公共車両優先システムのテスト走行なので、路線バスなどを信号機が認識して、赤信号で停止する時間を短くするといった実験もここで行っている。速達性や定時性がどう影響するかなどもチェックしている」

そう語るのは、埼玉工業大学工学部情報システム学科 渡部大志教授(埼玉工業大学自動運転技術開発センター長)。こうしたSIP実証実験の現場で走行データを集めつつ、いっしょに乗り込む同大学院生たちとクルマを走らせながらプログラムを書き換え、チューニングしながらその走りをつねにチェックしている。

これまで兵庫県や愛知県などの実証実験を重ね、この先も各地を転々としながら進化し続ける後付け自動運転システム搭載 レベル3バス。埼玉工業大学 自動運転バスは、実証実験に出動だけでなく、同大学の「生きた教材」としても使われることから、今回は実験中に埼玉工業大学4年生むけに現場からオンライン授業も展開。現場から学生にむけて、実証実験中の自動運転バスの挙動や突発的エラーをリアルタイムに伝えていた。

埼玉工業大学の学生たちは、ゼミ時間をオーバーして延長時間中も渡部大志教授の現場ライブレポートをオンラインでキャッチ。「微妙なタイミングで50km/hというスピードで入っていくのは結構怖い」「信号をキャッチして早めに減速してるときに後ろのクルマからあおられるときもある」「報道の人たちがいっぱい乗ってきて重量が増えたことでGNSSの誤差が出てるかも」といったリアルな声に注目していた。