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SIP-adusが「自動運転の安心・安全」をテーマにシンポジウム開催

内閣府による戦略的イノベーション創造プログラムの自動走行システム(SIP-adus)は10月7日に東京国際交流館(東京都江東区)において、東京モーターフェス2018の併催イベントとしてシンポジウムを開催した。

テーマは「あなたと考える自動運転の安心・安全」、自動運転への過信・誤信を防ぎ、安心・安全な自動運転の導入を実現するために、社会への正確な情報提供の場を設け、市民が抱える自動運転への不安を取り除き、正しい理解を深める機会を設けることが目的だ。

司会はSIP-adus構成員でモータージャーナリストの岩貞るみ子氏が、モデレータは同じくSIP-adus構成員で国際自動車ジャーナリストの清水和夫氏が、それぞれ務めた。

シンポジウムはモデレータの清水氏による趣旨説明から始まり、SIP-adusプログラムディレクターの葛巻清吾氏、国土交通省の平澤崇裕氏、警察庁の杉俊弘氏、日本自動車工業会の横山利夫氏がそれぞれ自動運転に関係する取り組みについて発表した。また、アカデミックからは中京大学専門教授の中川由賀氏と、東京農工大学准教授のポンサトーン・ラクシンチャラーンサク氏が登壇、それぞれの研究内容について発表した。

ポンサトーン氏はドライブレコーダの映像データベースを活用し、交通文脈のなかでヒヤリハットの背景を読み解き、潜在的なリスクを合理的に予測しようと取り組んでいる。自動運転は高速道路での運用が先行しているが、交通事故全体から見れば2%に過ぎず、「交通事故を減らすためには市街地での事故防止が重要」と述べた。

一方、中川氏は自動運転をめぐる法的責任について発表した。交通事故の責任は民事と刑事に分かれるが、自動運転が普及して事故原因が人間のミスからシステムの欠陥へと移行していくと、刑事責任については現行法で対応するのが難しくなるという。

「現状は自動車運転死傷行為処罰法が適用されますが、事故原因がシステムの欠陥になると、メーカー関係者が業務上過失致死傷罪に問われることになります。しかし、メーカーの過失責任の立証はかなりハードルが高く、誰も刑事責任を問われない可能性が出てくるのです」

これについて中川氏は社会的納得を得られる解決案として、道路運送車両法などの規制の充実と活用を図ることを提案し、「既存の法律を自動運転の切り口で更新していくべき」との意見を述べた。

プレゼンテーションに続いて行われたパネルディスカッションでは安全を阻害する要因として、“過信”が話題になった。自動運転システムは確かに便利だが、システムを過信すると思わぬ事故につながりかねない。実際に過信が原因と思われる交通事故は起きている。安全のためには、システムを使う人間が機能や限界を正しく理解する必要がある。

これについて、自工会の横山氏は「自動運転のアンケートをとったところ、日常的にADAS(先進運転支援システム)を使っている人は自動運転にポジティブな意見が多く、普段運転をしない人やADASの経験がない人はネガティブな意見が多かった」ことを紹介し、徐々にレベルを上げて慣れていく方がシステムの理解につながるのではないかと述べた。

また、会場からはユーザーのコスト負担についての質問が寄せられた。いくら自動運転システムが安全に貢献すると言われても、消費者が負担できるコストには限界がある。葛巻氏は「自動ブレーキは出始めのころ、高級車にしか搭載されませんでしたが、その効果や嬉しさが広まって、いまでは自動ブレーキがなければ買わないと言われるくらいになりました。自動運転も最初は過剰品質と言われるかもしれませんが、そこから効果や嬉しさが広がっていくことが大事だと思います」と述べた。

SIP-adusでは5年間の活動成果を発表するイベントを来年2月に開催する予定だ。