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遠隔監視&自律走行による大型バスの営業運行、横浜で開始…「レベル3」自動運転はバス・交通事業者を救う

  • 《写真撮影 中尾真二》
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横浜市と相鉄バス、群馬大学、日本モビリティは、 IoTなどによる新ビジネス創出を促進する「I・TOP横浜」の取組として、自動運転技術による持続可能なモビリティサービスの実現を目指し、「路線バス自動運転プロジェクト」を推進している。

プロジェクトの一環として、日本で初めてとなる、大型バスの運転席無人、遠隔監視・操作による自動運転の実証実験を、よこはま動物園ズーラシア~里山ガーデンでの営業運行において、10月5日から行なう。

アウディやホンダは、市販乗用車のレベル3自動運転への実装を表明しているが、レベル3は緊急時の制御切り替えのシナリオが複雑すぎて、渋滞の高速道路での適用といった制限がかけられることが多い。そのためレベル3をパスしてレベル2の次はレベル4を目指すという戦略も存在する。

相鉄バス、群馬大学、日本モビリティ、I・ToP横浜らが手掛ける路線バスにおける自動運転営業運行の実証実験は、自律走行可能な自動運転バスに遠隔監視・操作機能を加えたもので、本格的な営業運行をより現実のものとする取り組みだ。

相鉄バス・群馬大学、横浜市は、昨年から自律走行による営業運行実験などを行っている。このときは、よこはま動物園ズーラシアと1kmほど離れた里山ガーデンを結ぶシャトルバスの自律走行実験(運転手は着座するが緊急時以外、操作はしない)を行った。今回は、同じコースを使い、3kmほど離れた相鉄バス旭営業所に管制室を設け、そこからオペレーターが自動走行を監視しながら、自律走行を行うというもの。

2019年の自律走行バスでは、ルーフ上に「ちょんまげ」状に飛び出した360カメラ、縁石や周辺環境を認識するためのLiDAR(レーザーセンサー)、GPS(GNSS)が主なセンサーだったが、今回のバスには、車内外に遠隔監視・操作用のカメラが15台増設されている。実験では緊急時のための保安要員(ドライバー)が同乗するが、最終的には運転席無人運転を想定しているため、車両周辺の他、車内にも死角ができないように随所にカメラが取りつけられている。

遠隔操作のための制御と画像は4G LTE回線(モバイル網)を利用している。管制室はモニターとハンドル式のコントローラーが設置されており、オペレーターは緊急時や車両側が自律走行できないと判断したときなどに、コントローラーで遠隔操縦を行う。現状、一般のLTE回線を利用しているので、映像や操作のタイムラグが気になるところだが、最大速度を20km/hに抑えることで対応している。ローカル5G/5Gの利用も研究しているとのことで、伝送遅延は将来的には無視できるものと思われる。

遠隔監視・操作のメリットは一人のオペレーターで複数のバスの監視・運行制御が可能なことだ。相鉄バスでは、「業界では大型二種免許保持者の減少が大きな問題となっている。持続可能な地方交通のために自動化は必須だが、緊急時対応、障害者対応、顧客サービスという点でも人間の介在はなくせないと考えている。今回の遠隔監視・操作による自律走行は、少ないドライバーでより多くのバスを運行でき、交通事業者の課題に現実的な解となると思っている」(菅谷雅夫取締役社長)として、この実験を進めている。

車両開発に協力している群馬大学 小木津武樹准教授も、「以前はレベル3は実装困難のためスキップしようと思っていたが、管制室による遠隔監視・操作は、レベル3自動運転との親和性の高さを感じた。交通事業者にとっては遠隔技術を併用すればレベル3自動運転の可能性が広がると今では思っている」とした。

今回の営業運行は、よこはま動物園ズーラシアと里山ガーデンを結ぶおよそ900mの区間で行われる。期間は、2020年10月6日、7日、12日~14日の合計5日間。里山ガーデンフェスタの開催に合わせての運行だ。10時から15時の間で1日10往復のダイヤが組まれている。

当該区間は私有地道路ではあるが、一般の人が通行する道路として公道として扱いを受ける道路だ。実験はレベル2自動運転として行われるが、ドライバーとして運転の責任を負うのは管制室で監視・操作を行うオペレーターとなる。オペレーターは大型二種免許保持者だが、営業所内の特設コースで遠隔操作のトレーニングを受けたドライバーたちが担う。スピードを20km/hに抑えるため、後ろに一般車両が追いついたら、左に寄せて一時停止して追い越させる運用をするそうだ。後続車両に追い越しを促すため、オペレーターまたは保安要員は外部スピーカーを利用する。