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【ソニー VISION-S】車の開発にかなりアプローチできる…担当役員の思い[インタビュー]

ソニーがEVを作った! その情報が伝えられたのは今年1月、米国ラスベガスで開催されたCES 2020でのことだった。この時はすでに実走行できる高い完成度を持っていたわけだが、その車両がついに日本国内に持ち込まれた。その開発に至るソニーの思いを担当役員に伺った。

◆実際にクルマを走らせてそのメカを知った上でセンサー技術が改善できる

インタビューに答えて頂いたのはソニーでAIロボティクスビジネスを担当する川西泉執行役員さんだ。お話を聞けたのは、待望の『VISION-S』の体験試乗を終え、まだ興奮が覚め切らないとき。果たしてこのコンセプトEVをソニーはどんな思いで作ったのか、川西さんにインタビューした。

—:VISION-Sを作ろうと思ったきっかけは何だったのでしょうか?

川西執行役員(以下敬称略):移動空間としてクルマを考えた時、ソニーとして何かできるものはないかと考えたのが出発点です。モビリティの進化は今後もどんどん続いていくと思っており、クルマが電動化の方向性となったとき、ソニーとしての技術を活かせるようにしていきたいのです。

—:ソニーはデジタルカメラを含めたイメージセンサーで半分を超えるシェアを持っているが、自動車の分野での利用はそこまで及んでいません。ソニーの技術とはこのイメージセンサーの領域で役立てたいという理解でよろしいでしょうか?

川西:VISION-Sを開発した一つの要素としてそれはあります。センサーでクルマの安全性を担保するには厳しい条件をクリアしなければなりません。その中で技術を極めていくというのは、その技術を研ぎ澄ませていくというチャレンジがありました。その意味で、VISION-Sを投入することで、実際にクルマを走らせてそのメカニズムを知り、センサー技術を改善していけるメリットが生まれると考えています。

—:VISION-Sを作る過程で気付いたことはありましたか?

川西:それはたくさんありましたよ。クルマってこんなものかなぁ、という漠然とした概念はありましたが、我々は当然ながらクルマに対する専門知識はありません。しかし、モビリティとITの融合という観点で今後を考えると、我々はITの会社なのでそちらからのアプローチがかなりできる。クルマをITの眼から見てどう作られているかとの視点で考えられるので、新たな定義を導き出せるのではないかと思っています。

◆現在、製作中のプロトタイプには5Gを実装する予定

—:VISION-Sに乗り込んでスイッチ類にも触ると、今までのクルマとは違ったフィーリングを感じました。ライトのスイッチ一つにしてもどこからオーディオ機材のような操作感が伝わってくる。この辺りもソニーならではのこだわりだったのでしょうか。

川西:オーディオライクな操作フィーリングはデザイナーがこだわった部分で、ソニーらしいクルマへの味付けはあったと思います。一方で、クルマは衝突安全にも対応した上で、それを守りながら公道を安全に走るという制約があります。その中でソニーとしての強みを発揮していきたいと思っています。

—:車内はソニーらしさがいっぱい詰まった感じでした。そうした部分にソニーとしての強みがあると?

川西:車内のデバイスはソニーがやりやすい領域でした。サスペンションを作れと言われてもできません。運転席周辺のデバイスはソニーとして特色を出しやすいものが多いです。センシングを使ったセーフティの面と、エンターテイメント、オーディオビジュアルという分野はソニーが得意とするところ。一番わかりやすいのは電子ミラーですね。

—:今日のデモではスマートフォンであるXperiaが使われていましたが、ネットワーク系でも強みを発揮できそうですね?

川西:今後はネットワークで5Gが使われるようになり、それがモビリティに入ってくると大容量通信での常時接続が可能になります。クルマのアップデートもオンライン(OTA)で可能になっていくでしょう。テスラが既に実行しているように、そうした部分でもソニーの強みが発揮できると思っています。ソニーはこの分野でのトライアルをずっとやって来ました。現在、新規製作中のプロトタイプには5Gを実装する予定で進めています。

—:お話を聞いていると、VISION-Sへの期待値はどんどん上がってきます。このプロトタイプを市販化する計画はないのでしょうか?

川西:皆さんからのご要望はうかがっていますが、販売については今のところ予定していません。

—:今後のVISION-Sの進化に期待しております。

川西:ありがとうございます!