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【マツダ CX-5 新型】なぜフェンダーが角張った? 空間拡大と美しさを両立させた“魔法の1本線”…デザイナーが明かす開発秘話
5月21日、マツダは新型『CX-5』を発売した。車両の基本的な構造は2代目までと共通ながら、大きく進化した新型CX-5。その進化と変化を表現しているのが新しいデザインだ。新型CX-5のデザインの“肝”やこだわりを開発者に聞いた。
◆SUVの王道を極める
9年ぶりとなる新型は、開発コンセプトに「新世代エモーショナル・デイリーコンフォート」を掲げサイズを拡大。居住空間や荷室を大幅に拡大することで実用性をさらに高めた。
マツダ初のグーグル搭載インフォテイメントシステムの採用や、15.6インチまたは12.9インチのタッチパネル式大型センターディスプレイ、「プロアクティブ・ドライビング・アシスト」をはじめとする先進安全技術も進化。マイルドハイブリッドシステム「Mハイブリッド」を搭載した2.5リットル直噴ガソリンエンジン(e-SKYACTIV G2.5)を国内で初採用したほか、静粛性も高めている。
マツダのミドルクラスSUVであるCX-5は、マツダの新世代技術「スカイアクティブ・テクノロジー」を全面採用した初めてのモデルとして、2012年に初代が誕生。同社のデザインテーマ「魂動(以下、魂動デザイン)」を全面採用した最初の市販車でもあり、デザイン性の高さや使い勝手などが長年評価されてきた。
強い生命感と速さを感じる動きの表現を目指した魂動デザインは、見た目の流麗さに目を奪われがちだが、新型CX-5の開発主査を務めた山口浩一郎氏は次のように話す。
「3代目を開発するにあたり、多くのお客様に愛されているCX-5を、さらに長く愛される存在へしたいと思い開発をスタートさせた。開発主査としての想いは、日々の使い勝手に徹底してこだわって『SUVの王道を極める』ということ。(中略)スタイリングと機能性を両立させた魂動デザインとなっている」(山口氏)
新型CX-5は、全長を115mm延長し、その分を丸々ホイールベースの延長に充てることで後席の室内空間やラゲッジルームの拡大しているのが、シルエットの比率を維持しながら相似形的にボディを拡大することで、一目でCX-5とわかるデザインとスポーティなシルエット、そして広い室内空間を両立しているという。
◆115mm伸びたキャビンとのバランスをとる“一本の線”
チーフデザイナーを務めた椿貴紀氏によると、ノーズからフロントドアまでのボディ前半部分はほとんど変わっていないそうで、ドライバーのポジションも同じことから、フロントウインドウの位置やボンネット、オーバーハングも一緒だという。
近年のマツダは、過度なキャラクターラインを廃し、シンプルな面構成で生命感や速さといった“動き”を表現しているが、新型CX-5を観察すると、フロントタイヤの後端にキックアップした斜めのラインが1本入っていることに気づく。
「今回大きく変わったのはリアドアから後ろで、キャビンが115mm伸びて、全高が30mm高くなっている。(フロント部のシルエットがほとんど変わっていないので)デザインのバランスが崩れてくる傾向にあった。その中で、あるデザイナーがここ(フロントタイヤ後端)にラインを1本引いてきた。彼はタイヤの踏ん張り感を強調するために描いてきたのだが、これをモデル化したらリアの大きさが気にならなくなった」(椿氏)
椿氏によると、線を1本入れることでフロントも長く見える効果があるそうだ。キャビンを短くしたり全高を下げてバランスを取ることも考えたが「スタイルはいいけど中は狭いと言われてしまうので、それは避けたかった」という。
ちなみに、直列エンジンの存在感を強調し、キャビンとのバランスを取るためにロングノーズ化したのが『CX-60』だ。
「CX-5の全長はCX-60と比べ50mm短いが中は広い。このパッケージが成立するのであれば、むしろ入れるべきと判断した」(椿氏)
◆「ウェアラブルギア」を表現したフェンダーアーチ
新型はフェンダーアーチの形状にも特徴がある。現行は真円に近いのに対し、新型ではオフロード車のような台形となっている。椿氏は次のように解説する。
「アメリカには『CX-50』があり、CX-50はもっと四角い。新型CX-5は、乗用車系の真円とオフロード系の四角の間ぐらい(を狙っている)。アメリカも新型のメイン市場になるので、ショールームに並んだ時に『CX-90』といった都会的なSUVと、オフロード色の強いCX-50の間に新型CX-5がラインアップされていて、アーチの形もだんだん角ばっていく雰囲気を出せたらと考えて採用した」(椿氏)
そのフェンダーアーチの頂点には、小さな凸の形をした台形の突起が見られる。空力パーツか何かかと思いきや、椿氏によるとフェンダーとボディがしっかりと噛み合わされていることを表し、力強さを強調するデザイン上の処理だそうだ。
初代のコンセプトは「街でも着られるアウトドアウェア」で街乗りできる四駆を目指したのに対し、2代目は「ウォッシャブルなキレイめスーツ」としてパーティにも行けるクロスオーバーへと変更された。しかし、椿氏によると2代目は「非常に高い評価をいただいた反面、上品になりすぎて行動範囲を狭めてしまった反省もある」という。
「新型は、引き続き都会的というところに軸足を置きながらも、より自由自在に行きたいところへ行って、やりたいことができるようなデザインを目指した。その想いを『ウェアラブルギア』というコンセプトに込めている」(椿氏)
ギアとしての力強さ、頼もしさがこの凸形状に込められており、そのモチーフはさりげなく各部に配されているそうだ。椿氏は何か所か教えてくれたが、本稿ではあえて伏せておくので、ぜひ実車で探してみてはいかがだろうか。












