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【日産 エルグランド 新型】あえて全幅を45mm拡大!? 高級ミニバンの王者『アルファード』にないものと、ミスから生まれた“偶然の産物”
今夏発売が予定されている16年ぶりの新型、日産『エルグランド』。ユーザーが期待するのは「アルファード・ヴェルファイアの牙城を崩せるのか」というところだろう。全面進化した新型エルグランドの強みとは? パッケージング、そしてインテリアデザインの観点から、その魅力にせまる。
◆「日産独自のアセットで攻めていく」
1997年に初代が誕生したエルグランドは、広い室内空間と走行性能、ラグジュアリー性を融合させた「高級ミニバンの元祖」と呼ばれているが、近年の高級ミニバン市場は、トヨタ『アルファード』と兄弟車である『ヴェルファイア』の“アルヴェル”一強となっている。
それは販売台数にも表れており、自販連が公表する2025年度の販売台数ランキングを見ると、アルファードが8万1357台(8位)、ヴェルファイアが3万2847台(23位)で2台を合計すると11万台超。一方そのほかのLクラスミニバンを見ると、三菱『デリカD:5』が2万6379台で26位、ホンダ『オデッセイ』が7339台で50位に入るのが精一杯。エルグランドにいたっては、デビューから16年が経過するハンデはあるものの、50位圏外となっている。
エルグランドが切り開いた市場ではあるものの、その市場を完成させたのがライバルであるアルファードとヴェルファイアだ。ギラギラとした迫力のあるデザインが、高級ミニバンの唯一解となっている。
日産自動車 グローバルデザイン本部の入江慎一郎氏も、新型エルグランドのデザインに関して「市場のトレンドは当然意識はする」と前置きしつつ、「日産は日産としてのマーケットを開拓するという思いでやっている。(ライバルを)意識しすぎず、同じようなもの作ってぶつけるのではなくて、日産独自のアセットで攻めていくことに集中した」と語る。
◆全幅をあえて45mm拡大した
新型エルグランドのデザイン上の大きな特徴が、全幅を45mm拡大したことだ。現行エルグランドの全幅は1850mmで、これはライバルであるアルファード/ヴェルファイアも同値であるが、新型は1895mmで1.9mに迫る。
都市部では狭い道や駐車場も多い日本が販売の中心となるエルグランドだが、このサイズは問題ないのだろうか。
「社内でも賛否両論で、どこまで拡幅するか、そもそも45mmも拡げていいのかは散々議論した。その中で、昨今は大型SUVといった輸入車も増えており、45mm程度であれば立体駐車場に入ることができるケースが今後増えてくるということを見越して、これなら大丈夫だろうという確信を持ってこのサイズにした」(入江氏)
45mmの拡幅は、当然室内のパッケージングにも効いてくる。新型エルグランドに乗り込むと、水平方向に広がるダッシュボードも相まって、ライバルよりもかなり広く感じる。しかし入江氏によると、全幅を拡げたのはあくまでもエクステリア側のデザイン要件だったそうだ。
「スライドドアを採用するミニバンは、そもそもドアの厚みが取れない。薄いドアの厚みの中で立体感をどうやって表現するかはすごく苦労する。でもやっぱり、エルグランドは日産のフラッグシップ。ミニバンといえど、きちんとボディサイドも立体的で抑揚のあるデザインにしたかった」(入江氏)
◆カラーで表現したのは日本ならではの高級さ
新型エルグランドでは、「FUJI DAWN(フジドーン)」と「至極(シゴク)」という2トーンを新色として採用したのも特徴だ。もちろん販売数が多いのはホワイトやブラック系だろうが、アルファードが白、黒、ゴールド系の3色展開(納期短縮のためとも言われている)なのに対し、思い切ったカラーリングを据えている。
「富士の夜明け」を意味するフジドーンだが、入江氏は「朝焼けを浴びて、非常に幻想的ななかに佇む、富士山の威厳を表現したかった」と話す。そこに組み合わされるシゴクは非常に濃い紫。入江氏によると「漆のような光沢とか輝きとか深みを表現した」そうだ。
紫というと、一歩間違えば「ヤンキーの特攻服」のようなイメージになってしまいそうだ。室内も「紫檀(シタン)」という青紫系にカッパー(銅系色)のアクセントとハイセンスな組み合わせにも関わらず、過度なギラギラさや幼稚さは感じられない。
「青紫はお坊さんの袈裟でも使われてるように、非常に高貴な色。でも紫は非常に難しい色で、ちょっとでも彩度が高すぎたり明度が明るすぎたりすると、途端に下品になりがち。高貴な色としてコントロールするのが非常に難しかったが、西洋的な高級さではなく、日本の高級さを意識して作ることができた」(入江氏)
聖徳太子の定めた「冠位十二階の制」で最も高い位は紫。そこには「最高の徳」という意が込められているという。新型エルグランドの車内に乗り込むと、リラックスしながらも背筋がピンと伸びたような凛とした気分になるのは、カラーリングがもたらす効果なのかもしれない。
◆設計時のミスから生まれた“リアルな木目”
最後に入江氏は、インテリア開発時の面白いエピソードを教えてくれた。
「ダッシュボードにあしらった木目の溝を、新型エルグランドではエンボス加工で表現している。従来、木目はパターンを彫り込んで(凹)作っていたのだが、今回は逆に凸で作っている。
実はこれ、設計時のミスで、金型を逆の凹で作ってしまった。凹はマシニングで削るので、非常にシャープに木目の溝ができあがってより一層リアルに見えるようになった。世の中には偶然の産物で傑作が生まれることがある。常識を疑うことの大切さに気づかされた」(入江氏)
商用ベースが当たり前だったミニバン市場に、乗用専用設計のシャシーにパワフルなエンジン、ゴージャスな内装を備え空前のヒットを記録した初代エルグランドは、まさに常識を疑うことで誕生した1台だった。新型は内外装のデザインや実用性はもちろん、第3世代e-POWERによる力強い走りや、圧倒的な静粛性も手に入れた。高級ミニバンの先駆者としての血統、そしてプライドは、新型エルグランドにも確かに受け継がれている。












