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【トヨタ RAV4 新型試乗】これがトヨタの横綱相撲!?「王道SUVの完成形」と言わざるを得ない…南陽一浩
◆3サイズは1ミリも変えず、中身を全面刷新した新型『RAV4』
トヨタ『RAV4』は日本では見慣れた人気のSUVというイメージだが、“平成のヤング”なら覚えているであろうキムタクのCMが懐かしい、初代の登場はじつに32年前。1994年に遡る。国外ではまだ珍しかった都会的なコンパクトSUVで、FFをも揃えた気安さという、今日のSUVブームにおける先駆的な1台でもある。
世代を追うごとに世界180か国で着実に販売台数を伸ばし、直近の5代目に至っては年間100万台をコンスタントに超えた。他社競合モデルも少なからずだったが、トヨタが長年かけて育て上げたグローバル戦略車にして、虎の子といえる車種だ。
今回、6代目となった新型RAV4は、FFはひとまず用意せず、PHEVとストロングハイブリッドのE-Four四駆のみ。フルモデルチェンジとはいえフロア周りなど車台プラットフォームは5世代目から引き継いで、全長4600×全幅1855×全高1860mmという外寸、そして2690mmのホイールベースも前後オーバーハングも、1mmも動かしていないという。
ところがフルモデルチェンジの目玉となるメニューは多彩だ。とくにボディ剛性向上のため、リアハッチの開口部周りとリアサスペンションのストラット部を補強してきたことは、個人的に興味深く感じた。
というのも、ジャンルは異なれどルノー『カングー』やシトロエン『ベルランゴ』のような商用車ベースでさえ、欧州車がやたらこだわるのがリアハッチ開口部周りの剛性で、概して速度域も荷重負荷も低い使用例の多い国産車は、むしろ開口部の大きさと利便性を重視する傾向が強かった。「荷室にゴルフバッグいくつ」の起源も、この辺りに由来するだろう。
新型RAV4ではフロントのファイアウォール周りも補強され、ステアリング操舵に対して前車軸の反応や後車軸側の追従性を高め、結果的にハンドリングやドライビング・ファンに繋げている。しかしハードウェアから走りの質感アップを図るだけが、新型RAV4のレシピでも目指す指針でもない。
◆ドライビング・プレジャーの向上と自動運転は両立する
というのも、新型RAV4には「Arene(アリーン)」という新しいソフトウェア開発プラットフォームが用いられた。従来は機能ごとにバラバラに開発されていたソフトウェアを、「ADAS機能/コクピット周り/ボディコントロール/パワートレイン制御」といった各ドメインごとに開発基盤を統合しているという。例えて言うなら、これまで視線や手指、脚の動きを個別に振付して踊らせていたものが、中枢神経からプログラミングできるようになり、やがては頭脳に指令系統が統一される。
つまりアリーンは上記のドメインを一気通貫する中央集約型のソフトウェアに発展していく見通しで、すでに新型RAV4もOTA(オーバージエア)アップデートを見据えているという。ユーザーの実走行データを回収して運転支援機能制御などソフトウェアをさらに洗練させていく先には、当然、フィジカルAIの学習や完成度の高い自動運転まで、次段階として掲げられている。
いわば新型RAV4においてドライビング・プレジャーの向上と、遠くない将来の自動運転機能は、矛盾するどころか両立されるべきものなのだ。ドライバー以外の主体、AIエージェントなのかソフトウェアと呼ぶべきものか今のところ不明のそれが、ドライビングを司る状況が来るのなら尚のこと正確に操ることが可能な、“物理的バグの無い”ハードウェア、要は優れたシャシーが要るという発想だ。
以上が、インダストリアル次元での新型RAV4のあらましだが、なぜアリーン初採用がRAV4だったかという問いに対し、居合わせたエンジニア諸氏たちの回答は「RAV4は世界各国の市場を広くカバーし、あらゆる道を走る車種ですから」というものだ。なるほど、国内に限っても寒冷地や雪道にキャンプ場までの未舗装路、世界に目を向ければあらゆる規模の都市や高速道路に郊外路、山岳路から砂漠まで、貴重な実走行データをもたらす端末でもある。
そんなRAV4に都内でちょい乗りして何が分かるのか、正直、乗る前は覚束なかったものの、あれこれ感心させられるものがあった。
◆「プロアクティブドライビングアシスト」の制御に驚き
そんな新型RAV4に都内で試乗する機会が与えられた。試乗車は2台、「アドベンチャー」と「Z」という異なるトリムに、いずれも2.5リットルハイブリッドシステムに、E-Fourによる4WDという組み合わせだった。首都高からお台場を目指すコースでまず驚いたのは、「トヨタセーフティセンス」に含まれるプロアクティブドライビングアシスト(PDA)の、こなれた制御だ。
車速の流れが一定しない中、ドライバーがアクセルを踏み過ぎた時に前走車が急減速でつかえたり、隣車線から割り込みがあっても、精度の向上したカメラやレーダーによる予測を介して、回生ブレーキをほんのり強める程度の減速支援が介入する。平たくいえば、乗り手がアクセルを踏み込み過ぎて「いけね」と瞬間的に反省するような場面を、優しい減速で“プチ充電”に変えてカバーしてくれるのだ。レベル2のADASによる車速対応型クルーズコントロールというと、自車の周りに見えないバリアを張って周囲の車と距離を保つとはいえ、ツンツンと小突かれているような感覚に陥ることがあるが、この進化したPDAはそんな結界の境目をポジティブに柔らかく保ってくれる。
ちなみに操作系のファインチューニングも、すこぶるつきだ。アクセルペダルはオルガン式で、トヨタのハイブリッド・パワートレインの洗練ぶりを引き立てる名脇役になっている。電気とICEのトルクがどこでオーバーラップしているのか分からないほど、スムーズでリニアな加速感を引き出すにも、パーシャルでスロットルを一定に保つのも、やりやすい。
ブレーキも改良され、従来の蓄圧型から電動で加圧するマスターシリンダーに改められた。電気信号でよりピッチの細かい制御が可能となり、制動力のコントロール性が向上している。これはトレイルモードのような制御介入でも同様で、脱出時のロックや空転抑制もより緻密に行えるとのことだ。
◆おそろしくよく煮詰められた「乗り心地」と「ハンドリング」
乗り心地やハンドリングについても、おそろしくよく煮詰められている。「アドべンチャー」は18インチホイールで60扁平のエコタイヤ、「Z」は20インチの50扁平のスポーツタイヤを履いていて、前者は首都高の段差で少しコロンと軽く振動を伝えてくるアメ車のような鷹揚さ、逆に後者はしっとりとフィルタリングの効いた、フラットな乗り心地が際立つ。
ごく初期の微細な減衰力を摺動パーツで立ち上げるという、トヨタの匠テストドライバーによる味つけがKYB製のダンパーに反映され、シャシーの素性よさがタイヤの特徴をも引き出している。キャビン前後の補強だけでなく、フロア周りの高減衰接着剤による補強が効いていて、適度なしなりがこなれた乗り心地に結びついている。
ハンドリングについても、もっさりとか鈍重といった感覚とはほど遠い。いずれのトリム仕様でも、ステアリング操舵に対するノーズの動きの素直さに加え、後車軸側が素早く追従してくるフィールで、後席の乗員も酔いにくいだろうとすら感じる。とくにZの方は、ステアリング中立付近で左右に微舵で切り返す時でも、実の詰まったフィールと手応えが持続して、国産のCセグSUV離れしている。
車を降りた後で知ったが、コーナー進入時にステアリング操作と連動してトルクを絞ることで前荷重を強める制御や、コーナリング中に対角線上の前後輪をブレーキで軽くつまんで、ロールを抑える制御も働いている。これらの効果がごく自然で、ドライバーは軽快なハンドリングの恩恵にのみ集中できるのだ。
内装のエルゴノミーでも、新しいRAV4は各段の進歩を遂げている。12.9インチのディスプレイオーディオに加え、トヨタがアイランドアーキテクチャーと呼ぶ物理的スイッチと各機能のグループ化による配置は、慣れれば視線をほとんど落とさずに操作できるだろう。さらにセンターコンソール部の収納カバー兼エルボーレストは、運転席と助手席どちらからも開けやすいダブルヒンジになっていて、裏返せばトレイにもなる。
アドベンチャー仕様のシフトはレバー式、Zではシーケンシャル動作のスティックとPボタンという構成で、各トリムごとのキャラクターを主張する。
◆トヨタの横綱相撲を見た
こうしてふり返ると、新型RAV4は機能の多さでなく、動的質感の良さがウリの、王道の1台という気がしてくる。
数少ない弱点をあげつらうとすれば、アリーンの採用でデジタル・エクスペリエンス面、つまりタッチディスプレ内の見映えや操作し易さは進歩したが、画面背景に白場がまだ多くて、日中でも眩しいと感じること。
アドベンチャーとZのシート形状は共通でカラー&トリムやアクセントで違いを出しているが、やや平面的に過ぎて、ホールド感や静的質感という点でよりスポーティなシートが装備されるPHEVモデルが羨ましくなってしまうこと。あとはシステム最大出力&トルクとして、240ps&221Nmは十分以上に滑らかでパワフルに感じるが、2.5リットルでなく1.8リットルエンジンとの組み合わせなら車重も1.7トンを余裕で切って、さらに軽快だろうにと想像したくなること。
それでも先代のオーナーには必ず欲しくなりそうな変化を、RAV4をこれから知る人には目新しさを、価値として提示できている点に、トヨタの横綱相撲を見た思いがする。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★
南陽一浩|モータージャーナリスト
1971年生まれ、静岡県出身。大学卒業後、出版社勤務を経て、フリーランスのライターに。2001年より渡仏し、パリを拠点に自動車・時計・服飾等の分野で日仏の男性誌や専門誌へ寄稿。現在は活動の場を日本に移し、一般誌から自動車専門誌、ウェブサイトなどで活躍している。












