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【スズキ アルト 改良新型】マイチェンなのに別モノ級? 開発責任者が語る「本当の進化」とは
2025年6月にマイナーチェンジされた、軽自動車の代表格スズキ『アルト』。フルモデルチェンジではないにも関わらず、デザイン変更やボディ剛性の向上、燃費性能の改善など、多岐にわたる改良が施され、発表時に話題となった。
軽自動車市場は今や、スーパーハイトワゴンと呼ばれるスライドドア付きが主流となっているが、市場を作り上げた立役者であるアルトは、どのように進化しどこへ向かうのか。開発責任者に話を聞いた。
◆改良の隠れた目玉は「走り」
新型アルトは、楕円形をモチーフとした愛着のもてるデザインを継承しつつ、フロントおよびリアバンパーの形状変更やルーフエンドスポイラーの追加により、充実感のあるデザインにリフレッシュ。同時に空力性能を向上させ、ガソリン・ハイブリッド軽自動車クラスNo.1の燃費28.2km/リットルを実現した。
安全機能では、衝突被害軽減ブレーキ「デュアルセンサーブレーキサポートII」や「車線逸脱抑制機能」に加え、信号切り替わりにも対応した「発進お知らせ機能」などを標準装備。スズキコネクトにも対応し、安全と快適装備をさらに充実させた。こうした多岐にわたる改良を施しながらも、114万2900円からというリーズナブルな価格を維持している。
そして、今回の改良の隠れた目玉といえるのが「走り」だ。
新型アルトの開発責任者、竹中秀昭さんが今回の改良で最もやりたかったことは、「違和感なく走るようにすること」だった。そこでマイナーチェンジであっても車体に手を加えた。「(実際に運転してみて)ボディがちょっとやわいというか、ねじれる感じがしていたんです。そこで車体をもう少し強くしたかった、つまりクルマそのものの基本性能を上げたかったんです。そのうえで、法規対応や安全性を時代に合わせて進化させました」という。
具体的には、構造用接着剤をバックドアを含めたドアの開口部周囲に採用。フロア周りには減衰接着剤を採用した。これにより、開口部の歪みや応力を抑えた。その結果、「それほどお金を掛けずにかなり車体剛性が向上できました」と説明する。
ステアリングにもこだわった。「ステアリングセンターの遊びも含めて切り始めにちょっと違和感がありました。例えば、ステアリングを切った時に、まず車体がよじれてからサスが動いてという順番を感じていたのです。車体をしっかりさせたことで、車体はそのままで足が動くようにセッティングができました。それに合わせてパワステのチューニングをし直してかなり違和感が少なくなっています」と素性の良さがアップしていることを強調する。
◆軽トップの燃費をさらに向上させた理由と効果
ボディ剛性の向上をおこなうことができた背景には「燃費改善」があった。
「軽ナンバーワンを誇っている燃費にも関わらず、競合の方がいいと思われていることがわかりました。アピール不足です」。さらなる強いアピールのため、燃費向上に努めた。
ハイブリッドは0.5km/リットル改善し、27.7km/リットルから28.2km/リットルへ。アイドリングストップがないクルマは0.6km/リットル改善し、25.2km/リットルから25.8km/リットルへと向上させている。
エンジンは、アイドリングストップがないR06Aは、「制御を少し変えて燃焼効率を上げ、理想空燃比で走れるところを増やしながら、ある程度トルクを出し、排ガスも燃費もクリアできるようにしました」。そして、ハイブリッドのR06Dは、「燃費も少し改善しながら、車外騒音の法規の対応もしなければいけませんので、吸気系を変えています。実はR06Dのエンジンはゴロゴロした印象がありましたので、クランクの剛性を上げるなどでエンジン内部をだいぶ変えています」と竹中さんは説明する。
さらにタイヤを変更した。
「実は転がり抵抗の少ないタイヤにするとちょっと乗り心地が硬くなってロードノイズも大きくなったり、操安性が落ちやすいんです。そのためにパワステもチューニングして、車体にも手を入れることができました」と、ボディ剛性向上の背景を語った。
◆素性を引き上げた走り、その次にあるものは
スズキに入社して以来「スズキらしい小さい軽をやりたいと思っていた」という竹中さん。開発においては「アルトの基本は、低価格かつ低燃費でありながら、安心安全を求めるお客様に向けたクルマ。バランス良く作り上げなければいけない」と心がけた。
同時に、9代目アルトそのものの魅力を発信していかなければならないとも語る。
「そもそもこのパッケージは使いやすいことや、8代目と比較しても視界や見晴らしだけでなく、取り回しも良く、そして車体も良くなっている。そういう本来の良さを自分たちからも発信していかなければいけない。燃費がいいとか走りがいいとか、軽くてキビキビ走れるだけではなく、MTもターボもありませんが、素性の良い軽さが基本性能を高めていることをしっかり伝えていきたいんです」と話した。
「走る、曲がる、止まるが違和感なくできる。それをシンプルな構成でやるのが、軽自動車の目指すところ」とも話す竹中さんは、自身で『アルトワークス』を所有しその走りを楽しんでいるそうだ。となると気になるのが、新型アルトワークスの可能性だ。
竹中さんは「全く明言できません(笑)」と笑うが、マイナーチェンジでは構造用接着剤の採用や電動パワステのチューニングなど走りの素性にこだわっただけに、さらなる高性能化にも期待が寄せられる。
「現在マニュアル車もターボもありませんし、いまの(経営や市場)環境の中でこれまでのようなことはできませんが、それでも何ができるんだろう、少量台数でもスズキらしいとか、自分らしいというクルマを作っていけたらと思っています」と語り、何かしらの次の一手に想像を膨らませていることを示唆した。












