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ヤマハのeアクスルが「3 in 1」で小型&高出力化、巨大「4連結モーター」も登場、そのねらいとは…人とくるまのテクノロジー展 2025
ヤマハ発動機は5月21日に開幕した「人とくるまのテクノロジー展2025」で、開発を進める自動車用電動駆動ユニット「e-Axle(eアクスル)」や、ハイブリッド航空機や船舶向けの「4連結電動モーター」など最新技術を公開。eアクスルは3 in 1構造とすることで従来よりも小型化、さらに高出力化を果たしているという。
ヤマハは長年培ってきたオートモーティブ製品や技術をベースに、新たな体験価値を提案する「αlive(アライヴ)」シリーズを展開している。その製品・技術群のひとつが「αlive EE」(エレクトリックエンジン)、つまり電動モーターだ。小型モビリティ向けの50kWクラスから、ハイパーカー向けの350kWクラスまで幅広く開発をおこなっている。
ハイパーカー向けでは、英国のスポーツカーメーカー「ケータハム」が開発する『プロジェクトV』へeアクスルユニットを提供することが発表され注目を集めた。
◆フォーミュラEのノウハウが活きる「eアクスル」
今回の展示で公開されたeアクスルは、モーター、インバーター、ギアボックスを一体化し3 in 1構造としたことで従来のものより軽量・コンパクト化。モーター内部を冷却するオイルの循環効率を上げることでさらなる高出力化を果たし、入力電圧は350V~800Vまで対応し、出力は200kW~450kWまで高めている。
ヤマハはバイクメーカーとして知られているが、トヨタやレクサス向けに古くからパワートレインを提供するエンジンサプライヤーでもある。今も名機と語り継がれるトヨタ『2000GT』やレクサス『LFA』はヤマハのエンジンを搭載していた。電動化が自動車業界の潮流となる中、ヤマハはあえて数をとる乗用向けEVではなく、ハイパーカーをはじめ感性に訴える製品によるプレミアム路線に注力する。
450kWの出力でも馬力換算で611ps。かなりの出力だが、今回のeアクスルは軽量コンパクト化を果たしたことで、積載性が向上。さまざまなタイプの自動車に搭載ができるというだけでなく、これを各駆動輪にひとつずつ、つまり4機がけをおこなうことで2000kW級のeアクスルとして利用することも可能だという。
この開発には今シーズンより参戦している「EVのF1」フォーミュラEでの活動も深く関わっている。実際、eアクスルの開発とフォーミュラEの開発は同じチーム内でおこなっており、技術や課題はつねに共有されているのだという。フォーミュラEでは、限られた電力で速く、かつ完走するためのエネルギーマネジメントが重要だが、このノウハウ、レースでの開発スピードや解析などは多くの面ですでにフィードバックを得ているそうだ。
◆ハイブリッド航空機や船舶向け「4連結電動モーター」
世界的なカーボンニュートラルが叫ばれる中、航空製品やマリン製品を手掛けるヤマハにとっては「空」や「海」のCO2排出量削減も重要な課題だ。これに向けて開発が進められているのが、「4連結電動モーター」だ。
4連結とある通り、1基あたり500kWの高出力モーターを4つ連結することで2MWのモーターとしたもので、この4連結を1ユニットとし、複数のユニットを組み合わせることでハイブリッド航空機や船舶に搭載する想定だ。会場のイメージ図では、小型ジェット機の尾翼下に2つの4連結電動モーターが搭載されている様子や、電動船外機のスクリュー基部に4つの4連結電動モーターを並べ、かつその船外機を2基掛けしている様子が描かれていた。
ハイブリッド航空機向けについてはJAXAとの連携で開発を進めているという。航空機の燃費低減という課題に対し、ヤマハがモーターを供給し、検証を進める。航行中にジェットエンジンで発電した電力をモーターが直結したファンに供給し、巡航時や着陸時などで推力をあまり必要としない場面で燃料の節約につなげるというものだ。
船舶については、完全電動による船外機への搭載となるが、港湾エリアでタンカーを牽引する船や、近距離間の輸送船に搭載することを想定している。船舶用エンジンはメンテナンスの手間や作業員の工数が課題となっているが、電動モーターであれば燃料を使用しないことで内部が汚れにくいという特徴がある。ヤマハはすでに小型船舶向けに電動船外機を提供しているが、こうした観点からも電動化が推し進められている。
今回の展示では4連結としていたが、理論上はモーターの数を増減することが可能で、組合せによって多種類の出力帯に対応でき、さまざまな業界の電動化を可能にするとしている。