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【スズキ ワゴンRスマイル 改良新型】誰が見ても可愛いといわれるように…開発責任者がそういう理由とは
スズキは『ワゴンRスマイル』をマイナーチェンジした。改良にあたって振り返りをするとデザイン面にポイントが多く含まれていたという。そこで開発責任者にその詳細について話を聞いた。
◆可愛いに振り切ろう
ワゴンRスマイルは、「デザイン的な上質さや国産車にはなさそうな感じといった方向を狙い、落ち着いたデザイン性の高いスライドドア車として作りました」と話すのは、スズキ商品企画本部四輪商品第一部チーフエンジニアの高橋正志さんだ。
改良に向けて市場からのフィードバックを見ると、強みは「機能面で、燃費やスライドドアの便利さ、(2021年9月発売時での)安全性能、運転のしやすさなどがユーザーから高く評価されていました」。
一方弱みは「デザインでした」という。「デザインで選ばれたユーザーは他と違う個性が好まれたのですが、そこを強烈に支持したかというとちょっと想定より弱かったんです」と振り返る。そこでその女性ユーザーに話を聞くと、「可愛いクルマが欲しい。求められる色合いも可愛く優しい色を求めていることがわかりました。そこで改良のキーとして、可愛いに振り切っちゃおうと考えたのです」と述べる。
さらに購入見合わせ理由からもそこは明確だった。「可愛いのが好きな方はもっと可愛いのが良くて、格好良いクルマが欲しい方はちょっと違うと思われたので、わかりにくかったようです」と高橋さん。また、スズキの商品群には『ハスラー』や『スペーシア』、『スペーシアカスタム』などがあり、ワゴンRスマイルのポジショニングがわかりにくかったことも要因のひとつだったようだ。
しかし可愛いと一言でいっても多岐にわたり、個人差もあるだろう。「そうなんです。日本語の可愛いが世界で通用するようにもなっています。それでも誰が見ても可愛いといってもらえるようにしよう。ナチュラルで程よい個性がある可愛さ、優しい可愛さを目指しました」と高橋さん。そこでコンセプトをナチュラルユニークとした。
◆男性が来ない!?
もうひとつ想定外なことがあった。「もっと男性がスライドドアの背の低いワゴンに来てくれるだろうと考えていましたが、購入者の8割以上が女性でした」と高橋さん。想定理由は、「スペーシア系は背が高くて運転がしにくく感じるという声があったからです。しかしその声の多くは実は女性だったんですね。男性は『スペーシアカスタム』など立派で豪華で格好良い方向でした」とのこと。そしてその女性ユーザーから「可愛いクルマが欲しいというお声や色もはっきりした色ではなく淡い色、パステル系やくすみ系が欲しいといった声が予想以上にあったので、そういう可愛いを狙おうと考えたのです」という。
そこでデザイナーに、「誰が見ても可愛いねと思ってもらえるようなクルマを作ろう」と話をしたところ、「強烈すぎる個性よりも程よい個性で、自然体の方が長く使ってもらえ、時代の流れにもそれほど左右されないので、いまの時代には合っているんじゃないか」と特に若いデザイナーから意見が出たそうだ。前述のナチュラルユニークには、「ナチュラルは自然体、ユニークは程よい個性」という思いが込められた。
また高橋さんは、デザイナーに「若い方が可愛いと思ってもらえるクルマをお願いします。それ以上はちょっといいかけたんですけど、やっぱりいわない方がいいかなと」と依頼時の思いを語る。ただし、「可愛いけど嫌いは良いが、可愛くないよねとはいわれないように」とは付け加えたそうだ。
◆インテリアもニュアンスカラーで
ボディカラーに関してもいくつかの提案がなされた。新色のトープグレージュメタリックをはじめ、ソフトベージュメタリック、トーニーブラウンメタリックをカラーラインナップに追加した。高橋さんによると新色は最終2案あったという。「実は今回採用しなかった案がわかりやすい、いま時かなと思ったんですが、社内の多くの女性陣からトープグレージュがいいという意見だったのです。さらにソフトベージュと組み合わせることで、ボディ色とルーフ色を逆転させる仕様もできると。そうすると印象も変わりますので、こちらを採用しました」と話す。
インテリアカラーにおいても、助手席前のカラーパネルの色を変更した。改良前はアイボリーパールとネイビーパールだったが、今回はモスブルーとリフレクショングレーとされた。「改良前は白系とネイビーというはっきりした色でしたが、今回は青系でもニュアンスカラーです。それと合わせて今回ドアトリムのパワーウインドウスイッチからひじ掛けあたりにも色を付けました。そうすることで前席では色に囲まれて全体がコーディネートされている印象になり、より質感が上がったと感じていただけるでしょう」と語る。
また、アクセサリー用品を使った全体のコーディネートも改良前と同様用意された。しかし、「組み合わせを変えています。改良前は格好良いシーンなどいろいろ似合うようにすることで、それぞれのシーンで振り切りました。しかし今回は可愛いにもたくさんありますので、その可愛いを主語に5つ提案しています」と述べ、可愛いは絶対に外さないことを強調した。
◆安全装備も充実させて
デザイン以外では導入後3年以上経過したこともあり、安全装備も充実させた。「安全運転支援システムは進化も早く、さらには電動パーキングブレーキも軽自動車では当たり前装備になりましたので、若い方だけでなくご年配の方からももっと拡充してほしいという声もありました」とのこと。そこでワゴンRスマイルでは特にブレーキアシストはデュアルブレーキサポートIIに進化。ミリ波レーダーと嘆願カメラの組み合わせにより、検知対象を車両や歩行者、自転車、自動二輪とし、交差点での検知にも対応させた。
実はこの関係でグリルとバンパーの変更が求められ、そこで可愛さをさらに強調させるデザインにすることもできたのだ。
そのほか、走りの面ではショックアブソーバーの減衰力を変更することで、乗り心地を改善。また吸音材の配置を見直し、ノイズの侵入をより抑えることで、全体の質感を向上させている。
可愛いというワードには様々な思いが込められており、その受け取り方は人それぞれだ。新型ワゴンRスマイルは、そのどれもに当てはまる、純粋に誰が見ても可愛いと思われるように仕立てられた。さて、それが販売にどの程度結びついていくのか、個性的なデザインだからこそ、うまく受け入れられることを期待したい。